Day.4 死神少女の願い
Day.4-1 物憂げな死神
魂の残量が残り四日となった
それに対してレイカは着々と魂を然るべき道へ送っていた。
ついさっきもまた一つ現世へ生還させたところである。
「はぁ……」
レイカは物憂げにため息をついた。
「流石に疲れたんじゃないのか?」
「大丈夫よ。ねぇ、繋希君。あなたの家族ってどんな人?」
「藪から棒だな」
おもむろに聞いてきたレイカの瞳は繋希を見ておらず、ただ遠くへ向けられていた。
「家族か。良い家族だと思うよ。一時期俺は部屋に引きこもってた時期があったんだけど、その時も責めるでもなく、変に気を遣うでもなく調度いい距離感でいてくれたっけな。俺はそれに甘えていたのかもしれないけど部屋を出たくなくて、いや出られなくなってて部屋の隅で泣き続けてたんだ。そんな状態でも咎められたりしなかったな」
繋希もまたレイカが見ている方へ目を向ける。
だがそこには何もなく、あるのは変わることのない殺伐とした景色と重い雲だけだった。
「放任とかではなくて?」
「そういうのじゃないよ。小さかった時はよく𠮟られたし、駄目な事は駄目、良い事をしたら褒めてくれたよ。だからと言って二人共過干渉ってわけではなく、見守るってスタンスで俺を育ててくれていたかな」
「そうなんだ……」
繋希はその言葉にどこか寂しさというか、内に秘める何かを感じたので、
「レイカはどうだったんだ?」
と聞き返した。
「私は…そうね………」
レイカはその後、その続きを話す事は無かった。
詮索されるのが嫌だったのか、少しして話題を変えた。
「私の事よりも自分の事を心配しなさい。このままじゃ地獄行きよ?」
繋希の役目。
レイカのサポートをしつつ、自身の魂の期限である七日間以内にレイカが死神としての役目に私情を挟みそうになったら正すこと。
現在レイカにそんな様子が無いまま四日目に突入しているわけである。
「とはいっても、難しい気がするんだよなぁ。そもそもレイカが心を乱す時なんて本当にあるのか? 今までだって淡々とやってきてるし、良くも悪くも情に流されてないというか、冷淡というか」
「まぁ、それが私の役目だからね。私も私で達成したら叶えたい願いがあるもの」
「ほう。それは気になるな。教えてくれても?」
「繋希君が言ってくれたらね。あるんでしょ? 叶えたい願い」
「俺の事は何でも知ってるって最初に会った時に言ってなかったか? というか、前に言ったような気がするんだけど。まぁいいか。俺は生きて帰って彼女を、
言ったぞ。と言う目でレイカを見る繋希。
「そう。その愛慈って子は繋希君の大切な人か何か?」
「もちろん。愛慈は小学生の頃に事故に遭って、それからどこかの病院に運ばれたって聞いたんだけど、結局は分からず終いでそれから会っていないんだ。彼氏でもない俺が愛慈の知らないところでこんな話をしてたら、愛慈は気持ち悪いって思うだろうな」
「どうだかね。でも、その子がこっちで執行された記録は無いわ。きっと今もどこかの病院か、もしくはどこかで生きているんでしょうね」
それを聞いて繋希は安心する。
「それなら良かった。なら一層生きて帰らなきゃだな。ということで、レイカの願いってのは何だ?」
「そんな話したかしら?」
上手く話をうやむやに出来たと思っていたのだろう。
レイカは目線を逸らして困り顔になった。
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