第2話 「姿なき足音」 01 そしてぼくたちは訪れた。

水神みずかみの里? 

 あそこへいったいなんの用だ?」




 バスの運転手さんが驚いた顔で言った。

 ぼくはとカズキは思わず顔を見合わせる。

 

 

 

 改札の駅員さんに尋ねたときと、まったく同じ反応が返ってきたからだ。

 駅員さんも「水神」の名前を聞くとぎょっとした顔になって話を突然切り上げたのだ。

 だから仕方なしに到着したばかりの手近に停まった一台のバスに声をかけてみたのである。

 

 

 

 真夏の昼下がり。

 ぼくとカズキは水神の里に向かう途中である。

 

 

 

 下車した田舎の駅前にはうっそうと葉が生えた大きな木がそびえ立ち、蛇口全開のシャワーのようにセミの鳴き声が激しく降り注ぐ。

 山の向こうにもくもくと盛り上がった真っ白な入道雲も東京で見るのよりもずっと質感があって力強い。

 

 

 

「えと、夏期研修に行くんです」




 真っ白に暑く焼けたアスファルトからの照り返しでぼくらは汗びっしょりだった。

 

 

 

「ああ、例の学校のこどもたちか」




 運転手さんはようやくぼくたちに警戒心を解いたらしく。

 あごで車内を示した。どうやら乗れ、と言いたいらしい。

 

 

 

「涼しいね。助かった」




「クーラーなかったら俺発狂してたかも」




 ぼくたちは生き返った気持ちになりついつい軽口でいろんな話をし始めたら、いつの間にかバスは発車していた。

 乗客はぼくたちを含めて十人もいなかった。

 

 

 

「俺たちが行く場所って、いったいどんなとこなんだ? 

 ……駅員にしてもそうだけどバスの運転手も俺たちのこと思いっきり不審そうにながめていやがった」 

 

 

 

「なんか地元の人でも警戒するんだね。

 よっぽどひどい場所なのかも」




 だな? でもそうだとすると、それはそれでなんだかわくわくさせられるぜ」

 

 

 

 怖いもの無しのカズキらしい返事だった。 

 

 

 

 外の風景は集落を抜けるとやがてすべて田んぼになった。

 青々と茂った稲に風が触れて海原の波のように流れていく。

 道はうねりながら徐々に山へと向かっているのがわかる。

 

 

 

 二十分たち、三十分が過ぎ始めると乗っていたお客たちはちらほらと少なくなり一時間が経過したときは、ぼくとカズキと白いワンピースを着たおとなの女の人だけになっていた。

 車内の案内板は次のバス停が「さくら沼」だと表示されている。

 

 

 

 今朝の始発電車から乗り継いで延々何時間。

 やっとあと少しでぼくらの旅も終わる、そう思った矢先だった。

 カズキのいつものが始まったのだ。

 

 

 

「マ、マナツ。……俺やばいかも」




 悪い予感がした。

 見れば腹を押さえている。

 

 

 

 カズキは車に弱くて長い時間乗っていると必ず酔うのだ。

 それもふつうの酔いではなくてトイレが近くなる。……しかも大ときている。

 

 

 

「次がさくら沼なんだけど耐えられる?」




 訊くだけ無駄なのがわかった。

 すでに歯を食いしばって額に汗を浮かべている。

 

 

 仕方ない。

 ぼくたちは運転手さんに途中下車を頼んだ。

 

 

 


「考えたらさー。用がすむまで待ってもらえばよかったんだ」




 草むらの向こうからカズキの声がした。

 ごそごそとズボンをはく音がする。

 

 

 

「それじゃほかのお客さんが乗ってたし悪いよ」




「でもさ、ずーっと歩くのか? 

