第9話修行
9話修行
ローランは今オランの宿屋裏にいる。
宿屋裏はちょっとした庭みたいになっており
剣を振るスペースぐらいはあった。
今は朝早く起きて久しぶりに剣を振り込んでいた。
というのも前回の冒険から戻って3日程剣を握る事が出来なかったからだ。
前回の冒険は命の危険が何度となくあった、初めての亜人種との戦い、邪教徒達との死闘それも手練との、その時に少し無理をして直前で剣の軌道を変えることに成功したがどうやらその時に腕と手首を痛めてしまい剣を持てない程の激痛が怒ったのだ。
その時は興奮状態で気づかなかったが冒険が終わり気が緩みしてるから痛みが増して来たのである、それもあり3日間剣が握れなかった。
冒険の時以外毎日剣の稽古をしていたが
剣が握れないのではそれも出来ずにいた。
そんなこんなでようやく痛みがなくなり今剣を握り稽古に励んでいた。
稽古が終わり、いつものように酒場に行き朝食を食べに向かう。
そこには既にウォッカがいた。
「朝から精が出るのぉ」とウォッカは声をかけてくる。
「3日も出来なかったからな、今日は慣らしだよ」とローラン
2人は食事をとる。
「どうした?何やら考え事か?」
「いや、冒険者を初めてそれなりに自身も付いてきたが、まだまだ上にはうえがいるもんだなと」
「そりゃそうじゃ、世界は広いまだまだ上はいるもんだ」
「そうだな、でもこれからもまだまだああいう奴等は出てくる
もっと強くならないと、いつ死ぬかわからない」
「そうじゃの、しかし焦るな儂等は確実つに強くなっておる」
「ところで、今日はどうする?
なにか新しい依頼を探すのか?」
「いや、今日は武具や道具の調達をしようと思っている」
ローランは今の防具に限界を感じていた、動きやすさでは今のハードレザーで十分なのだが
やはり防御力に欠ける。
これからもっと死線を超えるとしたら今のままではその内命を落としかねない。
ここらへんで金属鎧に変えようかと考えていた。
「そうじゃな、最近の冒険で結構な無茶をしているからな儂も武具の手入れをするとするか
ローランお主のグレートソードも手入れしてやろうか?」
ローランはその申し出に素直に甘えることにした、ウォッカは戦士でもあるが一流のスミスでもある。
彼にまかせれば磨き上げてくれるだろう。
ローランはウォッカにグレートソードを預け道具や防具の補充をする事にした。
オランには数多くの武器屋や防具屋がある、この街にきて間もないローランには
どこが評判が良くてどこかそうではないのか見分けがつかなかった。
しまったな冒険者の店のオヤジ(店主)にでも聞いてくればよかったなと思っていた。
今から戻って聞くのも面倒なので、取りあえず自分で見てみるしかないかと考えていた。
少し歩くと1件の防具屋が見えて、店の構えは中々綺麗で貴族様御用達等書いてある。
確かに店頭に飾られている鎧は磨き上げられていてピカピカだ。
早速中に入ってみる、ローランが入ると
「いらしゃいいませ」と店主が迎えてくれる。
しかし何やらローランをジロジロ見て値踏みしているようだった。
こいつ金持っているのかどうか見られているのだろう。
「冒険者様で今日はどういったお品をお探しでしょう?」
と訪ねられる。
「あ~ちょっとそろそろ金属鎧にしようと思っていいのを探しているんだ」
「ちなみにご予算はいかほどでしょう?」
「特には決めていないよ、いい物があれば買うつもりだ」
それを聞いて店主の目が少し輝いたように見えた。
冒険者と言っても皆がみな貧乏というわけではない、中にはかなり稼いでいる奴等もいる。
命を懸ける代わりに報酬がいいこともある、しかし流石にローランがそんな金持ち冒険者には見えないと
思うのだが店主は
「それならこれなんか如何でしょう?」
と店の中央に飾られているプレートメイルの前にローランを導いた。
それは金色に輝いたプレートメイルだった、ローランは正直なんて悪趣味な鎧だと思った。
だが店主はそれをよそに語りだす。
「このプレートマイルは純金製であります!、しかも肩の装飾にはあの
ロック鳥の羽を使用しております」
魔よけのある銀や魔法金属のミスリル銀ならわかるがなんで金なのか全く分からない
しかも肩の装飾等防御力に全く関係ない。
こんなもの着て街道歩いてたら襲ってくれと言わんばかりだ
しかしローランは興味本位で聞いてみた。
「ちなみにこのプレートメイルの値段はいくらなんだ?」
店主は自信満々に答える。
「これ程の品ですからね~決して安くはないですよ~」
となぜかもったい付ける
「現在の売値は10万ガメルです!!」
「10万ガメル!?」とローランは驚く、それをみた店主はどこか誇らしげだった。
いくら稼ぎのいい冒険者でも、いや仮に買える金を持っていたとしてもこんなものに
10万ガメルを払う冒険者はいない、そんな奴はそこまで生き残っていないだろう
冒険者はそこまで馬鹿ではない。
まぁしかし貴族なら買う奴のいるのかもなと思った。
ローランは店主にいいもの見せてもらったと礼をいい店をあとにした。
また暫く歩いた所に1件の防具屋が見えた。
次の店はさっきの店とは打って変わって小さい店だった。
防具屋の看板以外飾ってある防具もなくさびれた防具屋という感じだった。
しかしこういうところにこそ名工がいるのかもしれないとローランは店の扉を開ける。
中もかなり狭いしかも黴くさい、いや錆臭い匂いがする。
ローランは「すみません」と声をかける
しかしなんの返事もない。
留守なのかとも思ったがもう一度声をかけた「すみませ~ん」と先よりも大きな声で
やはり返答はない、留守なのだと思い店を出ようとした時店の奥からガサゴソと音が聞こえた。
振り向きよく見ると奥からいかにも老人という人物が出てきた。
そしてローランを見るなり「あ~お客さんですか?お客さんが来るなんていつぶりぐらいか」と
もごもご呟いていた。
「してあんいようですかな?」と訪ねてくる。
ローランは今金属鎧を探している事を伝えた。
店主はローランにその辺にあるのを好きに見てくれたらいいと答えた。
ローランは店内を見て回るといってもそれ程広い店内でもなくしかもどれもこれも
錆びていてとても使い物になるような代物ではなかった。
ローランは店主に「これだけなのか?」と聞く、店主は意味がわかっていないのかぽかんとした
顔をして、「あ~、オーダーメイドってことですかな?
