Day.1-5 死神は全うする

「レイカ」

「謝らないわよ。私はただ死神の役目を全うしただけ。何一つ間違った事なんてしてないわ。でも……」


 レイカは繋希けいきの顔を見ずに、前髪で目元を隠すようにしてうつむいていた。


「今は凄く後悔しているわ。今まで何人も送ってきたのに、こんな気持ち…なんでだろう。涙が止まらないの…… それでも……」

「これが私の役目。そうだろ?」

「そう。私には死神の役目をやり遂げなきゃいけない理由がある。情を捨て、ただ役目の結果のみで彼らを裁かなければいけない。そんな私が泣いていていいわけがない。いいわけが…ない……」


 レイカはそのまま地面に膝を付いて泣き崩れてしまった。

 死神の役目の理不尽さに嘆くレイカを繋希はただ見ていることしか出来なかった。


 ここでさっきの事を正当化してあげれば少しは気持ちが癒えるかもしれない。

 でも今の繋希にそんな事は出来なかった。


 最初にレイカは、自分の役目は1000人の魂を裁くことだと言った。

 今が何人目なのかは分からないけれど、もしかしたら何回もこんな気持ちになっては死神だからと必死に感情を殺してきたのかもしれない。

 自分と大して年齢の変わらない少女が自らを殺し続けてきたのかもしれない。

 もし自分が死神ならそんな事が出来るだろうか?

 そして耐えられるだろうか? 

 

 繋希は様々な感情を抱きつつもレイカの隣に座った。

 この空虚で荒んだ世界にレイカのすすり泣く声が吸い込まれては消えていく。


 繋希は何かを言うでもなく、隣の少女が泣き終わるまでずっと隣にいた。

 すると、遠くで低くもよく響く鐘の音が鳴った。


 繋希の魂の残量が残り6日となった音だった。

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