Day.1

Day.1-1 目覚めた場所

「―…ッ!」


 少年は目を覚ました。

 そこには倒壊した建物らしきものが並び、所々には岩肌が露出している荒れた大地だった。

 また、鉄骨らしき棒が地面に刺さっていたり浅黒い植物が元建築物らしきものに自生していた。

 頭上には青空ではなく分厚い雲が広がっていて、太陽なんてどこを探しても見当たらない。

 それでも周りを見通せるくらいには薄明るかった。


 俺は一体……

 それに、ここは……?


 少年は自分に何があったのかを思い出そうとすると、強烈な頭痛と共に記憶が蘇った。


「そうだ。トラックとぶつかって、それで……」

「死んだ」


 その声に振り返ると、背後にはフードが付いた漆黒のマントに身を包み髑髏の仮面で顔を覆った何かがいた。


「なんだって?」

「あなたは死に、いや、生死の境を彷徨う亡者となりこの狭間の世界に送られた」


 にわかに信じがたい。

 ましてやこんなに怪しい人からの言葉であればなおさらだ。

 きっと何かの夢だろう。


「オカルトか? よく出来た夢だけど、生憎俺はそんなのは信じないんだ」


 少年は疑惑の目でその存在を見ていると、一発の銃声が聴覚を支配した。

 直後、少年の視界が下がり膝から地面に崩れた。


「―ッ!」


 脚に鋭い痛みを感じてそこに触れると、太腿に小さな穴が空いていた。

 硝煙の臭い。その先を見ると、仮面の何かが拳銃を向けていたのだ。


「3…2…1…… はい、治った」


 直後そこは何もなかったかのように元通りになった。

 そして少年は恐る恐る立ち上がると、そこからは痛みや違和感すらもなかった。


「どういうことだ?」

「今のあなたは霊魂。現実では生死の境にいる状態。ここではさっきみたいに痛みは感じるけど死ぬ事は無い」

「面白くないジョークだ。冗談はその仮面だけにしてくれ」


 少年はいきなり撃たれた事と、未だに顔を出さないその存在に苛立ちを見せる。


「それもそうか。君は今高校生のようだね。ならこっちの姿がいいだろう」


 その存在は仮面とマントをどこかに消し去ってやっと姿を見せた。


「女……?」


 目の前に現れたのは少年と同じくらいの歳の少女だった。

 彼女は高校の制服を身にまとい、黒く艶のある長い髪を靡かせていた。


「これでジョークを言ってもいいかな? 西園にしぞの繋希けいき君。いいえ、繋希君」

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