最近は腕を振るっておりませんでしたが、昔はよく作っていたものです。」
「貴方様の防具もお作りになりますかな?」と話がいらぬ報告に進んでいく
老人はローランに近づきどれどれと体を品定めしていた。
そしておもむろに奥に行きなにやらガサゴソとしだしなにやらひどく錆びたハンマーを
持ち出してきた。
それはとても錆びていて持っている腕もかなり重そうで元々遅い歩みがさらに遅くなったように
感じる。
とてもそれを振るい防具を作れるとは思えなく軽く素振りをしようものならどちらが振り回されて
いるかわからないぐらいだった。
この防具を作って天寿を全うされても困ると思いローランは「防具はもういい」と伝え店をあとにした。
店の外にでて「はぁ~」と深いため息がでた。
その時一人の男に声をかけてきた。
ローランはそちらに顔を向けると見たことのある顔がそこにあった。
確か前回の冒険で最後リザードマン達に囲まれた時に助けてくれた兵士のリーダーだった。
名前はたしか『サム』だった。
しかし相手はローランの名前は憶えていないらしく呼び止めたはいいが先が続かない感じだったので
「ローランだ」と自ら名乗り歩み寄った。
そうだったと言わんばかりにサムは話しかけてきた。
「よぉ、この前は散々な目にあったな
もう体の方は大丈夫みたいだな」
「お陰様で、あの時は助かったよ」
と素直に礼を言う。
「いいってことよ、それより何してんだ?」
ときかれたので今の状況などを交え話をした。
「はっはっは、それは災難だったな
オランは広いし店も沢山あるけど、まぁなんだピンキリなんだよ」
と冗談交じりに慰められた。
「特にこの辺は大通り沿いってのもあってカモあっれたりする奴も沢山いるからな
よし、ついて来いよ俺がいい店教えてやるからよ」
と案内をかってでてきた、少し不安ではあったがついていくことにした。
少し歩き大通りから道を外れ裏道に差し掛かったところにその店はあった。
店の大きさは最初の店と次の店の丁度中間ぐらいだった今までの店との違いと言えば
中から『カン、カン』と作業をしている音が聞こえてきたぐらいだった。
店先にはショウウィンドウのようなものは無かったがおそらくここで作られたであろう防具が立ち並んで
いた、それと防具だけでなく剣等の武器も置いてあるようだった。
「ここのオヤジは腕はいいが中々偏屈で乱暴者だから気をつけろよ」と一言いうがいきなり扉をあけ
「オヤジ客連れてきてやったぞ」と偉そうに叫ぶ
中から「だまれ、小僧いま忙しんじゃ」と怒鳴り声が返ってきた。
サムは「なっ」と言わんばかり両手をあげローランを見る
店内は熱く、それでいて油臭いしかし不快とは感じなかった。
暫く『カン、カン』と作業を続けておりその音が止むと奥から一本の件を担いだ髭の濃い老人
いや、ドワーフが出てきた、名はヴィルと言うらしい。
同じ種族なのだから仕方ないのだがどことなくウォッカと似ている。
持っている剣は今仕上ばかりのがった物らしかったが鈍く光り一目で業物だとわかる程の
片手剣だった。
「ほんで何を探している」と聞いてくる。
サムが「こいつは、この前のリザードマン掃討戦で知り合った冒険者でよ
今後の為に今より防御力を上げる為に金属鎧を探してるってわけよ
そんで俺がこの街一番の名工が打つ鎧を進めてやろうってわけよ」
「フン、そんでどんな金属鎧を探してるんだ?」
サムの世辞など意にも介さずきいてくる。
確かに金属鎧といっても色々種類がある、プレートメイル、チェインメイル、ブレストプレート、スケイルメイル、リングメイルと守る場所や防御力で違いがある。
ローランは「出来るだけ今の機動性も確保しつつ防御力を上げたい」と素直な要望を言った。
するとヴィルは「ふん、舐めたことぬかしやがる」と一蹴する。
しかしぶつぶつと物を言いながら店内をうろうろし一つの防具を手に取りローランに差し出す。
それはチェインメイルであった。
チェインメイルとは鎖を編み込んで作ってある。一般的にくさりかたびらににている。
違いと言え基本鎖を編み込んでいるが胸や腕の部分に鉄を使い防御力を底上げしていることだ。
一般的にくさりかたびらは布の下に着こんだりして使うがこれはれっきとした鎧でありそのようには
使えない。鎧であるから防御力はそれなりにあるがやはり動きを制限されしまう。
ローランは差し出されたチェインメイルを着込んでみる、着慣れないので装着に時間が掛かるが
それはサムが補助してくれた。
着込んだ感じは思ったよりも軽かった。手を動かす度にジャラジャラ音はするがそれは仕方なかった。
ローランの筋力を持ってるればさして問題ないように思えたしかしどうしても着慣れない分
腕や肩がごわつき動きが遅くなるような感じがした。
ローランはその感想をそのまま伝えた。
ヴィルは「ふん、贅沢いいやがって」と悪態つけるが
「ちょっとかしてみろ」とローランに言う
ローランはいわれるがままにチェインメイルを脱いでヴィルに渡した。
ヴィルはそれを持って奥に行った、そして「ギー、カンカン」と何やら作業する音が聞こえてきた。
暫く待つと「ふぅー」と言ってヴィルが出てきて手に持ったチェインメイルをローランに渡し
「もっぺん着てみろ」と言う
ローランは言われた通りチェインメイルを装着する、2回目でもあるからか前回よりスムーズに着る
事が出来た、しかも先ほど感じていた肩や腕関節、手首等の違和感は大分軽減されていた。
「その素材じゃそれが限界だな、まぃミスリルとかなら違和感を殆ど感じないだろうけど
