第8話【蛇神信仰編】上流探索


ローラン達は前回の依頼を終えてのんびりしていた。

オランに来てもう1週間になるあれ以来主だった依頼もなく焦らずゆっくり待とうということにしていた。

オーファンを出てもう2ヶ月程冒険者としても少し慣れてきた感じだった。

だが油断は禁物慣れてきたぐらいが1番危ないのだ

丁度今は昼、昼飯の為に冒険者の酒場にいた。

その時入口から1人の魔術師風の男が入ってきた、よく見ると前回の依頼主のローダだった。

ローダはローラン達を見つけると

「ここにいたか、丁度いい」といい近づいてきた。

どうやらローラン達に用があるようだ。

ローダは「前回はご苦労さん」と労うと

「早速だが、仕事を頼みたい」と言ってきた。

どうやら前回の仕事ぶりからローラン達を気にいってくれているようだった。

ローランはとりあえず座りなよと席をしめすと

ローダは席につき話を始めた。

「仕事というのは私とオランから南に3日程離れたところにソーニャと呼ばれる小さな村がある、人口は100人程だがそこは少し変わったし信仰をしていてそれを調査していたんだ」

話をまとめるとその村で信仰されてる『蛇神信仰』といつものがありそれを調べているらしい

その為に他の冒険者を調査に向かわせていたが期限になっても戻ってないので、また別の冒険者に依頼して行かせたがまたそれも戻らないらしい、流石にそれはおかしいと思い今回自分で乗り込むらしい、そのお供にローラン達を指名したとの事だ。

「依頼として登録してくれたら勿論付き合わせてもらう」

「勿論、依頼としてお願いする」といいローダは店の主人に話を通し仕事を引き受けた。

ローダは早速向かいたいとの事なのでローラン達は急いで準備しソーニャの村を目指す事にした。

小さな村までの道は舗装はされていなかったが

道中オラン付近ということもあり野党は全くでなかった、モンスターもジャイアントラットやジャイアントバットといった群れをなす吸血動物等が襲ってきたが今のローラン達には問題ない敵だった。

