第3話 時間の贈り物

学校の日々は続き、ハルトとケンジの友情は深まっていった。しかし、ハルトは自分の秘密、時間を止める能力について、まだ誰にも明かしていなかった。彼はこの力を使って人を助ける方法をさらに探求しようと決心していた。


ある週末、町で文化祭が開催されることになり、ハルトのクラスも出店することになった。文化祭の準備で忙しい中、ハルトはこのイベントを、自分の能力を使ってクラス全体を助ける絶好の機会と見た。


文化祭の当日、ハルトは特別な緑茶を持参した。彼は、この日が自分にとって大きな試練になることを知っていた。クラスのブースは手作りのお菓子と飲み物を販売していて、思いのほか人気で、生徒たちは忙しく動き回っていた。そんな中、隣のブースでトラブルが起きた。装飾が壊れてしまい、隣のクラスの生徒たちはパニックになっていた。


ハルトはその場で緑茶を一口飲み、時間を止めた。彼はまず、壊れた装飾を直し、隣のブースが再び来場者を迎えられるようにした。次に、自分のクラスのブースに戻り、売り物のお菓子が均等に並ぶように手直しをした。そして、ある子が落としてしまったお財布を持ち主のバッグにそっと戻した。


お茶がなくなると、時間が動き出し、すべてが一瞬にして正常に戻った。隣のブースの生徒たちは、突然装飾が直っていることに驚き、感謝の意を表した。クラスメートたちは、ブースがなぜかスムーズに運営されていることに気づき、ポジティブな雰囲気に満ち溢れた。


その日の終わり、ハルトは心から満足感を感じていた。彼は自分の能力を使って、目立たずに周囲の人々を支えることができた。そして、その能力が人との繋がりを深め、喜びを分かち合うためのものであることを実感した。


ハルトは、この秘密をこれからも大切にし、必要な時には周囲の人を助けるために使うことを決心する。彼にとって、時間を止める能力はもはや不安の種ではなく、周囲の人々に対する愛と思いやりの表現方法となった。


文化祭の夜、ハルトは星空を見上げながら思った。「お茶がなくなるまでに、僕たちはどれだけのことを成し遂げることができるんだろう。」


この物語の終わりには、ハルトが自分の内面と向き合い、周囲の人々との関係を深める過程が描かれている。時間を止める能力を持つことの意味と、それを使って他人の幸せに貢献することの喜びを知ったハルトの成長が、心温まる結末を迎える。

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