第25話 アレクシアの主張
アレクシアさんと部屋に戻ったのはいいけど、なにやら困った表情を浮かべている。もしかして、僕相手だと上手く話せない?
「アレクシアさん」
「あの……、少し真面目な話をしてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ」
お互い向き合って真剣な眼差しを向ける。
これから何を話すか分からない。けど、これだけは言える。今後のことについてだ。
「実は、立花家に来たのは理由があるんです」
「理由とは?」
「まず、海斗さんに興味があって来たことは以前話しました。でも、それだけではないんです」
それだけじゃない。なら、一体何なんだ。
「他の理由があるなら教えて」
「はい。もうひとつの理由は、隼人さんの貿易会社との関係を強くするべく、海斗さんの恋人になれと父から言われているからなんです」
なんて典型的なパターンだ。でも、何で僕に好意を寄せているか理由が分かった。
「つまり、僕と付き合えばお父様からお褒めの言葉をいただけると」
「はい……。でも、そんな形で恋人になりたくないんです」
なるほど。父からの命令ではなく、自分の意思で恋人になりたいということか。そうか、だから必死なんだ。
「アレクシアさんは自分の意思で僕に色々アピールしているんだね」
「はい!」
「でも、以前も言った通り、医大の入学試験の準備で忙しいんだ。入学試験に合格して落ち着くまでは恋人は作れないよ」
「それは分かっています」
分かっているなら何で焦っているんだ?
まさか、滞在期間が原因か?
「アレクシアさん、ちょっと聞いてもいい?」
「はい、何でしょう?」
「これは憶測なんだけど、滞在期間が二年間しかないから焦っているの?」
アレクシアさんが困惑した表情を浮かべた。当たりか?
「確かに二年という期間のせいで焦っています。あと、音羽の存在が私をさらに焦らせているのです」
「音羽が元許嫁だから?」
「はい」
音羽と離れていたのは中学時代のみ。アレクシアさんの方が不利だとは思えないんだけどな。
「元許嫁だからと言って特別扱いはしていないよ」
「そうなのですか?」
「うん。付き合いが長いから当たり前のように接しているというのはあるけど、音羽もそれは承知の上だからあまり甘えて来ないでしょ。だから、アレクシアさんが不利ってことはないんじゃないかな」
「それもそうですね……」
これで納得してくれたらいいんだけどな。
「では、同じスタートラインにいると考えてもいいですか」
「そう考えてもいいと思うよ」
アレクシアさんが小さくガッツポーズを取った。
仕草がいちいち可愛い。何なんだ、この可愛い美少女は。
「因みに、アレクシアさんはどうありたいの?」
「海斗さんの側にずっといる存在になりたいです」
「それって結婚も考えているってこと?」
「はい! その通りです!」
結婚のことまで考えている。少し早いような気がするな。
「結婚のことは置いといて、これからどう接すればいいのかな」
「これからですか? それはもちろん遠慮しないことです」
遠慮しないで正直に思いをぶつけていいってことかな。
「それじゃあ、遠慮はやめる」
「ありがとう御座います」
アレクシアさんはどうやって接するんだろう。ちょっと聞いてみるか。
「アレクシアさんは僕にどう接するの?」
「私ですか? 私は海斗さんのハートを鷲掴みにして最高のパートナーになれるよう頑張ります」
「そうなんだ。あはは…………」
この子の主張は正直だな。輝いて見える。
「海斗さん、これからもよろしくお願いしますね」
「うん、これからもよろしく」
ん? 自分の部屋に戻るのかな。
「では、自分の部屋に戻りますね」
「うん、またね」
アレクシアさんが部屋から出ていった。これからどうしよう。
「ちょっとリビングに行ってみるか」
お風呂の順番が回ってくるのが何時頃か分からないし、聞きに行こう。
「う~ん……、ちょっと眠くなってきたな」
階段を下りてリビングに入った。お父さんの姿が見えない。
「どうしたの? 海斗」
「お母さん、お父さんは?」
「今、お風呂に入っているよ」
ということは、あと三十分後くらいか。
「海斗、アレクシアさんと仲良くしている?」
「うん、しているよ」
「そう……、良かった」
何でそんなに嬉しそうなんだ。僕とアレクシアさんの仲が気になるのか。まさか、結婚とか交際について話したのはお母さんか?
もしそうなら、少し言っておいた方がいいな。
「お母さん、アレクシアさんをあまり焦らせないで」
「あら? 分かっていたの?」
「……それぐらい分かるよ」
「アレクシアさん、凄く良い子だから海斗を勧めておいたの。駄目だった?」
「駄目じゃないけど、焦らせないで」
「分かったって。海斗は本当に真面目ね」
廊下から足音が聞こえる。お父さんかな。
「何の話をしているんだ?」
「お父さん、お風呂入るよ」
「あっ、うん、どうぞ」
まったく、お母さんはいつもこうだ。音羽の二の舞にしないでほしいよ。
「ふぅ……、さっさと入って出よう」
服を素早く脱ぎ、お風呂場に入ってシャワーを浴びた。
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