3日後特に問題なく、目的のソーニャの村に着くことが出来た。

村についてすぐにローラン達は異様さに気付いた。

人口100人程の小さな村にしても静かすぎた。

外を出歩いている人はいない、試しに近くの家を確かめるが誰も居ない。

「これはどういうことだ?人の気配が全くしない」ローダは言う

ローダも過去にこの村に来たことがあるらしいが、その時は普通に村人が生活していたらしい

取りあえずローダの案内で村長の家に行ってみることにした。

村の一番奥で他の家より少し大きく作られた家がそうだった。

家には扉というものはなくただ布で仕切られている入り口をくぐり中に入った。

案の定というべきか中には誰も居なかった。

文字通りこの村はもぬけの殻になっていた。

だが不思議なことに村には争った形跡がなかった、何者かに襲われて村人がいなく

なったわけではなく、自発的に村人はどこかにいったのだ。

ローラン達は1件づつ家を確認する事にした。

小さな村であることが幸いし家も30件程しかないのでまだ見て回れるレベルだった。

家の中を見ても特に争った形跡もなく普通に生活感のある感じだった。

特にすさんでいる訳でもないのでおそらく居なくなったのもまだ1週間かそこらだろう

後家を調べている時に気なった事があった、他の家もそうだが特に村長の家の屋根付近に

大きなレリーフが飾られていた。

それはいかにも奇妙で蛇が2匹かかれているのだがお互いの尻尾を噛んでいる

いや、食べているのだろうかそういうふうに見える。

また他の家には色は付いていなかったが村長の家の物にだけ色が付いており

金の蛇と銀の蛇だということが分かった。

それを見ているとローダが教えてくれる

「これが儂が研究している蛇神信仰の紋様だよ

元は北方諸国の湖の周辺で信仰されていたらしいが

この村の近くにはオランの北にあるミード湖の水流が流れ込んでいる珍しい川が近くにあり

この村の祖先は元はミード湖付近に住んでいて河を渡ってこの村に行きついたらしい

そしてそのまま信仰が残っているというかんじじゃな」と教えてくれた

「そしてあの紋様はウロボロスの紋様というものじゃ

蛇は脱皮を繰り返していく生き物だからそれに因んで

不老不死を願い信仰されていたらしい」

「古代期の話でもう殆ど文献も残っていないしそれを信仰している部族も居ない為

この村は貴重な研究材料だったのじゃ」

ローランもおとぎ話の世界でウロボロスなる邪竜がいて不死の力をもつ怪物がいたことを思い出す。

それとこの信仰または失踪には関係ないのだろうが、気になりはした。

ローラン達が全ての家を調べ終わった時にはもう夜になっていた。

明日はこの村の周辺、川付近を捜索しようと話になり今日は勝手に村長の家を使わせてもらい

休む事にした。

村長の家は思ったよりも広く4人が寝るには十分の場所が確保できた。

夜半過ぎたころの出来事、アップルジャックが目を覚ます、それはグラスランナーとしての

本能かレンジャーとしての経験かわからないが異変に気付く

すぐにローランを起こし

「何か木々が騒がしい」と伝える。

ローランは他の二人も起こし何があっても大丈夫なように準備をする。

暫く様子を伺っていると、外から水音が聞こえる。

「ピチャピチャ、ペタペタ」と何かが近づいてくる。

そしてその音が止まった、次の瞬間村長の家の外壁(といっても布で仕切られてテントみたいなもの)

から金属の突起物が一斉に襲い掛かってくる。

ローラン達は転げながらそれを避ける、おそらく槍で外側から突かれたのだろう。

そしてその突起物が引いたと同時にローランは外に向かって突進する

『バリリリ』と布を破いて外に飛び出した。

出てきたローランを警戒してか、槍による次の攻撃はなかった。

ウォッカ、アップルジャック、ローダもローランが突き破った穴から次々出てきた。

ローランは顔を上げ敵を見る、そしてあまりの驚きに固まる。

それは他3人も同じらしくだれも言葉を発さない。

そして敵は獣の鳴き声ともとれる音を放つ

「グルルルル」と、そこでようやくローダが「リザードマン」と呟く。

リザードマン、蛇のような顔を持ち、ワニもような尻尾そして二足歩行を行え手もあり道具も

扱える、大きさは人と関わらないぐらいで知能はさほど高くない。

群れで行動する習性をもつ亜人族だ。

だがドワーフ、エルフ、グラスランナーと言った種族とは異なりかなり攻撃性が高く

人間との共存は難しい種族である。

なぜ今ここにいるのかは分からないが明らかにローラン達を狙ってきている事は確か

であり、今まさに追撃をしようと構えている。

数はざっと10匹程いる。

初めて見る亜人族との戦闘に警戒しつつも襲ってこられたら迎え撃つしかないので

ローランは剣を握る、ウォッカも前に出てきてローランに並ぶ。

アップルジャックとローダは少しさがり後方からの支援にまわる。

幸い囲まれている訳では無く敵は放物線上に前方のみなので何とか迎え撃てる。

リザードマンが持っている武器は全員ショートスピアかロングスピアのどちらかであった。

 

