第4話強襲

それは3日目の夜に起こった。

いつものように夜の食事を終えトーラスとロバ早目に就寝する。

トーラス自身も明日の昼頃にはラムリアームに着くと思ってるらしくかなりの上機嫌だった。

明日にはラムリアームで商売ができると喜んでいるのだろう。

ローラン達もこのまま無事に着けば今回の依頼は終了し成功報酬も手にする事ができる。

しかし世の中そんなに上手くいくものではなかった。

夜が老けローラン達は交代しながら見張りをしていた。

ちょうどローラン、ウォッカの見張りが終わり

次ローラン、アップルジャックの見張りが始まりしばらくした時の事だった。

風が強く周りの木々がざわめく隣にいたアップルジャックがピクっと動いた?

「どうした?」

ローランは聞いた。

「周りの雰囲気が変わった

これは少しまずいかも…」

アップルジャックは言う。

グラスランナーは特殊な能力があり

小さな虫や木々等の声を聞く事が出来る

声を聞くと言っても話が出来るわけではなく

その周りの環境の変化等が伝って来るのだ

これは危険予知等に活用されたりする。

ローランは周りを警戒した。

木々の隙間等から何か飛び出して来てもいいように、だが何かが飛び出してくる事はなかった。

しかし茂みの中から石が飛んで来た。

ドン、と音を立てた。

ローランには当たらなかったが近くの木にあたり当たった木の皮が捲れている。

これは普通に投げただけではなくスリング等の道具を使って投げたものだまともに当たればダメージを受ける恐れがある。

周りに警戒しながら周囲を見渡すと

何か小さな人型の生き物が茂みから顔を出した。

一見隣にいる小人族の仲間かとも思ったが

すぐにそうではないことがわかった。

それは怪しく光る目、耳が少し尖っており、花も人に比べると大分と長い口元はにやけているが常にヨダレが垂れていた。

ローランは自分の知識からそれがゴブリンである事がわかった。

ぱっと見姿を現したのは5体程だがゴブリンは群で動く事が多い恐らくその倍ぐらいはいるのだろう

「敵襲」

ローランは叫んだ。

すぐにウォッカは起き先頭の準備に入る。

トーラスも目が覚めテントの奥で震えている。

ゴブリン共はのそのそと近寄って来る

手には棍棒やダガー、手製の槍等が持たれていた。

ローランは敵がどう来ても対応出来るように

剣を構え相手の出方を伺った。

ゴブリン達は

「ゴブゴブ」

と何か話している。

あれはゴブリンの中で使われているゴブリン語だろうと思った。

ゴブリンを調べる学者達はその言語が理解出来る者もいるらしいがローランはそんなものに興味はない。

奴等が何を話しているのか分からない。

一体のゴブリンがローラン目掛けて襲いかかってくる。

持ってるダガーを突き立てて来た

「フシャー」

ローランはもってるグレートソードをゴブリン目掛けてまっすぐ突き立てる。

ブシャーと音を立てグレートソードがゴブリンの腹に突き刺さる。

ゴブリンは「ウギャー」と悲鳴をあげるが

ローランは構わずそのまま剣を振り上げそして振り下ろす。

ドンと地面に剣が突き刺さると同時にゴブリンが真っ二つになった。

「よし、まず1匹」

とローランは言う。

ウォッカも臨戦態勢に入っている。

アップルジャックも流石にダガーを構えて応戦するようだ。

残りのゴブリン共は一切に3人目掛けて襲いかかって来る。

やはり更に茂みからも5体のゴブリンが出てきた。

恐らくこれは斥候なのだろう

近くに巣がありその近辺を見回り獲物がいたら襲いかかって来る。

もしかしたら他にいたゴブリンが仲間を呼びに行ってるかもしれない。

あまり時間はかけられないということだ。

ローランはゴブリン共に向かってグレートソードをなぎ払うこれが牽制になってそう簡単に近ずけないはずだと思っていたがゴブリン達は気にせず向かって来た。