 俺たち?」

 

 

 

 見渡す限り人家が一軒もない。

 道は一本道だから迷うことはないと思うけど、万が一を考えると確かに不安だった。

 

 

 

「マナツ。

 あのさ、研修所に電話して迎えに来てもらうってのはどうだ?」




「あーそうだね。それがいい」




 ぼくはリュックからスマホを取り出した。

 ところが……、画面には圏外の表示が映し出されていた。

 

 

 

「駄目。ここ電波が届いてない」




「今時そんな場所あんのかよー。

 ……かー、やっぱり歩くのか……」

 

 

 

 カズキが情けない声をあげる。

 元はといえばカズキが悪いのだが、

 ……言っても仕方がないことだ。

 

 

 

 ぼくたちは重いリュックをしょい直し、とぼとぼと緩やかに上っている道を歩き始めた。

 途中二回ほど休憩を入れて汗びっしょりのシャツを着替えた後だった。

 

 

 

 日が傾き始めなんとなくぼくたちの間に不安が広がっていたときだ。

 一台のタクシーがぼくたちを追い越してクラクションを鳴らしやがて停まった。

 よくわからないけど地獄に仏とはまさにこのことだ。

 

 

 

「カズキ。どういうことかな?」




「俺が知るか」




 やがてドアが開きぼくたちは叫び声を上げた。

 

 

 

「彩音!」

「ほのかちゃん!」




 ドアが開いて現れたのは沙樹野彩音ちゃんと神林ほのかちゃんだったのだ。

 両手を腕組みしていつものように気高く彩音ちゃんが言った。

 

 

 

「最寄り駅から研修所の屋敷まで熱血根性で歩いて走破したからって単位はもらえないのを知ってるのかしら?」




「あ、当たり前だろ! 

 お前たちこそタクシーで体力温存したって、そのあと泣いて帰ったら来なかったと同じなんだぜ」

 

 

 

「なによ! その言い方?」




「なんだと!」




 カズキと彩音ちゃんはさっそくやり合った。

 

 

 

「マナツくん、なんで歩いてるの?」




 ほのかちゃんが尋ねる。

 

 

 

「うーん。

 実はちょっとカズキが体調を崩したんだ」




 ホントのことは言えないと思った。

 すると、えっ? と言う顔をして彩音ちゃんがカズキを見る。

 

 

 

「……大丈夫なの?」




 意外なことに彩音ちゃんがカズキに見せたのは心配顔だった。

 

 

 

「お、おう。

 なに、ちょっとトイレに寄っただけだ。心配いらねえ」

 

 

 

 心なしかカズキの返答にホッとした表情になる。

 

 

 

「ふーん。じゃあいいですけど、ひとつ質問があるわ?」




「な、なんだ?」




 彩音ちゃんがずんずんカズキに詰めよった。

 

 

 

「ちゃーんと手は洗ったんでしょうね?」




「……も、もちろんだ。

 ……俺は清潔派で通ってるんだ……」

 

 

 

 さっき草むらをトイレにしたことは黙っておこう。

 ぼくはそう思った。

 

 

 

「どうでもいいけど女の子たち、この少年たちも乗せて行くのかい?」




 後から降りてきたタクシーの運転手さんが声をかけてきた。

 

 

 

「仕方ないから積んでくださる? 

 でも間違っても私の隣は避けてちょうだい」

 

 

 

 だがそう言った彩音ちゃんの隣はなんとカズキだった。

 ぼくらはジャンケンして席順を決めたのだがぼくが助手席、そして後ろがほのかちゃん、彩音ちゃん、そしてカズキだった。

 

 

 

 彩音ちゃんは膝にカズキの手がぶつかったと言ってすごい剣幕でカズキをにらんでいる。

 

 

 

「念のためもう一度確認するけど、ちゃんと手は洗ったのよね?」




「……あ、当たり前だろ」




 カズキはあさってを向いて答えた。

 

 


 両側を高い山に挟まれた細い谷底の道を抜けると風景が一変した。

 右に左に蛇行した水量豊かな里の川が見えた。護岸されていない天然の川だ。

 

 

 

