第11話 本当は私も学生のような青春の恋を送りたかった。

「初恋の胸キュンエピソードを教えてください」

いつも見ている女性インフルエンサーが今日も一つ動画をアップロードした。

初恋・・・私の初恋は・・・

「小学生の頃・・」「高校の同じクラスの・・」

動画から流れる甘酸っぱい物語に珍しく気分が悪くなった、私は動画を閉じベットの上に横になる。

酒を飲んですぐに横になるとこのまま寝落ちてしまうだろう。

でも今日はもうそれでいい気がする、今日はメイクをしたままで。

この姿で朝を迎えたい。

私の初恋は今日あった『一樹』なのか?初恋がアプリ・・・・・・・・

人生の記念すべき恋愛感情第一弾がアプリ・・・・

そう考えたら一気に心が冷めてきた・・・そして自分の初恋がこんな形なのかと嫌気がさしてきた。

本当は私も学生のような青春の恋を送りたかった。


「ひかるさん暇な日あります?」

「え?どうしたの急に?」

バイトの帰り今日も信二君とシフトが被り二人で駅まで帰っていた。

「いや〜見たい映画があるんですけど、どうも男一人で見に行くのは重いかなって・・・」

「え?なんて映画?」

信二君が見たい映画はつい先日後悔された、恋愛映画『愛の独白』

映画は詳しくないが監督も有名な人でキャスティングも豪華だった。

ただ男でこれを進んで見たいという人は確かに少ない気がする。

あらすじや予告を見る限り「恋愛での選択や考え」を女性視点からじっくり描いた作品であり信二君の口からこの映画が飛び交うのは珍しい。

「俺。前にも話したんですけど映画結構好きなんですよ!ただ流石にこれは男一人だと後味悪そうだし、男の友達を誘うのもなんか違うなって・・・その時にひかるさんならって思って」

「なるほどね・・・映画ね」

今までアプリの人を除きリアルで異性からの誘いを受けた事は無かった、

デートに誘ってくるという事は相手は少なからず私に好意があるという事。

それを理解した上で行くのは少し面倒だった。

それに私を誘ってきた人はみんなどこか自分のタイプに当てはまらなった。

だが信二君の誘いはなぜか断ろうという気持ちにならなかった、信二君の誘いには好意的な理由はない、ただ自分の映画を見たいという願いに私が選ばれただけ、それにお互い恋愛を理解していない身でありここから『恋』が生まれるとは考えにくい。

「いいよ!行こうよ!」

「本当ですか!やった!」

喜んでいる信二君はどこか可愛かった、私は一人っ子で上も下もいない

でも年の近い弟がいたらこんな気分なんだろう。

「じゃあ、空いてる日教えてください!」

「えっとね・・・」

カレンダーのアプリを開いてスケジュールを確認する。

うっすら『とは』と『一樹』の次に会う予定が目に入る。


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