第22話 アレクシア・クリフォードはくじけない~アレクシアside~
高梨音羽こと音羽にライバル宣言された。しかも、私のことを警戒している。お弁当を作ったからだと思うけど、仲良くしたいという気持ちが申し訳なさを感じさせる。あ~、どうすればいいの!?
「お弁当を作らなければ良かったのかな」
授業中にボソッと呟いてしまった。これでは悪いことばかり考えてしまう。今は授業に集中しなきゃ。
「――――であるから、ここでこの公式を使って計算します」
私がそもそも日本に来たのは、立花海斗さんに会うためと日本文化を学ぶこと。予定通りなら今頃海斗さんと日本文化を満喫しているはずなのに、音羽という女の子が現れてから予定通りにできない。でも、邪魔しているわけじゃないから文句の言いようがない。
あ~、どうすればいいの!
「アレクシアさん、この問題を」
「え? あっ、はい!」
しまった。考え事をし過ぎて聞いていなかった。どうしよう。
「どうした? 聞いていなかった?」
「……すみません」
「では、黒板に書いてあるこの問題を解いてみなさい」
「はい」
席を離れて教壇に上がり、問題を解く。
これはこうだ。
「何だ、できるじゃないか。何か悩み事か?」
「え? はい……」
「そうか。誰かに悩みを打ち明けてみるのも良いぞ。その方が悩みが早くなくなる」
「はい、考えてみます」
取り敢えず席に戻って授業に集中しよう。悩むのはあとからでいいよね。
「アレクシアさん、どうしたんだろう」
「もしかして、立花がいないから悩み事を?」
「馬鹿。何を言っているの」
その通りですと言いたいけど、恥ずかしくて言えない。皆、あまり察しないで。
「では、次の問題を――――。高梨、解いてみなさい」
「はい」
音羽が教壇に上がった。問題は完璧に解かれ、皆の注目を浴びている。
海斗も素敵だけど、音羽も素敵。クールで勉強もスポーツも完璧にできる。まさに、高嶺の花。だけど、音羽は海斗のことが好き。海斗はどう思っているんだろう。もしかして、私って邪魔者?
キーンコーンカーンコーン。
「お? チャイムが鳴ったな。今日の授業はこれまで」
今日の授業はこれで終わりだ。でも、郁さんからお昼ごはんを食べてくるように言われているから食堂に行かないと。
「アレクシア、食堂に行く?」
「はい!」
席を離れて音羽と食堂に向かって歩き始めた。
海斗がいないと物静かだ。必要なこと以外話さないようにしているのかな。やっぱり、クール。
「アレクシア、どうしたの?」
「え? あっ、何でもないです」
「そう? ならいいけど」
私、すぐ顔に出るから考え事をしていることが知られちゃう。この癖、どうにかならないかな。
「アレクシア、ゴールデンウィークのことなんだけど」
「はい、何でしょう?」
「来週の三連休の初日から行くことになっているでしょう。恐らく、部屋割りは男女別々だと思うの」
「はい」
「つまり、海斗と夜遊びできないってことなんだ。問題だよね」
それは、何かあったら問題になるからじゃ……。
「友達と言えども何かあってからでは問題だからでは……」
「私は何かあってもいいの。何故かは分かるよね?」
分かる。凄く分かる。音羽は海斗の元許嫁。何かあった方が復縁できる。
「分かりますが、それでは旅行が台無しになるのでは」
「……そうね。それは考えて無かったわ」
凄いことを言うな。私ではそんな考え浮かばない。やはり、元許嫁というポジションがそうさせているのかな。大胆だな。
「アレクシア。話を変えるけど、今日は何を食べる?」
話していたら食堂に。何を食べよう。
「今日はカレーライスにします」
「私も同じものにしようかな。カレーライスなら手っ取り早いし」
券売機の前に並んでカレーライスの食券を購入した。
音羽って食べる時間も気にするタイプなのかな。確かにカレーライスなら早く食べられる。
あっ、効率を考えているんだ。凄いな。
「はい、カレーライス」
「ありがとう御座います」
音羽と空いている席に着いて食事をする。
――――って、早い! もう食べている!
「ん? 何? 頂きますならしたよ」
「いや、食べるの早いなと思って」
「あー、効率を考えているからね。早く食べた方が自由時間が長くなるし」
「そうですね。私も食べなきゃ」
「あっ、焦らないでいいよ。喉に詰まると危ないから」
音羽の真似をすると喉が詰まりそう。少し急ぐくらいでいいかな。
「頂きます」
思ったより早く食べられている。でも、途中で水を飲まないと苦しい。
「お水が美味しく感じる」
「カレーライスを食べるとお水が美味しく感じるよね。分かる分かる」
音羽は優しい。けど、その優しさに甘えたら駄目だ。
だって、音羽はライバルなのだから。
「音羽、海斗と帰りに会えるよう居残り勉強しませんか」
「うん、いいよ。私もそのつもりだったから」
音羽はやっぱり良い人だ。この人とならずっと友達でいられそう。
「それでは、教室に戻りましょう」
「そうね。戻りましょうか」
食器を返却口に置いて、私は音羽と教室に戻った。
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