 右手に水田、左手には遠くまで湿地がつづき、その向こうにはきらきらと輝く湖面が見えた。

 あれがたぶんバス停があるさくら沼だろう。

 

 

 

 いくつか橋を渡ると防風林に囲まれた木造茅葺きの農家が見えた。

 家は一軒一軒とても離れていて、それぞれが緑の稲たちの海に浮かぶ島のように見えた。 

 

 

 

 やがてぼくたちは目的地についた。

 そこは大きな門構えがある古い屋敷でぐるりと背の高い土塀で囲まれていた。

 

 

 

 かなりの樹齢があると思える大きい松の木が邸内になん本も生えているのが見える。

 そしてその向こうに黒光りする瓦屋根が横たわっていた。 

 何百年もこの地にあったんだという堂々とした存在感が感じられる。

 

 

 

「すげえ!」




 カズキがそう叫んだまま絶句した。

 

 

 

「かなり大きいのね。

 ……まるで彩音ちゃんの家みたい」

 

 

 

 ほのかちゃんが屋敷を見上げて言う。

 

 

 

「そうね。

 でもこちらの方がずっと古い……」

 

 

 

 彩音ちゃんのその言葉は古いイコールぼろいという意味ではなく、歴史の重みの違いことを言っているようだった。

 

 

 

「……武家屋敷だね」




 ぼくはつぶやいた。

 

 

 

「なんでわかるんだ?」




 カズキが振り向く。

 

 

 

「うん。

 昔は例え大金持ちでも農家には門はないんだ。門が許されるのは武士だけなんだ……」

 

 

 

「マナツは妙なことに詳しいな」




「すごいのね、マナツくん」




 ほめられるのに慣れてないぼくは真っ赤になった。

 

 

 

「お嬢さんたち、これ持っててよ」




 運転手さんがポケットからなにやら取り出すと彩音ちゃんに手渡した。

 それは名刺のようだった。

 

 

 

「どういうことかしら?」




 ちら、と一瞥すると彩音ちゃんは尋ねる。

 

 

 

「帰りのタクシー、必要だろう? 

 なんならお嬢さんたちがすぐに帰れるように、明日の午前中待機してようか?」

 

 

 

「ご厚意はありがたいけど、帰りは一週間後だし、私たちはバスを予定しているの」




「そうかい? 

 私はこの季節になると毎年決まってここに生徒さんを送るけど、いつも翌朝に大至急で呼び出されるんだ」

 

 

 

「翌朝?」




「そう。翌朝。

 ……バスが待ちきれないんだね。みんな真っ青な顔でなにを訊いても黙ったままでね」

 

 

 

 ぼくたちは互いの顔を見た。

 そして後ろの屋敷を振り返る。

 

 

 

「ま、毎年のことだから気にすることない」




 そう言って運転手さんはハンドルを握って去って行った。

 

 

 

「……笑わせないで」




 彩音ちゃんは消えゆくタクシーの後ろ姿を見ながら手の中の名刺を握りつぶした。




「すみませーん、すみませーん」




 ぼくたちは見上げるとのけぞりそうなほど高い木の門扉をどんどんと叩くが一向に返事がないのだ。

 

 

 

「カズキくんの馬鹿力でもこの扉はさすがに無理のようね?」




 考え込むように彩音ちゃんがつぶやく。

 

 

 

「ああ、俺の力でも確かにこれは無理だ。

 だいたいこういう門って、そもそも勝手に敵に侵入されないために作ってあるんだろう?

 ……それにだ。バカはないだろう?」

 

 

 

 扉を叩いて調べていたカズキが言う。

 

 

 

「あらそう? 

 じゃあ、火事場のくそ力に訂正するわ」 

 

 

 

「あんまり変わらないじゃねえか……。

 ま、そのうち見せてやるよ」

 

 

 

「もしかして留守……なのかな?」




 ぼくはつぶやく。

 

 

 

「留守? 