そんな物ここには無いし仮にあってもお前が買える代物じゃない」
それはその通りだミスリル銀で出来た防具なんてそれころ金色のプレートメイルの比じゃない金額が
する。
「まぁそれが手に入れられるぐらいまで強くなって稼げ、それまでそれで我慢しな」と
なにやら激励の言葉までもらった。
「そうだな工賃込みで300に負けといてやる」と言った。
もちろんローランはそのチェインメイルを買った。
それから店を出てローランとサムは酒場にいた。
ローランがいい店を教えてくれたお礼にとサムに酒を奢る事にしたのだ
そこで前回の話などを聞いた。
あらかたの概要は後日ローダから聞いていたのだが
サム等の実際にその後の捜索にあたった者の話はやはり参考になった。
「それにしても神殿付近を含めあの近辺にはもうリザードマン1匹も出てきやしあがらね」
「それに結局何をするために村人をあそこまで連れて行ったのかもわからねぇ
まぁなんにしても碌なことをしようとしていたんじゃないだろうから未然に防げて
良かったがな」
といろいろ現場の情報を教えてくれた。
「あれだああいう奴等とはお前たち冒険者の方が対峙する機会は多い十分用心しろよ」
ローランも前回の事を踏まえレベルアップするために努力することを言った。
するとサムはある提案をしてくれた。
「それならお前俺たちの隊の訓練に参加してみないか?」
「まぁあれだ俺たちの隊は元冒険者や元傭兵などのはぐれ者ばっかだから訓練もそれなりに
実践的だしどうだいっちょ参加してみろよ」とさってくれた。
ローランもサムは中々の実力者だとは感じていたのでその申し出を快く引き受けた。
翌日、午前中サムに言われた訓練所にローランは向かった。
訓練所といってもちょっとした広場になってるだけで特に何かが設置されている訳ではなかった。
サムはローランを見つけて声をかけてきた
「よぉ〜きたか、さぁみんなに紹介しよう」
と言われサムについて行った。
これから訓練が始まるみたいで人が集まって来ていた。
サムの隊は人数は20人程で主に元冒険者や傭兵といった者が集まって出来ているらしい。
見るからに荒くれ者達だった。
皆日々鍛えているのだろういい体格をした者が多かった。
ローランも日々鍛錬を怠っていないので自身はあった。
訓練といっても主に各々模擬戦等をやるのが主流だった。
中には自身の体力強化のため筋トレをしている者もいたが
そんな中ローランに声を掛けて来るものがいた
「よぉ〜冒険者の兄ちゃん、この前は散々だったな」と、み覚えはなかったがこの前のリザードマン掃討戦に参加していたのだろう。
名は『キム』といった
「それにしても中々いいガタイしてるな!?」
「それで神官でもあるんだって?
いっちょ手合わせしようぜ」と声をかけてきた。
せっかくの機会なのでお願いすることにした。
キムは長い棒槍を持っている。
とはいっても訓練で使うのは全て模擬武器なので刃はついていない。
ローランも両手武器用の模擬剣を貸してもらい
構える。
重さは差程でもない。
刃は付いてないけど当たるともちろん痛い。
キムも槍を構える。
対面して初めてわかったが隙がない。
でもこのまま睨み合っていても仕方ないのでローランは一歩踏み込んで横に大きく薙った。
キムはそれと一歩引いてかわし次に槍で付いてきたローランはそれを剣で受け止め弾いた。
そしてローランは大きく踏み込み剣で突く
キムはそれを右に避ける
ローランはすぐ様剣の向きを変え横に切る
キムはそれを槍で受け止める。
ローランはそのまま強引に力で押し切ろうとしたがキムも槍を地面につけ堪える。
そして一旦両者は離れる。
「中々やるじゃねぇか」とキム
「流石に力技じゃどうにもならないな」とローラン、お互いに距離を保ちつつ様子を伺う。
知らぬ間に周りにはギャラリーが湧いていた。
「じゃあ、ちょっと本気出すか」とキムがいい
槍を中央に構える少し先端を揺らし突いてきた。
それもただの突きではなく3段突で
ローランは最初の突きは剣で弾いたが後の突きは軌道がそれ肩と脇に当たった。
中々の威力で当たった場所が痛い
そのせいで動きが鈍り次の足への薙攻撃も当たってしまう。
そうなるともうキムの独壇場でローランは打ちのめさる。
はっきりいって足元にも及ばなかった。
やはり歴戦の兵士は強い。
ローランは休んでるとサムが声をかけてきた。
「どうだ?まだ痛むか?」
「いや、もう大丈夫だ
それにしても皆強いな」
「当たり前だ、日々訓練そして実戦と経験を積んでいる」
「ときにローランお前は実戦向きらしいからな
だがその実戦は日々に訓練によって磨かれる」
「だからもっと励め、それにお前はもっと他の武器も使った方がいい、冒険は常に色んなところに行くいつも同じ武器が使えるわけじゃない」
「水の中なら槍などの方がいいし
狭い場所なら片手剣の方がいい
それに弓等の中距離攻撃手段もあればまた戦況は変わって来る。」
「もちろん得意武器はそれはそれで磨けばいいと思うが、それ以外も使えると使えないとでは冒険者としての寿命も変わって来るぞ」
「たしかにその通りだな」
それから3日間ローランは訓練に参加しあらゆる武器の使い方等をサムや他の兵士に習いながら模擬戦を繰り返した。
3日目が終わる頃キムが声をかけてきた。
「よぉ〜、頑張ってるな、それに飲み込みもいい他の武器の扱いもだいぶ様になって来ていたぞ」
「そうか、まだまだしっくりこない所も多いけどな」
「まぁその辺は後は慣れだ、まぁ俺も槍以外はそんな使えないしな」
「それに来てもあの突きはどうやってるんだ?
