エピローグ 時間を越えた約束
文化祭から数週間が経ち、町は再び日常の平和に包まれていた。ハルトは、自分の特別な能力と、それを使って他人を幸せにすることの意味を深く理解するようになっていた。学校での日々は、以前よりも明るく、意義深いものになっていた。
ある晴れた午後、ハルトはひとり、お気に入りの場所である小高い丘に座っていた。彼の前には、緑茶の入ったお気に入りのコップが置かれており、静かにお茶を飲みながら遠くの景色を眺めていた。時間を止めることなく、ただ静かにこの瞬間を楽しんでいる。
「ハルト、ここにいたんだね。」背後からケンジの声が聞こえ、ハルトは振り返って笑った。「うん、ちょっとね。」ケンジはハルトの隣に座り、二人はしばらくの間、言葉少なに景色を楽しんだ。
その静けさの中で、ハルトは決心した。「ケンジ、僕には君に話しておきたいことがあるんだ。実はね…」ハルトは時間を止める能力について、そしてこれまでにそれをどう使ってきたかを話し始めた。彼はこの秘密を誰かと共有することの重さを感じながらも、ケンジなら理解してくれると信じていた。
ケンジは驚きつつも、話を静かに聞いていた。そして、ハルトの話が終わると、深い理解を示すように頷いた。「それで、あの日、僕が助けられたのはお前だったのか。ありがとう、ハルト。」二人の間には、新たな信頼が生まれていた。
「でもね、ケンジ。この能力は僕たちがさらに大きなことをするためのものだと思うんだ。これからも、みんなを幸せにするために使っていこうと思う。」
ケンジは微笑んで同意した。「僕も手伝うよ。ハルトの力で、僕たちでできることを見つけよう。」
その日、二人は時間を越えた約束を交わした。これから先も、自分たちのできることで、小さな町を、そしてお互いの日々を、少しでも明るくしていこうと。
エピローグのこの部分では、ハルトが自分の能力を受け入れ、それを肯定的に生かす決心を固める様子が描かれています。彼は自分一人ではなく、友人と共に、この特別な能力を使ってより大きな善のために行動していくことを選びます。『お茶がなくなるまでに』は、不思議な力を通じて友情と成長を描いた物語として、その幕を閉じるのでした。
お茶がなくなるまでに 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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