端にいたゴブリンには剣の一撃が入った感触はあったが他の者達はそれがクッションになり体制を崩しながらも向かってくる。

それらをかわしつつ次の一撃を出そうとしたが周りの木々が邪魔でこの大きなグレートソードを振り回すには少しばかり場所が悪かった。

アップルジャックはゴブリンの1匹とやり合っていた。

ゴブリンの攻撃はアップルジャックには当たっていないヒョイヒョイかわしながら持ってるダガーを突き立てる

しかし元々の筋力のなさが出てゴブリンに致命傷を与えるダメージに至っていない。

ウォッカも茂みから新たに出てきたゴブリン達に囲まれている

彼の持っているバトルアクスもそれなりに大きな武器となる為ローラン同様この場所では扱いずらそうだった。

ローランに3体、アップルジャックに1体

ウォッカには4体のゴブリンが周りにいた。

さすがに多勢に無勢であり少し部が悪かった。

交戦を続けている中ローランは木の幹に足を取られてしまい転んでしまった。

この隙をゴブリン共はみのがさなかった。

体は一気に襲いかかり馬乗りになろうとする

ローランもそうはさせないと必死に堪えながら応戦する。

急所を守りつつ応戦しているがジリ貧だった。

そこでローランは一旦持ってるグレートソードを手放し目の前のゴブリンに殴りかかった。

ゴブリンは顔を殴られのけ反っている。

その隙にローランはゴブリンが持っている

手製の槍を奪いゴブリンの喉元に突き刺す。

「ブギャー」

ゴブリンは後ろに倒れた。

他の2体は警戒して襲って来ない。

ローランはアップルジャックと対峙しているゴブリン目掛けて神の奇跡を放つ

『フォース』

アップルジャックの前にいたゴブリンは

神の奇跡をまともに受け吹っ飛ぶ

そしてローランはアップルジャックなね向けて

叫ぶ「吹け!!」

アップルジャックは合点したとばかりに

腰に収めていた笛を取りだり吹く

アップルジャックの能力の1つバードには

呪歌というものがありその中には敵の耳を共鳴させるものがある

それを使わせて敵を怯まそうという考えだった。

「キーーーー」という音が鳴り響いた時

ゴブリン共は少し身を硬直させた。

ローランもウォッカもその隙を見逃さず

的に攻撃する。

グレートソードは振るう事は出来ないが

突き刺すだけなら使いようはあった。

ウォッカは木を上手く避けながら斧を振りかざす。

一気に形勢は逆転されあれよあれよとゴブリン共を薙ぎ倒していった。

そして立っているゴブリンは1匹も居なくなり

戦闘が落ち着いた頃トーラスがテントから姿を現した。

「なんとかなりましたか?」

と声を掛けてきたので

ローランは

「まだ出てきたら危ないですよ」

と声をかける間もなく1匹のゴブリンが

起き上がりトーラス目掛けてダガーをつきさす。

グサッとゴブリンのダガーがトーラスの腹に突き刺さる。

すぐにローランはゴブリンが使っていた手製の槍をゴブリンに投げゴブリンの頭に刺さる

ゴブリンはドサッと音を立てて倒れた。

ローランはトーラスの元に行き傷を確認する。

幸いそこまで深くは刺さっていないようだった。

ローランは神の奇跡でトーラスの傷を癒す。

心の中で『神よ』と唱え「キュア・ウーンズ」の奇跡を発動させる。

トーラスの傷口当たりが光り傷はみるみるうちに塞がっていった。

傷は完全に塞がったがトーラスは気分が優れないのかぐったりとして倒れた。

おかしいと思いローランは傷口のあった所を確認する。

すると傷口があったとこら辺が緑色に変色していた。

アップルジャックはゴブリンのダガーを拾い上げて言う

「これは毒だな

そこまで即効性のあるものじゃないみたいだが、ほっとくと不味いものかもしれない」

