第9話 あんなに幸せそうだったのに壊れるのは一瞬
「もう、私ダメ、無理死ぬ」
同じゼミの友達が死んだ様な顔をして大学に登校してきた。
私と気好、その周りの友達は心配そうに彼女の元に駆け寄り事情を聞いた。
「彼氏に浮気された・・・」
衝撃の言葉に私たちは沈黙する。
彼女には一年前から付き合っている彼氏がいた、とても良い関係でインスタグラムにも彼を映した投稿が良く載っていた。
性格もめちゃくちゃ良く喧嘩もほとんどした事が無いらしい。
なのに・・・そんな彼が浮気・・・
発覚は昨日、彼の携帯の通知をうっかり見てしまい、見ず知らずの女からの愛らしい文章が飛び交っているのを見てしまったらしい。
それから問い詰めて浮気を正式に認めたらしい。
その晩、一睡もできなったらしく、目はパンパンに腫れていて、顔はゾンビの様にやつれていた。
「最低・・・」
彼女を励ます会が開かれた、集団では静かな気好も珍しく、前に出て彼女を慰めていた。
ちゃんと恋愛をしている気好は『浮気』なんて到底許さないだろう。
私も気好に続き彼女を励ます言葉を何度も掛けた。
『浮気』なんて許されるはずが、そんな事は理解してるし、浮気したやつを許したくは無い、でも・・・・でも・・どうしてそんな脱げ柄みたいな顔をするの?人生が終わったかの様に振る舞うの?
彼女は『恋愛最優先』の人だった、彼氏とは毎日の様に長電話をしていて、会う頻度も高い。
まるで宗教に取り憑かれた教祖のような・・・
私には理解できない、『恋愛』なんてしなくても生きてける、その時間を自分の為に使える。
私はそうやって今日まで生きてきていた・・・その結果恋愛を知らずにここに至る、その事に後悔はしている。
でも『恋愛』を放棄してまで積み上げた自分自身の姿には満足している。
どうして家族でも無い誰かにそこまで時間を自分を貢げるの?
ひたすら泣く彼女を慰めながらそんなことばかり私は考えてしまった。
「やっぱり私恋愛向いてないよ」
帰り道、私は気好にそう告げる。
「まあ、ひかるはそうだね・・・」
「あんなに幸せそうだったのに壊れるのは一瞬・・・しかも相手はほんの出来心で・・『恋愛』する意味あんの?」
誰にイライラしてる訳でも無い、だけど何故か口調が崩れてしまう。
「ひかる・・・」
「なんでみんなそんな『恋愛』に一生懸命なの?本当に・・・なんで」
気づいたら涙が出ていた。私に悲しい出来事があった訳でも無いのに。
「ひかるもきっとわかるよ・・・きっと」
私は夕方の空を見上げながら涙を拭う。
先日の『とわ』とのデートもそして二日後には『一樹』とのデートが待っている。
チャンスかもしれない、気合を入れなきゃ行けない時なのに、何故か気持ちはついてこなかった。
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