リザードマンの1匹が「ウォォォォォォ」と雄たけびを上げるとそれを皮切りに

他のリザードマンも動き出す。

リザードマンの半分は前に出てきて一斉に槍で突き攻撃を繰り出す。

ローランはそれを剣で払いの出る、ウォッカもバトルアクスで受け止め最初の攻撃を

止める。

槍を引いたと同時にローランも前に出て敵との距離を詰める、そして次の攻撃が来る前にグレートソードで大きく横に薙ぎ払う。

勿論リザードマンも槍でガードするがローランのグレートソードの攻撃が思った以上に重く

前にいた3匹が後ろに吹き飛ばされる。

それで敵に隙ができウォッカも前にでて目の前の敵にバトルアクスを振り下ろす。

敵はこれもガードを試みるがウォッカの一撃の方が勝っておりそのまま地面にたたき付けられる。

たたきつられて転がっている敵をローランはすかさず剣で突き刺しとどめをさす。

吹き飛ばされたリザードマンと入れ替わりで後ろにいた奴らが前にでてくる。

そしてすぐにつき攻撃をする。これもローランは剣でいなそうとするが狙いが外れ、そのうちの1本が

ローランの脇腹をかすめる。

体に痛みが走り一瞬硬直をしたことで隙ができそこにさらに槍の攻撃が来る。

まずいと思た時後ろから石が飛んできて目の前の槍の穂先に当たる。

それで槍の軌道が変わり槍はローランの頬をかすめる程度で済んだ。

アップルジャックが後ろかスリングで援護をしてくれていた。

次は意表を突かれたリザードマンに隙ができた、それをローランは見逃さず剣を握り直し

目の前のリザードマン目掛けて突進突きをした。

剣はリザードマンを貫き数歩進んで止まった。

周りを確認するとウォッカもさらに1体敵を仕留めていた。

これで残りのリザードマンは7体となったがそれでもまだローラン達より多い

しかも最初に吹き飛ばした3体も体制を立て直しており前衛に加わろうとしている。

しかし先ほどまで横に広がっていた敵が今はほぼ直線状にいる。

そして後方のローダが叫ぶ

「ローラン、ウォッカ両サイドに散れ!!」と

その声を聴いた瞬間ローラン、ウォッカは両端に飛んだ。

飛んだ直ぐ後に万真ん中を電撃が走る。

『ビリィィィィ』前方にいたリザードマン達を電撃が貫く

ローランは立ち上がり前方を確認すると何か焦げた匂いがしその後バタバタと

リザードマン達は崩れ落ちていった。

後ろにいたローダが古代語魔法の一つである『ライトニング』を放ちリザードマンを一掃してくれた。

ローランは「まさか7体のリザードマンを一掃とはやるな」

と言うと

「丁度位置関係が良かったのだよ、前方に敵が集まっていたからね

そうでなければもう少し時間は掛かっていただろうに

でも私たちが負ける事はあんかっただろう」となぜか誇らしげに言った。

それにしてもわからないことだらけだった。

リザードマンがこんな所にいる事、水辺が近くにあるからいる事自体は可能性があるにせよ

いきなり襲ってくることも解せない。元来人里離れた所に住んでいて人を避けて暮らしている。

リザードマンは攻撃的ではあるがそれは自分たちの領地に踏み入れた場合のみである。

ここは元々村でありいわば人間の領域だ、ゴブリン共ならわかるがリザードマンがとなると

おかしい、何やら裏で糸を引いている者がいるかもしれないというのがローダの考えらしかった。

このまま調査を続行するか、一旦オランに戻り報告して大規模な捜索をするかとなったが

もし村人が何かに巻き込まれていた場合消息を絶って一週間経っているのであれば早めにみつけないと

まずいということになりできる限りの捜索を行う方向で固まった。

まだ夜明けまで時間があるので交代で見張りを行い朝まで休む事にした。

朝がきて一行は軽い食事をして、捜索を開始する元々は村の付近を捜索するつもりでは