ゴブリンは自分の糞尿を混ぜて毒を作ると聞いた事があった。

恐らくそれをダガーに塗っていたのだろう。

ポイズンポーション等があればそれで毒を癒す事が出来るが今はそれを持っていなかった。

神の奇跡で『キュア・ポイズン』がありそれでも毒を癒せるがローランはまだその奇跡をつかえない。

万事休すであった。

そうこうしているとトーラスは更に具合が悪くなり昏睡していった。

街に行けば教会がありそこでも癒して貰えるがラムリアースまでまだ後半日以上ある中そこまで恐らく持ちそうになかった。

打つ手がなく、トーラスが息を引き取るのを見ているしか無かった。

まさかの依頼主を死亡させてしまうという事態になってしまったのだ。

ここにまたゴブリン共が来る可能性もあるのでこの場を離れ無くてはならない

しかしトーラスの遺体や荷物、ロバ等をそのまま置いて行く事持っている出来ないので

3人は早急に出発の準備をして夜の街道人出てラムアースに向かうのだった。

夜から移動したかいもあり4日目の昼前にはラムリアースに到着する事ができた。

ローラン達はそのまま冒険者の酒場に向かい

今回の依頼内容や事の経緯を店の主人に話した。

主人は話を聞き終えると

「そうか、それは残念だったな

依頼は失敗することもある」

とローラン達を慰めた。

「ファンのオヤジ(冒険者の酒場の主人)には俺から手紙を出して置くよ

してその商人の故郷なんかは知ってるのか?」

勿論知るわけもなくそのまま伝えると

「そうか、それは仕方ないな

なら町外れにあるチャザ(6大神のひとつ幸運を司る神)の教会があるからそこで埋葬して貰え」

と言われる。

商人の多くはこの幸運の神を信仰するものが多いのでそういったのだろう。

トーラスの荷物やらロバは店の主人が上手いこと処分してくれるらしい

ローラン達はトーラスの遺体を連れてチャザ神殿へ向かった。

そこでは司祭が迎えてくれてローランは司祭に経緯を話てトーラスの遺体を引渡し埋葬をお願いすることにした。

ローラン達はまた冒険者の酒場に戻る事にした。

戻って何をする訳でもなく席に座り誰も話さなかった。

反省点などは沢山あっただろうが今はそんな事考える気力もなかった。

3人が項垂れてテーブルに座っていると

店のオヤジが来てエールを3つ置いていった。

ローランは

「これは?

注文してないぞ?」

と言うと

「これは俺からの奢だ」

と店のオヤジは言うそして

「冒険者をしていれば依頼を失敗することもあるこの仕事をしていればそういう奴等も沢山見る、だかなお前ちはまだ運がいいほうだ」

ローランは言ってる意味が解らず

「運がいい?

依頼人を死なせておいて?」

「そうだ!確かに依頼人を死なせてしまったのは残念なことだ

しかしなまだお前達はいきているじゃないか?

酷い時はその時に全滅して他の冒険者から死体を持ち込まれて発覚する事だってあるんだぞ!?」

「要はだその失敗をどう次に活かすかって事だ

今回の失敗を糧にしてもっと強くなれ

依頼人を死なせてしまわないように」

ローランはそんなにすぐには気持ちを切り替えられないがオヤジの言っていることは十分わかった。

確かにそうだ俺が俺達が弱かったからこの依頼を依頼人を死なせてしまい失敗した。

だったらもっと強くなればいい

そう思う事にした。

ローランは目の前に置かれたエールを一気に飲み干した。

すごく苦かった。

それはエールの苦さかこの依頼の内容かが解らないぐらいに。


依頼【ラムリアースまでの護衛依頼】

報酬:前金150ガメル

:成功報酬0(依頼人死亡により失敗)

経験点:500点+α(失敗によるものと敵を倒した分)

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