軌道が読めなかった」
「企業秘密だが、まぁいいだろ
あれは特に狙いを定めてないんだよ
最初の一撃はわざと弾かれ易く突く
そして次からは弾かれた先で何処にいくかわからんが早く突く事を意識してるんだ
だから何処に当てるかは俺もわからん」
と笑いながらいった。
「聞くとそうなのかとも思うが
そう簡単に出来ることでは無い。」
「それにしても、冒険はしなくていいのか?」
「あぁ〜それなりに金も入ってきたしな
今は強くなる事の方が大事だ」
そんな話をしているとサムが近づいてきた。
「どうしたんだ?険しい顔して」ときむがサムに声をかけた。
「あぁ〜ちょっとな合同訓練の話が入って来てな」とサムが答えた。
「合同訓練?」とローランは聞く
「オランには幾つかの、兵士隊があるんだ
きちんと兵士学校を出た奴らもいるし、俺らみたいな荒くれを募集して作られたものもある」
「次、合同訓練するのは俺らみたいな荒くれ者達との隊だ」
「要は、兵士の数が増えると貴族様達は選別をしやがるのさ、生き残った方をそのまま兵士にして負けた奴らは解散ってな具合にな」
「なんでそんな事を?」
「それは、お金の問題だな
兵士は有事の時に国を守る者達だが今は有事がそれ程ない平和な時代だ、この前の掃討戦等滅多にない。」
「だから予算削減みたいなもんだよ」
「って事は合同訓練とは名ばかりの選別試験なのか?」
「まぁそういうことだ、負けたらすぐ解散ってことでは無いないにしてものちのちそうなる」
「合同訓練って何をするんだ?」
「オラン近くの森林地帯でゲリラ戦だ」
「お互いに陣地を作りそこに旗を置き
それを奪い合う、実戦訓練だよ」
「俺も参加していいか?」
「ん?参加したいのか?
別に構わんが報酬は出ないぞ?」
「そんなものはいい、実戦訓練は丁度やりたかったからな」
「ならいいが、魔法や奇跡の使用は禁止だぞ?」
「あぁわかってる」
「よし、じゃあ2日後に合同訓練はある」
「わかった、それまでにもっと励むよ」
次の日の訓練前にサムから合同訓練がある事が皆に伝えられた、皆はその意味を理解しているらしく気合いが入っていた。
そして合同訓練の日がやってきた。
ローランはサムと合流して訓練場所の街から少し離れた森林に向かった。
他の隊員達ももう到着しており皆準備に取り掛かっていた。
合同訓練で使用できる装備は鎧は皮鎧のみ、ハードレーザーやソフトレザー
武器は刃の付いた武器は使用禁止でみな模擬専用の武器を使用
後は魔法や奇跡の使用も禁止、もしそれらを使用した場合は即失格となる。
名目上は肉弾戦での訓練となっているので、まぁ本当の実践ではそんな訳にはいかないのだが
戦争にしろ前回のような討伐にしろ魔法や奇跡があるだけで戦況はかなり変わってくる。
それらを使える者が隊にいるだけでその隊の生存率は大幅に変わってくる。
とは言え魔法や奇跡が使える戦士は中々いない、コモンルーン(汎用魔法)で低レベルのものなら
指輪等の装飾品に魔力を込め使用する事もできる、それなりに高価な金額を取られる上に
魔法の素質が無いものにも使用できようにされている為、かなりの精神力をしようする。
要はあまり実践向きでは無いということだ。
まもなく合同訓練が開始される、特に作戦はないが、攻撃班、防御班
それと遊撃班(状況に応じて攻めも守りも行う)に分けられた。
ローランは体の割に機動力がある為、遊撃班に組み込まれた。
『パン、パン、パン』と開始の合図が鳴る
サムが「よっしゃ、みんないくぞ~」と掛け声を上げ隊員達は「おぉぉぉ~」と答え
みな地理尻に散っていく、陣地の旗を守るのは『パイクのシン』いつもはプレートメイルに
身を包み大きなタワーシールドを持っているが、今はハードレーザーに木製のラージシールドと
少し締らないありさまになっていた。
サムとキムは攻撃の要として攻撃班にいて敵陣に突っ込んでいく
ローランは遊撃班として敵の出方を見つつ切り込んでいこうと考えていた。
敵が何人ほどで攻めてくるかわからいの出様子を伺う。
森林とは言っても凹凸がありちょっとした丘みたいな場所も存在する。
自陣はその丘を利用して陣地を構えている、おそらく敵陣も同じようにされているだろう
ローランは自陣がギリギリ見える範囲の丘で潜伏し敵を探していた。
すると近くの茂みからガサゴソっと音がした。
2人の男が身を潜めながら進んでいた。
2人ということはおそらく斥候だろう
まだ敵はローランに気づいていないようだった、この機に乗じて奇襲をかけたいと考える。
敵の進むルートを先読みしその場所で奇襲できそうな場所を探す。
敵の進むルートに先回りしその先の凹凸の多い場所に誘い込めれば身を隠して奇襲ができる
ローランは先回りした場所でわざと足跡等の痕跡を残すそしてまた身を隠し敵の出方を伺った。
敵はローランが痕跡を残した場所にやってきて「おっ!足跡があちらに続いてるぞ」と
囁きあっていた。
そして足跡が続く方へと進んでいく、足跡が途切れるところまで誘導できた
「足跡がここで切れているな」と話し声が聞こえる。
ここがチャンスと思い、敵後方の隠れていた場所から飛び出し敵に向かって突進する。
敵はアッと驚いて顔をしているが反応できずにいる、ローランは一人目に体当たりをし敵を吹き飛ばす
続いてその隣にいた者に両手剣で胴に切りかかる、敵は咄嗟に持っていた片手剣で受けるがローランの
攻撃はその防御を上回り胴に一撃がはいる。もろにわき腹に一撃が叩き込まれ敵は悶絶して倒れた。
そうしている内に吹き飛ばした敵が体制を立て直していた。
敵は持っている槍を構えローランと対峙する形となる。
ローランも敵を前に迎え剣を中心に構える。
敵は槍でローランの足を狙ってきた、それをローランは剣で弾く
何撃か打ち合いをするうちにキムほどの使い手でない事もわかり来る攻撃は全て剣で弾く
そして頭を狙った攻撃の時にローランは攻撃を大きく弾くそれで敵の懐に隙ができたところに
