サンタさんのプレゼント
サンタさんからのプレゼントは、オナホールだった。
待ちに待ったクリスマスの朝。わたしは12歳の誕生日と同時にクリスマスを迎える。それは一年でもっとも楽しい日の始まり。
今年は、お父さんとけんかしちゃったから不安になったけど。
リビングに立てたクリスマスツリーの下に、赤い包みにラッピングされた箱がメタリックなリボンをまとって煌めいていた。
よかったぁー。サンタさんにあとでお礼をいわなくちゃ。
わたしはドキドキとワクワクで胸を躍らせながら、丁寧にプレゼントボックスの包みをはがしていく。
そしてその期待と高揚感は、中身のそれを見た瞬間、地に落ちた。
オナホールだった。
サンタさん……いや、お父さんからのクリスマスプレゼントはオナホール。これは明らかにわたしに対する侮辱だ。
わたしはお父さんの部屋まで駆け出していた。その勢いにまかせてふすまにタックルしそうになったけど、女の子らしく静かにふすまを開けた。
「お父さん、これ何? なんのつもり?」
わたしは腹の底に怒りを沈めて、あくまでも冷静にサンタさんに問いただした。
そのサンタさんは、机の上でパソコンを広げて、カタカタと朝早くからお仕事をしていた。
「……ん? せっかくサンタがお前のような恥を知らない子どもにプレゼントをあげたのに、その態度はなんだ」
また、お前呼ばわり。まあ、自分の名前は気に入ってないからそこまで気にしてないけど……。
でも、
「お父さんなんかサンタじゃなくてサタンだぁ!」
「ははっ! 面白いことが言えるようになったじゃないか幸太郎」
「……」
そうやって仕返しするときは、わざと名前で呼んでくる。
だから嫌なんだ、こんな親。
わたしを娘として見てくれないのはまだ許せるけど。
それでも子どもがもっとも楽しみにしてた日に。
オナホール、プレゼントすんなよ……。
なんとなくお父さんの狙いはわかっていた。
きっと、わたしにオナホールを使わせることで息子であること、男であることを認識させようとしてきたんだ。
ふざけんな。
わたしの腹の底から沸々と何かが湧きあがってくる。
それは次第に膨らみを増していき。
頭の中の奥で、氷が割れるような音が軋み。
自然と右腕を振りかぶっていて。
気づけばわたしは、お父さんの顔面にオナホールを思いっきりぶん投げていた。
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