第8話 ふたりきりの休日 後編
昼食を摂ったあとは、お決まりのお昼寝。だが、ただのお昼寝ではなかった。
「海斗さん、どうですか?」
「はっ、恥ずかしいです」
何故に膝枕をされているんだ。恋人でもないのにこんな行動に出る理由が分からない。しかも、視線の先にはふくよかな胸が!
「ふふっ、可愛い。顔が真っ赤ですよ」
「あの、直視しないでくれる?」
「え~、良いじゃないですか。それに言いましたよね。私と仲良くなれるよう善処すると」
「うっ、それは……」
愛おしい目で何で見る。友達になりたいというのは建前で、本当は恋人になろうと考えているじゃないだろうな。そんなことになったら、勉強どころじゃなくなる。でも、こういうのも悪くないと思っている自分がいる。
音羽に見られたら大変なことになりそうだ。
「高梨さんにはこういうことはされたことがないんですか?」
「あるわけないじゃん。何言っているの!」
「何って、高梨さんといつも親し気にしているから悔しいんです」
「くっ、悔しい?」
「はい、悔しいです。だって、貴方は私の初恋の人なのですから」
え? 初恋の人?
「でも、まだ会って日が浅いよ。好かれるようなこともあまりしていないし」
「していますよ。ただ気付いていないだけです」
意味が分からない。何がどうなっているんだ。
「そうなんだ」
いかん。沈黙が始まってしまう。何か言葉を掛けないと。
「アレクシアさん、好きなタイプの男性ってどんな人」
「海斗さんのような人です」
「そっ、そうなんだ。嬉しいな」
言葉が続かない。もういっそのこと沈黙するか。
「……」
「海斗さん、おやすみになられたらいかがですか」
「うん、そうする」
アレクシアさんの膝が心地良い……。
「おやすみなさい」
僕はアレクシアさんに膝枕されながら、ゆっくりと眠りに就いた。
*
目が覚めた時には、両親が帰宅していた。これは恥ずかしい。
「海斗、気持ち良かった?」
「お母さん、からかわないでよ」
「ふふっ、ごめんなさい。あまりにも気持ちよさそうに寝ていたから」
アレクシアさんも笑っている。なんて可愛らしい笑顔なんだ。心が奪われてしまう。
「アレクシアさん、ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
照れながら身を起こし、アレクシアさんの隣に座った。
アレクシアさんも人が悪い。両親が帰ってきているのが分かっているのなら起こしてくれても良かったのに。もしかして、両親にアピールするためにわざと起こさなかった?
「アレクシアさん。夕ごはんの準備、手伝ってもらってもいい?」
「はい、喜んで」
お母さんのもとにアレクシアさんが行ってしまった。お父さんは食材の片付けをしている。
ん? こっちに来る。
「海斗。アレクシアさんに甘えるのは結構だが、変なことはするなよ」
「分かっているよ。それより、僕も手伝おうか?」
「いや、大丈夫だ。お前は部屋で休んでいろ」
「うん、分かった」
取り敢えず、部屋に戻って勉強するか。通信教育の模試が近いしな。
「アレクシアさん、部屋に戻るね」
「あっ、はい、分かりました」
勉強道具を持ち、自室に戻った。
やれやれ、やっと部屋に戻れた。アレクシアさんと過ごした時間は楽しかったけど、勉強が疎かになるのは嫌だな。でも、だからと言って距離をとるのはいけない。どうにか上手く付き合っていきたいと思うけど、どうすればいいのか見当が付かない。勉強が終わったら、じっくり考えるか。
「さて、勉強するか」
学習机に向かい、勉強を再開する。
五教科満点目指して頑張るのみだ。
「えっと、ここは……」
やろうとした矢先にメールが来ているのに気づいてしまった。
相手は……、音羽だ。
「何々」
メールには、
『こんにちは。今夜なんだけど、電話できない?』
と書かれている。電話? 何かこみ入った話かな?
『良いよ。何時頃が良い?』
返信したら、ものの数秒で返ってきた。
『夜の九時頃でお願い』
『うん、分かった』
夜の九時までにお風呂を済ませて部屋に戻らないといけない。いつも通りにすれば問題はないか。それより、電話で話すの久しぶりだな。どんな会話になるか分からないけど、楽しみだ。
「よし、勉強の続きをしよう」
黙々と勉強に取り組み、時間を費やした。
*
夕ごはんとお風呂を済ませ、自室に戻って約束の時間を待つ。
音羽は今頃何をしているんだろう。お風呂に入って寛いでいるのかな。
僕と電話したいなんて、余程話したいことがあるとみた。もしかして、アレクシアさんとどうしているのか気になっていたりして。もしそうだったら、何もないよと言おう。
「もうそろそろいいかな」
スマートフォンを持ち、電話帳を開いて音羽に電話をかけた。
『はい』
「音羽、こんばんは。今大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。ちょっと話したいことがあってメールしたんだけど、長電話になっても大丈夫?』
「少しなら大丈夫。どうぞ」
『実は、アレクシアさんのことなんだけど……』
アレクシアさんのこと? 何かあったのかな?
「何かあったの?」
『うん、少しね。海斗と付き合ったことがあるのか聞かれたから、もしかしてと思って電話をかけてもらったの。今日何かあった? 正直に話して』
正直にか。膝枕してもらっただけなんだけどな。
「膝枕してもらった」
『は? 何してもらっているの?』
あれ? 怒っている。どうして……。
「ごめん。怒っている?」
『当然でしょ。恋人でもないのに何をしているの?』
「いや、成り行きで……」
『まったく……。私が見ていないところでそんなことをするなんて、海斗は本当に優柔不断だね』
「ん? 優柔不断って?」
『え? あっ、いや! 今のは間違い!』
「……まあいいけど、心配し過ぎだよ。僕はそんなことで音羽を放ったりしないよ」
『……うん』
落ち着いたみたいだな。今までの流れで電話したいと言ってきた理由が見えてきた。だが、僕は敢えて突っ込まない。何故なら話をしてしまえば、好きだと言われそうだから。
それに僕はふたりから親友でいたいと聞いている。恋愛になるなら、じっくり話し合う必要がある。今はそのときじゃない。
「音羽。僕達は親友なんだから隠し事なんてしないよ」
『……そうだね』
「今日はたまたま両親が外出したんだ。その成り行きで、アレクシアさんとふたりで過ごすことになったんだけど、彼女も何かあるみたいでそういう行動に出たんだと思う。あっ、僕から膝枕してほしいとは言っていないからね」
『分かっているよ。もう……、海斗は本当に真面目なんだから』
「それじゃあ、もうそろそろ電話切ってもいい? 勉強したいんだ」
『うん、もういいよ。勉強頑張ってね』
「うん、頑張るよ。それじゃあ、また明日ね」
スマートフォンを耳元から離して通話を切った。
ふぅ……、女の勘って本当に怖いな。
「寝る前に軽く勉強して、それから遊ぶか」
再度机に向かい、軽く勉強をして就寝前の自由時間を楽しんだ。
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