あったが、今は昨日襲ってきたリザードマンがどこから来たのかを追跡する。

ここはレンジャー技能を習得しているアップルジャックを主導で行う。

基本的にはリザードマンの痕跡、足跡等を確認し遡っていく。

追跡していくとやはりというべきか村付近の河に行きついた。

ここから出て村に入ったのだろう、しかし痕跡は河に入った事もあり消えてしまっていた。

でも河から来たってことは恐らく上流から来たのだろうから河を上って行くことにした。

暫く河を上がっていくと、段々河幅が狭くなっていく、

「ここからミード湖に繋がっているのか?」ローランは聞く

「たしかそうだと聞いているがどの様になっているかは儂も知らん

この河を上がるのも初めてじゃからな」とローダは言った。

ここからオランを経由せずにミード湖に繋がっているならおそらくどこかで地下に潜っている

可能性はあるなとローランは思った。

暫く上がると河にジャイアントリザード達がいた、リザードマンではなくただの大きなトカゲだ

ジャイアントリザードはローラン達を見ると久しぶりの肉とばかりに襲ってくるしかしローラン達は

特に苦戦もせずジャイアントリザードを殲滅させにかかる。後1体というところで

危機を感じて1体は逃走する水の上での速さは人間の比ではなくたちまち消え去っていった。

然しその方向が少し気になった。

上流ではなく脇道にそれて藪の中を突っ切っていたのだ、後を追いそのわき道を慎重に調査した。

するとアップルジャックがそのわき道に本当に狭いが水流があるのを発見する。

この河の支流と案っているようだされに調査すると木の枝に大きな鱗のようなものがあるのが見つかる。

ローダが鑑定するとおそらくリザードマンの物だろうということが分かった。

ローラン達はここから支流を上がっていくことにした。

痕跡を見逃さないように慎重に上がっていく、河というより湿地帯みたいな感じで

でも周りには木々があり視界も悪い奇襲なども警戒し進んでいくと明らかに人が通った痕跡がみつかる。

さらに調べると無数の人の足跡があった。

リザードマンではなく人の物これは村人がここまで来ているのかと考える。

周りの木々が騒めく、アップルジャックが「伏せて」と叫ぶ

ローラン達はかがみ込んだ。

すると周りから矢が飛んできて周りの木々に突き刺さる。

前方を確認すると数体のリザードマンがいた。

どれも弓を持っている。

一気に距離を詰めるには足場も悪いうえ距離もあった。

ローランは奇跡を使うべく心の中で神に祈りをささげる。

そして「フォース」と叫び前方のリザードマン目掛けて衝撃波を放つ

見事に命中しリザードマン1体は後ろに吹き飛ぶ。

同時にローダも古代語魔法の詠唱に入っており「エネルギーボルト」と

唱えると、杖の先から純エネルギー系の魔法が穂走りリザードマンを貫く

後1体はアップルジャックがスリングで威嚇する

これは直接には当たっていないが威嚇としての効果を十分に発揮していて次の攻撃が来る前に

ローランは接敵することが出来た。

そしてグレートソードでリザードマンをたたき切った。

あのリザードマン達は見張りであろうということはこの先にリザードマン達の巣がある可能性が高い。

ローラン達は周囲を警戒しつつ臨戦態勢をとり進んでいく。

少し行くと木々が開かれた場所に出る。

そこには古びた神殿があった。

もう何十年、何百年と経っていそうな古びた神殿その周りにチョロチョロと水が湧き出している。

神殿前まで近づく、表にはリザードマン達も居なかった。

神殿の屋根付近に大きくウロボロスの紋様が彫り込まれている。

「こ、これはウロボロスの神殿なのか」とローダが声をもらす。

この湧き出している水がミード湖から来ているのかもしれないし中にりザードマン達の巣が

