第5話 出る杭は打たれる

今日は昨日の雨が嘘のような雲一つない快晴で、窓から入る朝日で目が覚めた。


今日は何を売ろうと考えたところこの世界での甘未は割と高級品なのでその中でも甘みが弱く庶民的な麦芽糖を売ろうと思います。


作り方はまずおかゆを作って60度くらいまで温度を落とし荒引した発芽大麦を入れて半日ぐらい待てば糖化が進むのでその後固形物をこしとった後に残った水分を煮詰めれば完成です。ただ今回は手間がかかるのでスキルで呼び出してツボへ詰め替えます。


手が抜けておいしいものが作れるならもちろんこっちでやるよね!


麦芽糖と小さなツボをひたすら呼び出し詰め替えていく。一人でやるには結構大変だったので昼になるころには作業を中断して露店売り場に行くことにした。


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「はい、いらっしゃ~い。今日は甘いものだよ~。ぜひ買って行ってね。」


「おお!今日は甘味か!かみさんが喜ぶな。いくらだ。」


「一壺銀貨10枚です。ですが!奥さんへのプレゼントということで銀貨5枚にしてあげます。」


「まじか!もっと高いのを想像してたぞ。買った!」


「俺も彼女に!」


「私は妹たちにあげるわ!」


プレゼントにすれば半額になるということで嘘か本当かわからないがみんな声を上げる。そろそろ完売かというところで問題が発生した。


「ここで甘味を安く売っていると聞いた。今すぐにすべて私に献上したまえ。」


声のしたほうへ顔を向けると醜く太った悪徳貴族の代表みたいな男が立っていた。両脇には騎士を立たせておりこちらも柄が悪そうだ。


「何を黙っている。早くせんか。」


「子爵様が話しておられるだろ!無礼だぞ。」


これは面倒。それに今まで周りにいた客や店主たちは巻き込まれないようにこの場から去ってしまい俺しか残っていないので逃げることもできない。


「もうよい!お前たちそこのツボをすべて馬車に運び出せ!」


「いや、困ります!」


「口答えするな!貴族の命令は絶対だ。そこで寝ていろ。」


「ぐぇ!!!」


騎士に体を蹴り上げられその場へとうずくまると追い打ちでその場から蹴り飛ばされた。


意識はあるが痛みで立ち上がることはできず運び出されていく商品を見つめることしかできなかった。おそらくこの貴族は味を占め今後も絡んでくるだろう。忘れないためにも顔と声を記憶に刻み込む。


すべての商品を運び終えた貴族たちは馬車に乗り込むとほかの店には目を向けず帰っていった。馬車には剣が2本横並びになっている紋章が書かれておりおそらくあれが家紋だろう。絶対にいつか仕返ししてやる!


売るものもなくなってしまった僕は重い体を引きずりながらギルドへと顔を出し今回のことを伝える。


「・・・ということがありまして今後どうすればいいですかね?」


「そうですね・・・。でしたらここの庭をお使いください。本当はいけないんですが話の内容を聞く限り今後も狙われそうですからね、ここなら手を出してくる愚かな方はいないでしょう。その代わり使用料はいただきます。月に銀貨10枚でいかがでしょうか。」


「ぜひお願いします。」


「今日のところはいったん帰って体がよくなったらまた顔を出しなさい。それまでに書類は作っておくしギルド長へ話もしておくわ。」


「わかりました。また後日顔を出します。今日はありがとうございました。」


宿へと戻り体を確認すると蹴られたところは紫色に変色しており腫れあがっていた。もしかしたら骨も折れてるかもしれない。


一旦宿から出て薬屋へと向かいポーションを購入し戻ってくる。


ポーションの値段はピンキリだが骨折を治すぐらいの等級で銀貨5枚もした。痛い出費だが今後こんなこともあるかもしれないからいくつか買っておいたほうがいいかもしれないな。


異界召喚のスキルではこの世界特有の物は呼び出せないのが難点だよな。なので今回のポーションはもちろんミスリルとかのファンタジー金属も呼び出すことはできない。なのでこの世界で欲しいものがあれば買うか自分で手に入れるしかない。


割とおとなしくしていたつもりだがもう少し身の振り方を考えなければいけないかもしれないな。今後はギルドの敷地で販売できるとはいえ問題が全く起きないわけじゃないからないろいろと準備したほうがよさそうだ。

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