第2話

竜も吸血鬼も、いまや複数で数えられることはない。


最強の竜と、最強の吸血鬼が1人ずつ。



千代と呼ばれた竜は、名字が必要と知り、立野と名乗った。


なぜなら、辰のなかで唯一、千代の永遠を生きる者であるため。


その名で人の姿となり、地球に来た。



すると別の者がすでにいた。


吸血鬼の初めの者にして、とうとう誰1人超えられなかった絶対的な存在。


気が合いそうだったので、近くにいることにした。




「……遅いなあ」

「まったく」

「地球に着くのは1年後くらいか」

「おそらく」


竜と吸血鬼になりすまして、ご丁寧にも地球まであと1年以上の距離ですでに擬態を行うという、無駄に力を使い散らかしながらやってくる有象無象どもを、地上から眺めて呆れまくる我々2人。


「私が行きますよ。貴方は知らんぷりでどうぞ」

「そうか」


特筆すべきこともないただのゴミ掃除は、後輩がさっさと終わらせます。



1年ぶりに竜の翼を広げた。


人間には見えない翼で、人間の姿のまま宙返り、「場所」という概念を飛び越える。


行きたいと思った時にはすでにそこにいる。


それができるのが私だった。



1年後の時空で、あと1年の征服の旅路を遮断されて、理解も追いつかずに消えていく竜と吸血鬼のもどきたち。


前に進むためのはずのエネルギーが、自身に向かうあらゆるベクトルとして使われて、自分で自分を押し潰す。


他者の力を勝手に自己の力として支配する竜のせいで、自滅しか道はない下位の襲撃者の群れは、あっという間になくなった。


「おお」


あっではなく、絶対的吸血鬼のおおという間に、ではあったが。


「あいつもなかなか強いじゃないか。さすが最強のドラゴン様だ」


最強と誉めながら、なかなかと評価する吸血鬼はさて、いかほどか。

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