あるかもしれないし、村人達も中にいるかもしれない

ローラン達は神殿の中に立ち入る事にした。

中は薄暗く壁には苔がびっしり張り付いており、かなりカビ臭い。

リザードマン達の気配はない、それどころか村人がいる様子もなかった。

神殿は何個かの部屋に分かれておりその扉を開けて一部屋ずつ調査していく。

奥に進んでいくと広い部屋にでて奥に祭壇がある、しかしここにも人はいない

でもさっきとはまた別の匂いがする。煙で燻された薬品の匂い。

それは祭壇付近から匂ってきていた。

アップルジャックが捜索すると祭壇下に隠し階段が見つかる

どうやら匂いはここから上がってきているようだった。

ローラン達は下を捜索することにした。

下の通路は狭く一人通るだけで精一杯だった。

ここで敵と出くわしたら最悪だなと考えていたが運よくそうはならなかった。

奥に進むにつれ段々匂いが強まっていく先に扉がありそれを開けた。

中は地下だというのにかなりの広さがあり更に下は広場みたいになっていた

ローラン達が出た場所は地下の通路みたいな所で回って行って下に降りる階段があり広場に降りられる

広場の先には祭壇がありそこから何やら煙が出ていた。

下の広場には人が沢山いて何やらぼーとしているようだった。

「あれは村人か?」ローランはローダに尋ねた。

ローダは見渡し「そうだろう、何人か見た顔がいる」と答える。

「何をしているんだ?」

「わからんが、あの煙が麻薬か幻覚剤の類で意識がない状態なのだろう」

「操られているということなのか?」

「詳しいことは分らんが何かに利用されているのは間違いだろうな」

「助けないと」と言っていた時にピュっとしたから矢が飛んできた。

咄嗟にさがりなんとか当たらなかった、下を見るとリザードマンでは無く

何やらアサシン風の恰好をしたものが弓矢でこちらを狙っていた。

ローランはしゃがんでその矢をかわす。

下にはリザードマンらしき者はいないし敵が何人いるのかもわからない

この状況で回って階段を下りるのは危険だ

しかしここから下まで3m程あり飛び降りれないことはないが死ぬことはなくても

ダメージをうける、敵の人数が分からない状況でそれも危険だった。

そこでローダは

「ローラン達はここから飛び降りて敵を迎え撃ってくれ

儂に任せろ」と言った。

ローランはウォッカ、アップルジャックを見て頷いた

それからローダを信じ勢いよく柵を超え下に飛び降りた。

ローダは既に古代語魔法の詠唱に入っておりローラン達が飛び降りた瞬間に詠唱は終わり

魔法を唱える「フォーリングコントロール」

その瞬間ローラン達の体がふわっとして下にゆっくり着地した。

そしてローラン、ウォッカ、アップルジャックは着地したと同時に走り出す。

ローランは先ほど弓矢で狙ってきた奴の元へウォッカとアップルジャックは祭壇を目指す。

弓矢で狙ってきた敵はローラン達が下りて来るや弓矢を捨て腰のシミターを抜く

ローランと激しく剣で切りあう。

ウォッカとアップルジャックは祭壇に向かい煙の原因を確かめ可能であればそれを排除する。

祭壇に向かっていると横から人影が見える。

ウォッカは立ち止まり「ここは引き受ける」といい敵を迎え撃つ

ローランと敵はお互い距離を保ち剣で攻撃をしていた。

一撃の攻撃力はもちろんローランの方が上だがシミターでローランの攻撃を捌いている。

ローランの攻撃のヒットポイントを巧みにずらし剣をいなしその隙を付いて攻撃してくる。

ローランは苦戦していた、ローランは戦いながら昔ジェニに稽古をつけてもらっていた事を

思い出す。その時もローランの攻撃を巧みに捌き追撃を脇や腿にくらわされていた。

「貴方はその恵まれた体で力に頼りすぎているのよ

それは別に悪いことではないのだけれど