 そんなはずはないだろう? 俺たちが来るって連絡は入っているはずだ」

 

 

 

 さてどうしたものかと思案し始めたときだった。

 

 

 

「ねえ、ちょっとこれ見て」




 ほのかちゃんが門の脇を指さしていた。

 

 

 

「どうしたの? ほのか」




 仁王立ちしていた彩音ちゃんが組んでいた腕をほどく。

 

 

 

「ここに『研修生通用口』って書いてあるの」




「え?」




 ぼくたちがそこに向かうとそこには小さな木の扉があり、そこに確かに札がかかっている。

 ほのかちゃんがその戸を押すと鍵は開いていた。

 

 

 

「どういうこと?」




 彩音ちゃんが眉をひそめる。

 

 

 

「ここから入れって意味だろう?」




 カズキがさらりと言う。

 

 

 

「違うのよ。

 私が言いたいのは、なぜこの私が使用人のように潜り戸から入らなきゃいけないの? って意味よ」

 

 

 

「がたがた言うなよ。

 規則なんだろ。研修生ってのはそう偉い身分じゃないからな」

 

 

 

「嫌よ」




「あーん?」




「私、嫌! 

 ぜーったいにこんな卑しい扉からは私は入らないから」

 

 

 

 彩音ちゃんは頑として動かぬ気配だ。

 

 

 

「あー、めんどくせー! 

 こーすりゃいいんだろ!」




 カズキはぼくやほのかちゃんを押しのけるようにして潜り戸に姿を消した。

 そして門の向こうでぶつぶつ言ってるのが聞こえると思ったら、門の大扉が重い地響きを上げて内側に開き始めたのだ。

 

 

 

 驚いた。

 ようやく人ひとりが通れる隙間ができるとカズキが顔を出す。

 

 

 

「さあ、どうぞお姫さま」




 カズキは皮肉たっぷりに言うと片膝をついてお辞儀する。

 

 

 

「ありがと」




 素っ気なく、しかも慇懃無礼な仕草で彩音ちゃんが門からしなりしなりと中に入る。

 

 

 

「でも……この扉ってそんなに簡単に開くものなの?」




 分厚い扉を通りながらほのかちゃんが訊く。

 

 

 

「……大人でもひとりじゃ開けられないよ。

 だってそれだと武家屋敷の意味がない」

 

 

 

 ぼくが答えるとカズキが高らかに笑う。

 

 

 

「こつさ。こつを知ってれば訳ないさ」




「やっぱり馬鹿力ね。

 将来、働き口がなかったらウチで雇ってあげるわよ」

 

 

 

「ボディガードか? それってカッコイイな」




「ま、そんなものね。

 ウチのドーベルマンよりちょっとは知恵ありそうだし」

 

 


 ぼくたちは踏み石を渡って屋敷に向かって歩いていた。

 辺りはごみひとつ落ちてなく、植木もしっかり手入れされている。

 

 

 

 向こうに見える庭には大きな岩で囲まれた池があるようで、鹿威しのカーンとした乾いた音がときおり聞こえてくる。

 

 

 

「でもこんなすごい屋敷、維持するのに大変じゃないのかな?」




 ぼくがつぶやく。

 

 

 

「そうだね。

 私たちの学校から研修生が来るだけじゃ、とても無理よね」

 

 

 

 ほのかちゃんがうなずく。

 

 

 

「あら、この屋敷は税金で維持してるし、ここで働く人たちはみな公務員よ」




 彩音ちゃんが得意気に言う。

 

 

 

「公務員?」




「そう、この屋敷だけじゃなくて、この水神の里にいる人はみんなそうなの」




「なんのためだ?」




 カズキが尋ねる。

 

 

 

「ずいぶん前に『失われ行く郷土保存』のため。

 当時の総理の肝いりで里ごと国有化したの。与党の議員である私の伯父も一枚噛んでるわ」

 

 

 

 そのときだった。

 

 

 