ローランが先ほどと同じように横に一撃を放った、それが敵の脇に当たりこちらの敵も悶絶して倒れた。
斥候の二人を無力化することに成功した。
敵の動きがよく見えていた、確実に修行の成果が出ていると実感していた。
だがその余韻に浸っているわけにもいかない、斥候が来たということは別の攻撃部隊が迫っていると
いうことだ、敵も斥候が戻ってこない事に気づき動きをみせるはず
ローランは自陣の防御部隊と合流し対策を講じようと考えた。
ローランは自陣の防御部隊委が待機する場所にいどうする。
自陣に近づいて来ると自陣の方向から、『ガキ、ガキ~ン』と戦いの音がする。
どうやら敵の攻撃部隊と戦闘をしているようだった、見ると敵の数は10名足らずなので
攻撃部隊全部ではないみたいだった。
こちらの数は防御部隊。遊撃隊の一部で15名ほどいる、人数的にはこちらが上回っているので
早く蹴散らしたいところだ、しかし不意打ちを食らったのかかなりの乱戦模様となっていた。
ローランは敵の後方に回り後ろから突っ込んだ、
不意を突いた事でローランの突進は成功し敵の2人を吹き飛ばす、しかし流石は敵の攻撃部隊
直ぐに体制を立て直し、ローランも敵に囲まれる事となった、だが敵の数も少し減らせた事は
確かではある。
こちらのほうが数が上回っている事もあり、分散して攻撃するより一点を狙って攻撃する方が
効率がよく、流石は長年一緒に戦っている部隊誰が指示をするでも無く勝手に連携が取られて
いた、ローランも流れに合わせて攻撃をするだけで十分だった。
敵も半分ぐらいになった時に早々に退避していった。
しかしこちらの防御隊の位置から大体の陣地の場所は割り出される事にンるだろう。
次の敵の攻撃部隊はそこを狙ってくるはずだ。
さらに周りを警戒して防御しないと隙を付かれ旗を奪われるかもしれない。
そんな事を考えているとはるか前方より『パン』と信号弾が打ち上げられた。
これは事前に決められていた合図だった。
敵の陣地を発見して攻撃に移る際に打ち上げられる事となっていた。
信号弾が打ち上げられたら遊撃隊は攻めに転ずると事前に取り決めていた。
さぁここからは攻めの時間だ、一気に攻めて敵陣を落とすぞという勢いでローランは
信号弾が上がった方向に走り出していった。
おそらく森を半分ぐらい進み敵陣営に入っただろうぐらいから周りで戦闘の音が
聞こえ始めた、そこらかしこで戦闘を繰り広げているのだろう。
しかしローランはそちらの加勢には向かわず
まずは信号弾が上がった所ぐらいまで進みそして出来れば敵陣に攻め入る
誰か一人でも敵陣に攻め入り旗を奪えれば勝利出来るのだから
ここでの戦闘よりも先に進むことの方が重要だ、おそらくサムやキムも先にすすんでるはず
そう確信めいたものが何処かにあった。
ローランは今信号弾が上がったあたりに到着していただが周りを見ても敵陣らしきものは
見当たらない、しかしこの先少し丘になっていてこの先に陣地を構えているのだろうと推測できる
味方の攻撃部隊はここを登って行ったのだろう、しかしそれは敵も予想しているはずなので
罠等を張り巡らせている可能性はあった。
ローランは迷ったがこの丘を登って行くことにした。
罠を警戒し慎重に上って行くと地面の色が違う場所があった、落とし穴とまではいかないでも
足を取る罠なのだろと思われる、そこを避けて横から移動しようとした時に何かを踏んだような気がした
すると上から大きめの石が落ちてきた。
避けるのが間に合わずそれを肩に食らってしまった。
ダメージは打撲程度だったが見事に罠にひかかってしまった。
地面の罠はわざと分かるようにして迂回させて本命の罠にひかけるつもりだったのだろう
「アップルジャックなら気づけただろうにな」と一人悪態をつき
負傷した肩を抱えながら先に進むことにした。
少し進むと次は上の方から『かさっ』と音がした、上を確認したと同時に矢がこちらに
飛んできていた、咄嗟に転げまわり避け木の陰に隠れる
矢は木に刺さり止まった。
矢の数から見て敵は数人はいそうだった。
勿論矢にも鏃は取られているものの当たればそれなりにダメージになる。
うかつに飛び出したら的にされることだろう、とはいえこのまま隠れていても
埒があかない、こんな時奇跡が使えればとも思うがルール上それも許されない。
どうするか決めあぐねていた時、後方から「うぉぉぉぉぉぉぉ」と掛け声を上げ
一人の男がこちらに向かってきている。
キムだった、キムは手持ちの槍を振り回して敵に向かって突進していく
敵もみすみす近づかせるわけもなくキムに向かって矢を放つ、しかしキムは
槍を作るかの様に円を描き矢を次々払っていく、ローランは今がチャンスと思い
木影から飛び出しキム同様的に向かっていく、それに気づいた敵の一人が
ローランに向かって弓を弾く、だがローランも狙われているのが一人なら如何様にも
対応ができ放たれた矢を剣で払いのけた。
敵が次の矢を構えようとした時にローランは持っている大剣を敵に向かって投げた。
見事に当たり敵は態勢を崩す、敵は急いで態勢をたてのすしかしローランの方が早く敵迄
到着し敵に向かい拳で一撃を見舞う、それが敵の顎に当たり敵はそのまま気を失った。
急いで剣を広いキムの加勢にと思ったが見るとキムは敵を倒し終わっていた。
「たすかったよ」とローランは礼をいった。
「なぁに、いいってことよ
お前を丘の下で見つけて登ろうとしていたから後を追って正解だったな」
「さむはどこにいる?」
「隊長は迂回して丘の裏に回っていった回っていった
敵陣の裏を突くつもりらしいぜ」
「俺はお前が来ると思って待っていたんだよ」
「だったらもっと早く声を掛けてくれよ」
「わりぃわりぃ丁度小便している時にお前さんが通り過ぎていったみたいでな
まぁいいじゃねかなんとか無事だったんだからよ」と軽口をたたいていた。
「で?これからどうするよ」とキムが訪ねてくる
「サム達が裏から回っているなら俺たちはこのまま正面突破して