この世には技というものがあるのよ、貴方のその力を利用して

攻撃を与える今のようにね」

「勿論その技を凌駕するほどの力もあるのだけれど

そんな事が出来るのはリジャールぐらいなものね」

「でもねそれを逆手に取る事もできるのよ

相手がしている事がわればそれを利用して相手に隙を作らせることも可能

貴方はそれを身につけなさい」

ローランは大きく振りかぶる、敵はローランの攻撃のヒットポイントをずらし

剣を捌く準備をする。

ローランは攻撃する、敵と剣が触れる手前で手首をひねり剣の軌道を少し変える。

それで相手のヒットポイントをずらせるはず、剣がぶつかるしかし相手は急に軌道を

変えられたせいで思うところにあたらず剣が大きく後ろ弾かれた。

ローランのグレートソードは地面に当たる、地面に当たる反動を利用し力技で強引に

そのまま敵に刃を向けた。

敵はそれを避けることも剣で捌くことも出来ず腹に剣が突き刺さった。

そして敵は崩れ落ちた。

ウォッカもまた苦戦していた、ドワーフは元来敏捷性が低いので会費は得意ではない、だから金属鎧を来てある程度の攻撃を受ける覚悟で戦う

しかし今回の敵は金属鎧の接合部分を巧みに狙い確実にダメージを与えてくるしかもウォッカの攻撃を上手く捌いてだ

力量としてはローランの戦った敵と同等かそれ以上なのだろう

このままではジリ貧だった。

そこでウォッカは賭けに出た。

バトルアクスを両手に持ち替え一撃で敵を倒す方法に切り替える、しかしそれは確実に敵に当たらなければ意味が無い。

ウォッカは大きくバトルアクスを振りかぶった。

勿論胸から下にかなりの隙ができる。

敵はその隙を見逃さない。

持っているシミターでウォッカの腹辺りの接合部を狙って突いてきた。

敵のシミターはウォッカの腹に突き刺さる。

グサッと刃が入り込み敵はそのまま貫こうとする。

しかし刃が入って少しすると刃がこれ以上入らなくなった。

そうウォッカはワザと隙を作り敵に攻撃をさせそして相手の動きを止めようとしていたのだ。

ウォッカは全身の力を入れ肉体の防御力で敵の刃を止めた。

敵はすぐ刃を抜こうとしたがそれも抜けたい。

そしてシミターを手放し自分は下がろうとしたが、その時にはもうウォッカのバトルアクスは自分の顔の手前にあることに気づく

はっと顔を上げた瞬間にバトルアクスは振り下ろされた。

ズシャッと音がしウォッカのバトルアクスは敵の頭を潰した。

敵はそのまま力なく前のめりで倒れ込んだ。

アップルジャックは祭壇に着こうとしていた、

しかし祭壇奥からぬっと人影が現れた。

そして何かを呟いた。

次の瞬間アップルジャックは強い衝撃を受け後ろに吹き飛ばれた。

そしてゴロゴロ転げ周り何回転目かで膝をつき止まった。

あれは見た事があった、食らうのは初めてたが

いつもローランが放つ衝撃波そのものだった。

あれは神の奇跡『フォース』

これは敵に神官がいるということだ。

ローランとウォッカはアップルジャックが吹き飛ばられたのを見てすぐに駆け寄った。

そして敵を見ると掌を前に向けていた。

ローランにはおそらくフォースを使ったのだとすぐにわかった。

「大丈夫か?」とアップルジャックに声をかける

アップルジャックは苦しそうに

「すまねぇ」とつぶやく

ダメージは受けているが致命傷にはならなかったようだグラスランナーは元来魔法攻撃に耐性があり余程のことがない限り大ダメージにはならない。

ローランはすぐにアップルジャックに癒しの奇跡を施す。

次にウォッカもかなりのダメージを負っていたので続けて癒しの奇跡をほどこした。

2人を回復させ周りを確認する、こちらに向かって来る敵影はない、おそらくあの邪教徒の神官だけだろう、しかし邪教徒の神官は中々に手強い普通の奇跡に加え邪教徒専用の奇跡も使う