「おお! 鶏がいるぞ!」




 カズキが叫んだ。 

 放し飼いにされた鶏が数羽、土をほじくっている。

 

 

 

「捕まえてやる」




 カズキが猛然と走った。

 あわれな鶏の一羽が逃げ遅れカズキの手中に収まった。

 

 

 

「へへ、どんなもんだ」




 カズキは得意顔だ。

 

 

 

「ちょっと、それも国有物なのよ。

 捕獲にはちゃんとした許可が必要かもしれないわ」

 

 

 

 彩音ちゃんが指摘する。

 

 

 

「めんどくせえ世界だな。

 ……じゃ便所で水流すにも許可がいるのか?」

 

 

 

 ぶつぶついいながらカズキは鶏を放す。

 

 

 

「あら、いらないんじゃないかしら?」




「へー。てっきり俺は書類とハンコが必要かと思ったぜ」




「いらないわよ。だってこの辺りは水洗じゃなかったはずよ」




「彩音ちゃん、それって……ボットンってこと?」




 ほのかちゃんが青い顔をした。

 たぶん、くみ取り式ってやつだとぼくは思った。

 

 


「すみませーん、すみませーん」




 ぼくたちの声はこだました。

 屋敷の中はずいぶん高い天井だった。

 

 

 

「やっぱり留守なのかな?」




 ほのかちゃんがつぶやく。

 

 

 

「見ろよ。これすげーな」




 カズキが指さす玄関脇には昔の甲冑が置かれてあった。

 

 

 

「やっぱりここは武家屋敷だったんだね」




 ぼくが言うとカズキはうなずいた。

 

 

 

「すげーよな。昔の人はこんなの着て戦ったんだな。

 この刀、本物かな?」

 

 

 

 そう言ってカズキは腰の刀に手を触れた。

 

 

 

「よしなさいよ」




 彩音ちゃんがいさめたがカズキはお構いなくするりと抜いてしまった。

 

 

 

「なんだこれ? 刃がとめてある。

 これじゃいざってとき切れないな」

 

 

 

「当たり前でしょ? 今いつの時代だと思ってるの?」




 もう、っと言いながら彩音ちゃんはカズキから刀を取り上げると鞘に戻した。

 

 

 

 そのときだった。

 

 

 

「こどもがいるわね」




 彩音ちゃんが奥の間を指さした。

 目の前に虎の絵が描かれた衝立があり、その奥は開け放した障子戸の向こうにたたみの部屋がいくつも続いている。

 

 

 

「どこだ?」




 カズキが尋ねる。

 

 

 

「ほら、あの奥の左側の障子のとこよ。

 影が映ってるわ」

 

 

 

「あ、いた」




 三歳くらいの背丈のこどもが障子の向こうにいるらしくその影が映って姿がシルエットになっている。

 おかっぱ髪で着物姿だが男の子に見えた。

 

 

 

「こどもの浅知恵だな。あれで隠れたつもりなんだぜ?」




 カズキが笑った。

 

 

 

「単に照れ屋なだけかも」




 ぼくが答えた。

 

 

 

「ねえ僕? 大人の人呼んでくれる?」




 ほのかちゃんがやさしく声をかけた。

 するとその瞬間、影が消えた。

 

 

 

「あれ……?」




 ぼくたちは顔を見合わせた。

 

 

 

 ……いきなりだった。

 

 

 

 だだだっ、とこどもが走る足音が突然聞こたのだ。

 それはこっちに向かって来る。

 ……だが姿は見えない。

 

 

 

「……!」




 あっけに取られるぼくたちの間を風のようななにかがすり抜けた。

 

 

 

「なに? 今の……?」




 ほのかちゃんが消え入りそうな声で言う。

 

 

 

「……さ、さあ?」




 ぼくも答えたが口が渇いて声がかすれていた。

 それからぼくたちは荷物を持ったまま上に上がることもなく、ただただ立ちつくしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る