サム達と挟撃といこう」とローランは言う
「いいね、気に入った、正面突破ってのがいい
じゃあいっちょいこうや」とキムはいきこんだ。
ローランとしてもここでキムと合流できたのは幸運だった。
キムはこの隊でナンバー2の実力者、その人物と行動することで安心感がうまれた。
もう少しでこの丘も登れるそうしたら恐らく敵陣が見えるはず
問題はサム達が無事に到着できるかだった。
そしてローランとキムは丘の上に到着した、そこは少し広い平地になっており
奥の方に敵本陣と旗が見えた。
「よし、ようやく敵陣を発見したぜ」とキムが意気込む
「ここまできたら小細工は無しだいくぞローラン」と言い突き進んでいく
勿論敵もこちらに気づいており臨戦態勢をとっている。
ざっとみて敵の数は5人だった。
ローランとキムは敵の攻撃射程に入るか入らないかギリギリの所で止まった。
どうやらサム達はまだ到着していないらしい。
「これはこれは第13師団の副隊長じゃねぇか」と大きな槍(グレイブ)を持った男が
話しかけてきた。
第13師団がサム達の隊の名称らしい、因みに今合同訓練を行っているのが第12師団だ
「ちっ、ガイゼやっぱここに居やがったか」とキムが言う
面識があるようだった。
「あぁ~どうせお前やサムの野郎がここに来るって思って
待ち構えといてやったぜ」
「誰だそいつは?新入りか?」とローランを見て言う
「スペシャルゲストだ舐めてかかると大けがするぜ」
「かははは、小僧ごときに遅れをとるかっての」
「気をつけろよ、馬鹿力だからな技とかそんなもん関係なしに力でねじ伏せるタイプだ」
と小声で教えてくれた。
「ところでサムはどうした、まさかここに来る前にやられちまったかぁ?」
「まぁいいっとっとと片づけるぞ」と周りにいう。
それを機に敵の4人が襲ってくる。
サムが前に出て槍で攻撃したが横からその攻撃を止める者がいた。
「キムお前も相手は俺だよ」とサムの槍を止めた男が言う
「ちっザムザお前と遊んでる暇はないんだけどな」とキムは言うが
ザムザの次の攻撃を捌くがキムは後退させられる。
「キムよ今日こそどっちの槍捌きが上か白黒つけようぜ」とザムザは言う
「ローラン、しばし持ちこたえろこの野郎を倒すまで」とキムはいった。
ローランの前には3人の敵がいる、片手剣使い、両手斧使い、槍使いだ
モンスターとなら多対1での形意拳もあるが対人戦では初めてだった。
モンスターと人との違いは頭脳があることだ、連携など組まれると厄介になる
ローランは慎重に距離を図る。
まず最初に攻撃してきたのは槍使いだった、突きによる攻撃
だがそれは予想通りだったので剣で弾く、次に両手斧による一撃がきた
これもまた予想通りなので剣で受け止める
思い一撃を剣で受け止めた、その時先ほど負傷した肩がズキっと傷んだ
痛みのせいで斧の一撃に耐えられず片膝をつかされた、その隙をつかれ
片手剣が横に切り込んできたそれをローランは顔を引いて避けようとする。
間一髪剣はローランの頬をかすめるだけだった、
ローランは一旦距離をとった。
3対1なだけでも分が悪いのに先ほどの方の負傷まで影響してきて厳しいものがあった。
だがローランは考えていた、ここ何年もづっと修行をしてきた手を抜かず雨の日も雪のひも
づっとだそれは強くなる為にこの程度の痛みに負けるものかと
ぐっと剣を握りなおす、3人相手は確かに厳しいしかし一人ならなんとかなる。
まずは一人に目標を定める、ある程度のダメージは覚悟の上で突っ込む、狙いは斧使い
また槍を突いてきたが槍を突いてきたがそんな事はおかまいなしに突っ込んだ。
槍が手や足をかすめたがダメージ覚悟で突っ込むローランはそんな事では止まらず
狙いの斧使いへと向かう、斧使いもそれを察知し斧を構えた。
ローランは射程圏内に入ると大剣を大きく振りかぶるその隙をついて槍使いの
槍がローランの脇腹を突くが攻撃態勢いに入っているローランは止まらない。
斧使いはその攻撃を防ごうと斧で防御態勢に入る。
ローランは大剣を大きくふり被りそのまま斧使い目掛けて振り下ろした。
斧使いはそれを斧で受け止める、ゴッと大きな音と衝撃が周りに響き渡る
まさに力と力の比べあい、だがこの勝負はローランに軍配が上がった。
斧使いはローランの攻撃の衝撃に耐えきれず、片足を付いた
それを見たローランは更に振り下ろす力を加えた。
斧使いは遂にその力に耐えきれず持っている斧を地面に落としてしまう
そしたそのままローランの大剣の攻撃を肩に食らってしまった。
ゴキッという音が聞こえたのでおそらく肩の骨は折れているだろう。
ローランは一歩引いて息を整える、斧使いは倒したとは言えまだ槍使いと片手剣使いが
残っている、まだ敵の優位は揺るがない、それに肩の痛みに加え先ほど槍使いの攻撃を受けた
痛みも徐々に出始めていた。
ここまでかと思ったその時だった、敵の後方、丘の端から誰かが上がってきている。
それはサム達が回り道して敵の後方を付く部隊だった。
前方の二人はローランに気を取られており後ろからくる援軍に気づいていない
援軍は敵後方から奇襲をかけられあっさりと倒された。
ローランはその場にへたり込んだ、それほどの緊張感と疲労があった。
そこに一人の槍を持った男が近づいてきた、サムだった。
「よぉ~ローランよく踏ん張ってくれたな
おかげでこっち側には敵の目は殆ど向かずにやってこれたぜ」
「キムはどうした?」
ローランはその問いに指先だけでその方向をしめした。
サムはその方向をみた
キムは敵の副将とまだ戦闘中だった。
敵の副将も中々の手練れだった。
しかしサムは「まぁあれはキムに任せておいて大丈夫だろう
俺たちは敵の大将を倒しに行くぞ」
と周りの奴らに声をかける
「ローラン、お前はそこで少し休んでいろ」
といい敵の大将を倒しに向かっていった。
キムは苛立っていた、早くこのくそ野郎を倒してローランの助っ人に行きたいが
敵はそれをさせてくれない。
