第2話

「歌舞伎町の宝石商殺し、やったのは

オマエだな」

科過が左門をジロリと睨んだ。

「違う」

「じゃあ、誰だ」

「天女様だ」

科過がまた左門の胸倉を掴んだ。

「言ったはずだ、オレはこの手の話が

虫唾が走るほど嫌いだと」

「だったら、どうする」

「今度言ったら殺す」

「へっ、へへへ」

左門が科過の手を思いきり振りほどいた。

「できもしないことを抜かすんじゃねえよ。

イヌコロ風情が」

左門がこばかにしたような態度を取った。

「もう一度聞く。歌舞伎町の宝石商殺し

やったのはオマエだな」

「クワガタムシ三太郎」

科過が鉄拳を左門の右頬に食らわせた。

派手に椅子から転がり落ちる左門。

「いてえな」

左門が頬を押さえながら科過を睨みつけた。

「動機は」

「テメエの悪い頭でよく考えてみな」

「三千年考えたがよくわからん。教えてくれ」

「おもしろいな。あと二三年考えてみな。わかるかもしれないから」

「なあ、オマエとあの宝石商に接点はなかった。

怨恨じゃないはずだ。そこがわからん」

「蚊が飛んでたんですよ」

「蚊」

科過が不思議そうに小首を傾げた。

「そう、蚊がブンブンうるさくてねえ」

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