◆白いお婆さん

 部屋に戻ると、ひかりが迷子の子犬みたいな目で見上げてきた。


「ヤミちゃん! 遅かったけん心配したよ……大丈夫やったとだったの?」

「え、ええ。なんでもないわ。待たせてごめんなさいね」


 実を言うと、まだ心臓がドキドキしていた。でも、これくらいで配信を止める気はさらさらない。


 学校では誰とも会話できないわたしでも、配信ならたくさんのコメントや「いいね」がもらえる。

 わたしにとっては、この怪談配信が週に一度の生きがいなのだ。

「さて、話を続けましょう。怪談が霊を呼び寄せてしまうことは、先ほどわたしが身をもって証明したわけですが……怪談と霊にまつわる話には、他にもこんなものがあります。二話続けてお聞きください」


 * * *


 小学生の「キララ」さんが、去年、体験したできごとです。


 ある夜、キララさんはベッドに横たわり、自分のスマホで、怖い話をまとめたブログを読みふけっていました。

 小一時間ほど、そうしていたでしょうか。

 何気なくスマホから顔を上げると、


 ベッドのすぐ横に知らないお婆さんが座って、キララさんを見つめていました。


 シワだらけの肌に、ものすごい厚化粧をしています。

 フランス人形みたいにカールした茶髪を長く伸ばしていて、両目は穴ぼこみたいに真っ黒。ピンクのひらひらしたワンピースから、まるで枯れ木のような手足が伸びています。


 キララさんが悲鳴をあげた瞬間、お婆さんの姿はパッと消え去り、後にはなにも残りませんでした。


 それ以来、お婆さんが姿を現すことはありませんでしたが……キララさんは、夜ひとりで怖い話を読むのをやめてしまったそうです。

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