第5話 時に武器になります
「あなたは五月の終わりに大きな人生の転機を迎えますね」
代々木に出来たよく当たると言われている『タロット占い』をバイトの前に受けにきた。
たかが占いに三千円・・・・痛い出費だがやはり私の恋愛に対するアドバンテージは一向に上がらないままだった。
こうでもして助言が無いと私は彼氏が出来ないままだ。
「転機ってどんな?」
「そうですね・・・あなたを未知の世界に誘う人が現れます」
「それって!恋人とかだったりしますか??」
「あら、あなた今そんなにお綺麗なのに。お相手がいらっしゃらないんですか?」
古臭い格好をした占い師のおばさんの言葉がチクチク胸を刺す。
「いらっしゃらない?」こちとら生まれてからずっと恋人がいないんだよ・・うざけんな・・・
「そうですね・・・今は・・・顔で選んでくる人は毎回変は人ばかりで・・」
「恋というのはいつも自分の心の中が素直に現れますからね」
「すいません、急にガチの恋愛相談になってしまいまして・・・」
「いえいえい、ただ今までの話を聞いてきてあなたはやはり傲慢な部分が
かなり強いですね〜」
占い師は頼んでいない私の手を取り「サービス」と言って手相占いを初めた。
「ほら、あなたの人差し指はかなり長い!人差し指の根元には『野心や支配、権力』の意味があります。これが長いという事はあなたはやはり傲慢なタイプなんでしょう・・・特に恋愛に関しては」
傲慢なタイプ・・・生まれて初めて言われた、言葉だけ聞くとあまり褒められた意味ではない。
「でもその傲慢な部分は時に武器になりますよ。あなたの周りに人が自然と集まり、気づいたあなたがリーダー的な存在になってしまう。そんな経験はありませんか?傲慢な部分は選択の場面では少し厄介ですが生きていく中ではとても大切な気持ちだと私は考えています」
気づいたらリーダー・・・これは今の私の大学やバイト先でも言える事だ、私は傲慢でそれゆえに人を惹きつける強さがある・・・
手相を見ただけで、私の立ち位置を掘り当てた・・・・
「びっくりです、めちゃくちゃ当てはまる事が多くて・・・・」
「やはりそうでしたか・・・あなたが恋愛でも、何でもいい、何か選択で迷う時があるなら一度無欲に欲しい物だけを一番に考えてはいかがでしょう?そうすればきっと間違えた選択をせず正しく生きていけると思います」
舐めてかかった占い師の予言とアドバイスは完全に私の心を支配した。
どうせ当たらない、見抜かれないだろうと思っていたのに。
無欲に欲しいものだけを見つめる・・・・すごく難しい日本語だ。
私はため息を何回もこぼしながそのままバイト先に向かった。
そんな時マッチングアプリから再び通知が来る、『いいね』が来た相手を一応確認する。
『いつき』という名前で。年齢は二個上の二十三歳。社会人。そしてイケメンだ・・・
私は先日マッチした『とわ』という人と『いつき』のプロフィールを見ながら何回も見比べる。
どっちも良い!これは選べない・・・
私は『いつき』に『いいね』を返してマッチングを完了させる。
今回は二人相手に頑張ろう。
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