第2話 時間の中で見つけた友情

月曜日の朝、ハルトは学校への道を歩いていた。彼の心は、昨日の奇妙な体験と、時間を止める能力に対する新たな好奇心でいっぱいだった。しかし、学校での日常は、その不思議な体験とはかけ離れたものだった。


昼休み、ハルトはふとした衝動で、時間を止めることに決めた。お茶の代わりに水筒に入れて持ってきた緑茶を一口飲むと、周囲のざわめきが静まり、時は再び止まった。彼は周りを見渡し、時間が止まっているこの瞬間をどう活用するか考えた。


校庭を散歩しながら、ハルトはクラスメイトの一人、ケンジがいじめられている光景に出くわした。時間が止まっているため、いじめっ子たちもケンジも動けない。ハルトは、この瞬間を利用してケンジを助ける方法を思いついた。彼は静かにいじめっ子たちの手からケンジを離し、いじめっ子たちの間に小さなメモを残した。「いつも見てるよ」。誰が書いたかは分からないが、いじめっ子たちに警告する足り得るメッセージだった。


お茶がなくなると、時間は再び動き始めた。ケンジは自分が突然安全な場所にいることに気づき、混乱しながらも、どこかで誰かが自分を見守ってくれていると感じた。いじめっ子たちは、自分たちの行動を見直すきっかけを得た。その日の放課後、ケンジはハルトに近づき、感謝の意を表した。「なんか、君のおかげみたいだよ。ありがとう。」


ハルトは、自分が何もしていないと首を横に振ったが、ケンジの笑顔は彼に大きな満足感を与えた。その日から、ハルトとケンジは互いに話す機会が増え、徐々に友情が芽生えていった。


ハルトはこの経験から、自分の能力を利用して、良い影響を与える方法があることを学んだ。彼はまだ自分の能力の全貌を理解していなかったが、少なくとも一人の友達を救うことができた。それは、ハルトにとって、時間を止める能力が持つ新たな意味と価値を見出す瞬間だった。


第2話の終わりに、ハルトはケンジとともに帰宅の道を歩いていた。二人の間には、時間を超えた絆が芽生えていた。ハルトは心の中で思った。「お茶がなくなるまでに、僕はもっと多くのことができる。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る