手の内が見えないので一気に駆け寄るとさっきみたいに反撃を食らう恐れがある。

だが今この時に魔法の力を感じた、多分後ろのローダが3人に前回のように補助魔法をかけてくれたのだろう。

これで少しぐらいなら耐えられる、3人で一気に向かえば誰かは手が届くかもしれない。

しかしそうしている間に邪教徒の神官は叫んだ

「皆の者、あの3人を抑えろ」と

それを聞いた村人はのそのそ立ち上がりこちらに向かって来て掴みかかって来る、一人一人の力は弱いが多勢に無勢で身動きが取れない。

その時ローダの声がした。

「ローラン精神を集中しろ」と

それを聞き3人は己の精神を集中させる。

ローランの周りに何やら恋煙幕のようなものが現れた。

そしてその煙幕を吸った村人はバタバタと倒れて行った。でも死んでいる訳ではなくどうやら眠っているようだ

おそらくローダは古代語魔法の『スリープクラウド』をローランの周りに放ったのだろう

魔法耐性の補助と精神を集中させ抵抗力を上げた3人はその魔法が効果を現さなかった。

前に道が開けた3人は邪教徒神官に向けて駆け出す。

誰か3人のうち一人でも近づけたら何とか次の手は打てると信じて

駆け寄る前に邪教徒神官は何やら動きをみけた、奇跡を使うつもりだ。

アップルジャックは咄嗟に止まりスリングで邪教徒神官に向けて攻撃する。

それが神官の胸の辺りに当たり神官は一瞬動きを止める、攻撃の範囲に入った事を確かめローランはグレートソードを握り大きく跳躍し振り下ろす。

神官はその攻撃を避けるために後ろに飛んだ。

ローランの攻撃は空を切り神官に当たらなかったが、そこにあった祭壇に当たり祭壇を粉砕する。その時祭壇の上に置いてあったツボも同時に叩き割れた。

匂いと煙の原因はこの壺から発せられていたようで壺が割れ中身が散り散りになるとその煙は次第に収まっていく。

神官は「チッ」と舌打ちをし手に持っていた

ワンドでローランを攻撃する。

それをウォッカがバトルアクスで防いだ。

すかさずローランも反撃を試みたがこれもかわされる。

追いついてきたアップルジャックも加わりこれで3対1になる。

形勢が不利と感じたのか神官はジリジリ下がりある程度まで下がると祭壇後ろの通路を通り逃げていった。

ローランは後を追落したが

「ローランまて」とローダの声で止まる。

「罠があるかもしれん、それより今は村人の救助を優先しよう」と

要は今は深追いはするなと言いたかったらしい。

確かにここにいた敵はどれも手練だった、これ以上の深追いは危険だったのだろう。

ローランはローダの言葉に従い村人の容態を確認する。

寝ているものも含め特に外傷はなさそうだった。

あの煙を吸い意識を混濁させられていただけらしかった。

ここからみんなを村まで送り届けなければならない。

とりあえずローラン達が先導し来た道を戻り外に出る事にした。

しかし外に出た時には驚くべき光景になっていた。

神殿から出た時には周りをリザードンマン達に囲まれていた。

あの邪教徒神官とリザードンは仲間なのか別なのか分からないが

これはまずい状況ではあった。

数にして約30以上流石に村人を守りながら相手に出来る数ではない、そうでなくてもローラン達は先程の戦いで疲弊している。

リザードンマン達は今にも襲いかかって来る気配があった。

万事休すと思ったその時だった、

「おぉぉぉ」とリザードマンの後ろから雄叫びが聞こえた。

次の瞬間リザードマンと同等、いやそれ以上の数の兵士がリザードマンに向けて攻撃している。

状況が呑み込めなかったローラン達はその戦いをただ傍観していた。

リザードマン達が排除され戦いが終盤に差し掛かっていた時に1人の男がローラン達に近づいてきた。

「無事で良かった」

彼はこの兵士達のリーダーでサムと名乗った。

彼等はローダが後から雇った冒険者達がリザードマン達に襲われて瀕死ながらオランに到着しそれをオランの衛兵に伝えた。

それを重く受け止めた国が兵を出してくれた。

その時には既にローダは村にたっていたので

リザードマン討伐とローダの捜索を請負追いかけて来てくれていたのだ。おかげでローラン達は命拾いした。

この後村人を無事村まで誘導してくれた。

後の調査や聴取は兵士達に任せ

ローラン達はオランに戻る事になった。

3日後ローラン達は無事オランに着いて

そのまま酒場に行った。

ローダが奢ってくれるとの事で

今回の依頼も重い他危険が伴ったのでそれを労ってのことだろう

たくさんの料理と酒を頼む。

「それにしても今回も中々ヒヤヒヤもんだったな」とウォッカ

「ほんとだよ、命が幾つあっても足りない」

とアップルジャックは愚痴を言う

「まぁ悪かった、まさかあんな事態になってるとは思わなかった」とローダは弁明する。

確かに今回の冒険は中々危なかった

敵も中々の手練で最後のリザードンマンの大群はもうだめかと思った。

「それにしてもお前達は中々運が強いな」

とローダは言う。

そういう問題でもないだろうが確かに間一髪って感じの冒険だった。

よく命があったものだ。

これは後日談となるのだが、結局村人が何故あの神殿にいたか等は分からなかったらしい

神官が村に来て村長に蛇神信仰について語っていたらしいがそれから記憶が曖昧で次気がついたらローラン達が助け出していた所らしかった。

それにリザードンマンと邪教徒神官との繋がりも不明でありあの神殿の場所は明らかにリザードンマン達の領土だったのに襲われてないって事は何かしらの盟約が結ばれている可能性があることを示唆していた。

その後もあの神殿付近を捜索されたがリザードンマン達の姿は見なかったらしい。

「まだまだ分からないことだらけでこれからも

仕事を依頼するから頼むぞ」とローダに言われ

ローダが卸してくれた高級葡萄酒を飲まされる

その酸っぱさといったらとても飲めたものではなかった。


【蛇神信仰の村の調査】

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