詩 「刻よりも深く」

@aono-haiji

第1話  詩  「刻よりも深く」


そのページをって わたしが見えたら

前のページに戻って そこに残された

人の影を見てあげて


そこに手をつき 膝もつきながら

その人がその人であった記憶が

深い傷を残しても 途切れ途切れに

子に伝えられていたこと


なんのためらいもなく

わたしはわたしであったと言えた

その言葉が残されているはず


人は立ちあがり

空を見上げる生きもの

日の光に手をかざし

髪を風になびかせ


水と砂と血と

生き物である生臭い重さを抱えながら

この世界のまん中に立っていたよ


見てあげて

その人が大地に 広く広く残した

血の跡を


ためらっても おびえても

その血は 一度もひるまなかったよ


ははよ

あなたは わたしの ほこりだ


ページを繰っていけば

つぎつぎと 母があらわれる

この世界の恫喝どうかつ

一歩も退しりぞかなかった 母たち


あなたたちは


ときよりも深く

このまやかしの世界に

いのちの花を咲かせた


咲かせて 咲かせて

花で 埋めつくした


このときのなかに

いのちが生まれるのじゃない


いのちの花があるから

このときは輝き

そこにあるのだから

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