敵もまた手練れであった、伊達に副将は名乗っていない。
敵とキムを比較すると
力はキムの方が少し上、スピードは敵の方が少し早い、器量は互角
ほぼ二人の実力派互角といったところだった
勝負の行方は運に委ねられる。
先に動いたのはキムだった、キムは槍を中央に構え技を繰り出そうとしている。
ローランとの模擬戦で使用した技だ五月雨突き、この技は無数の突きを同時に繰り出す。
受ける方はどこから飛んでくるかわからない突きに翻弄される。
しかしそれは技を放つ方も同じでどこに突くかわからい突きがあらぬ方にいって隙をつくる
可能性もある。
しかしこのまま牽制しあっていても埒があかないのでキムは勝負に出た。
キムは槍を中央に構え少し先端を揺らし素早く突きを繰り出す、五月雨突き
無数の突きは副将目掛けて放たれた
副将は槍の真ん中を持ち円を描くように槍を回転させる。
それであらゆる攻撃を弾く防御陣が出来上がる。
五月雨突きとて例外では無く、その防御陣に次々弾かれていく
それでも強引に突きを繰り出すサム、それを全て弾く副将
その時サムの放った突きを弾かれた時槍が大きく弾かれた。
サムは槍こそ離さなかったものの腕が大きく弾かれ体が流れ大の字の様に
なってしまった。
副将はその隙を見逃すはずなく、槍の回転を止め、瞬時に構えなおし
4連突きを放ってきた。
キムはそれを避けることもできず全て食らってしまった。
しかし皮鎧のおかげで何とか戦闘不能になることはま逃れた。
しかしかなりのダメージを追ってしまっていた。
「チッしくじったぜ、どうやら運は俺の味方をしなかったらしいな」
とキムは独り言を呟いた。
圧倒的に優位にたった副将だが無理に攻めては来なかった。
キムは賭けにでた。
自分から距離を詰め、大きく槍を振りかぶった。
然しその攻撃は隙だらけであり勿論副将はその隙に攻撃を仕掛けてくる。
キムの脇腹当たりえお勢いをつけて薙ぎってきた。
キムは敢えて避けずその攻撃を食らう、ドスっと芯にくる痛みが襲ってきて
気絶しそうになるが自身の舌を噛みその痛みで何とか気絶せずに堪えていた。
そしてキムは敵副将の槍をガシッと掴み自身の頭を大きくのけ反れせ敵副将の
頭目掛けて頭突きをした。ゴッと鈍い音が鳴り二人は縺れるように転がる。
そして敵副将の上に乗り、サムはニッとにやけてまた敵副将の頭目掛けて頭突きをした。
何度も何度も繰り返した。
そして何度目かの頭突きの時敵副将がゴフっと言いそのまま動かなくなった。
おそらく気絶したのだろう。
キムはゆっくり立ち上がり
「ヘッ、戦いは頭でするんだよ」とまた独り言を呟いた。
しかしキムも頭から血を流しておりそのままその場に倒れこんだ。
サムは敵将ガイゼを倒しに向かった。
旗を守っているのが敵将ガイゼなのだから奴を倒せば必然的にこの戦いは終わる。
サムを含めこちらは五人、敵の守りもガイゼを含め五人と人数的には互角
後は各々の技量がこの戦いの行方を決める。
「やっときたかサムあんま来ないんで途中で戦線離脱したのかとおもったぜ」
とガイゼが笑っていた。
「ケッ、抜かせ、さっさと降参しろよ
そしたら痛い目見なくて済むぜ」とサムも返す。
「雑魚が何人集まった所でこのガイゼ様を倒せると思ってるのか
かかってこい」と誘っている。
確かにガイゼは今は模擬戦の規定上皮鎧を身に着けているが普段はプレートメイルに
身を包み大きな両手持ちの槍(グレイブ)を持っているもろに重戦車パワータイプの
戦士だ。おそらくその力で勝てるものはそうそういない
しかしスピードならこちらに分がある。
サムはさっと武器を構え颯爽と駆け出しガイゼの取り巻きの兵士をなぎ倒していった。
サムにかかれば周りの取り巻き等雑魚に等しくあっという間に倒れていった。
残るはガイゼのみ、こちらの五人で囲み四方から攻撃を仕掛ける。
しかしガイゼは大きな体を丸めそしてグレイブで大きく円を描くように横に薙ぎった。
サムは咄嗟に周りに「まてっ」と声をかけたが時すでに遅し攻撃を仕掛けていた
味方の兵はガイゼの攻撃を食らい皆後ろに吹き飛ばされた。
木にぶつかり止まった者、地面を転がっていく者など皆その一撃で戦闘不能となった。
それほどの威力がガイゼの攻撃にあった。
「ははははは、サムお前の隊の兵士は弱いな
まだ加減してやったというのに」
とガイゼは余裕を見せた。
流石にサムもあの一撃をまともに食らうわけにはいかない。「なんだ、結局一人になっちまったな、ははははは」
と高笑いを浴びせる。
しかし
「一人じゃないぜ、ここにもう一人いる」
とローランもその場に駆けつけていた。
「なんだぁおまえ、、、
そうかなんかスペシャルゲストとか言われていたな
しかしもうお前も傷だらけの満身創痍だろうが
そんな奴がこのガイゼ様の相手がつとまるのかぁ」
「ローラン、お前、、、」
とサムも心配そうに見ている。
確かに満身創痍で立っているのも覚束ないがまだ気力はある。
ここで踏ん張らないでいつ踏ん張るんだ。
これまで格上の相手にも怯まなかったこの戦いを見せてやるとばかりに
活き込んでいた。
それを感じとったのかサムは
「よし、行くぞ」と槍を構えなおす、ローランも大剣を構える
ガイゼもグレイブを構え全員が臨戦態勢を整えた。
ここからの戦いは、技・力・気力その全てを備えた者が制する。
まず、ガイゼが仕掛けてきた。
グレイブを縦に振りローラン、サム目掛けて振り下ろしてきた。
流石にそれをまともに受けるのは危険なので二人は左右に分かれ避ける。
グレイブは『どんっ』と大きな音を立て地面に叩きつけられる。
それを難なく避けたと思ったもののその叩きつけられた衝撃で地面の土や石が周りに
飛散する。
それで視界を阻まれた隙にガイゼの次の攻撃が飛んできた。
地面に叩きつけその反動で斜め横に攻撃してきた。
これはローランも避けられないと思い、大剣で防御する。
しかしやはりかなり重い攻撃で途中まで踏ん張ったが、最後までは踏ん張りきれず
後ろに弾き飛ばされる。
ローランは後方にごろごろ転がっていった。
「いっちょ上がり」とガイゼは言う。
そしてサムに向き直った。
サムはすかさず攻撃をしかける。
しかしガイゼのグレイブでその攻撃を全て弾きとばされる。
「かかか、お前の攻撃は早いが軽いんだよ!!」
そんな攻撃全て弾き飛ばしてやる。
「ならこれをくれてやる」
とサムは姿勢を深沈めそして一気に前にでて突きを放つ
「なぁにそんなもの」とガイゼはまたグレイブで弾きにかかる。
しかしガイゼのグレイブが大きく後ろに弾かれガイゼはそれを耐えようと
後ろにさがった。
地面を引きずるようにさがりようやく止まった。
「そんな必殺技を隠していたとはな
しかしその技は溜めが大きすぎてその後の攻撃が続かないみたいだな」
そうなのだ全身の関節と筋肉を使い槍に回転を加え一撃必殺の突きを出せるが
その反動ですぐに体が動かない。
当たれば敵を倒せるが避けられたり防がれるとその後に隙が生じてしまう。
その後も二人の一進一退の攻防が繰り広げられるが。
サムはじりじり体力を奪われていっていた。
このままではいずれガイゼの攻撃をかわせなくなり食らってしまう
そうなれば流石に勝ち目はない。
あの技を体にあてられればいいのだがだがガイゼもその隙をみせない。
ガイゼがグレイブで横に薙ぎって来たのを後ろによけようとした時
サムは足が縺れてしまう。
やばいと思った時サムの前におお剣が突き刺さりグレイブの攻撃を防いだ。
ローランがその攻撃を防いでくれたのだ。
「なんだおまえ、まだ動けたのか」
とガイゼも驚いていた。
「あぁ昔から体が頑丈なのがとりえでな」とローランは答える。
そしてサムにだけ聞こえるように
『おれが奴の隙をつくる、だからさの技を奴に叩きこめ』と
「なぁにまたすぐに吹き飛ばしてやる」とガイゼも余裕をみせる。
ローランは大剣をかまえる。
へたな小細工はいらない、今は渾身の一撃を打つことに集中した。
そしてローランから仕掛けた。
小細工なしで真直ぐ突っ込む、ガイゼも少し驚く
ガイゼが予測していたよりも早かった、ローランは射程内にガイゼを捉えると
そこから大きく飛んだそして大剣を大きく振りかぶり全身全霊でガイゼに叩きこむ
ガイゼは一瞬迷ったこのまま避けるか、受け止めるか。
だがガイゼの中の自信と驕りがその選択を誤らせた。
ガイゼは「そんな攻撃弾き飛ばしてくれるは」とガイゼも前に出て攻撃してきた。
大剣とグレイブが激しくぶつかる。
どちらも一歩も引かず力と力のせめぎあいが始まる。
流石はガイゼ、ローランの渾身の一撃にも負けず下がらず、踏ん張っている。
しかしローランも跳躍し全体重を大剣に乗せているのでガイゼの攻撃に立てている。
両社一歩も引かずその場で武器同士を合わせた格好で止まった。
ローランの渾身の一撃はガイゼには届かなかった。
だが今はそれでよかった。
ガイゼの隙を作れた。
ローランの斜め後ろ丁度脇をすり抜けるように後ろから槍が飛んでくる。
それはガイゼの急所、みぞおちに突き刺さり衝撃が走った、『どんっ』と
それをくらったガイゼは後ろに吹き飛ばされる。
勿論ローランの後ろに立っていたのはサムで必殺技を繰り出していた。
二人はガイゼが立ち上がってくるかと緊張したが、ガイゼが立ち上がって来ることは無かった。
この瞬間サム達の隊の勝利が確定した。
少しして訓練終了の合図が鳴り響いた。
自陣の防御班も責められながらも耐えてくれたようだった。
ローランもサムもその場にへたり込んだ。
だがお互いの顔を見て大笑いをした。
合同訓練が終了して両陣営ともにけが人は多数いるが
誰も重症者はいなかった。
勿論このあと打ち上げがありローランも誘われ後で行くことになった。
街にもどり打ち上げに行く準備をして指定された酒場に向かったが
少し早かったのかまだサムも隊員も来てなかった。
その代わりに後ろから声をかけられた
「よう、スペシャルゲスト」その声は聞き覚えがあった。
後ろを振りけるとガイゼがいた。
「そう身構えるなって、激励にきただけだ
とりあえずはおめでとさんよ」
ろーらんは素直にお礼を言った。
しかし今回勝てたのは運というよりもガイゼの油断によるものも大きかった。
それはガイゼ自身もわかっているのか
「確かに俺はお前たちを舐めてはいたがお前の最後の一撃は
あれは久しぶりに芯にきた一撃だった。
お前はまだまだ強くなる、期待してるぞ」
そういって立ち去って行った。
しばらくしてサム達が酒場に来た。
かなり豪勢に酒や料理を頼んでいた。
サムとキムが隣にきて話した。
「なんだ、最後は美味しいとこもってかれたってかんじだな
俺は最後気を失っていて気が付いたら終わってたからな」
とキム、
「でも最後を決めたのはサムだぜ」
「いや、あれは最後のさの一撃がなかったら決められなかったものだ
やっぱり今日の功労者はおまえだローラン」
とサムも称えてくれた。
「まぁ元々素質はあったんだろうけど、最初に訓練に参加した時と比べても
強くなったな」とキムも認めてくれた。
確かに訓練に参加したのは短い期間だったが、一人では無しえないほどの事を多く教わった。
それに実力者の二人が認めてくれた事は嬉しかったし大いに自身につながる。
「なぁローランお前さえよければいつでも内に来い」とサムは言ってくれた。
「嬉しい申し出だがおれは冒険者だからな」
「そうだったな、お前なら有名な冒険者になれるよ
死ぬなよ」
「さぁ今日は大いに飲め」とサムは周りを活気づけた。
男たちの夜はまだまだ続いた。
合同訓練編
【報酬】勝利に美酒
【経験点】2000
ソード・ワールド @jiu07760
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ソード・ワールドの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます