第五十三話『覗き見トムのメガネ-the log in eyes-』
店内には、
「アイネさん、今触っているソレって私物ですか? 商品ではないのですよね?」
店主の女性は溜息混じりにメガネの
それはメガネの残骸と言うだけあって、今あるのはひしゃげたツルだのみ、溜息を吐いても
「ええ、これはね『トムのメガネ』だった物よ」
「トムのメガネ……ですか?」
従業員の青年は、聞いた言葉が上手く飲め来なかったらしく、聞いたままのオウム返しをした。
「ええ。その昔ゴディバと言う貴婦人の裸を覗き見して、その天罰で盲目になってしまった男の事よ。このメガネをかけると、その人が欲しがっているけれどその人の毒になる物が見えなくなるの。これは本来覗き見トムの様な人間を自分の欲望が毒になる人間を守るための、黒い丸メガネだったのよ」
「欲望から身を守る黒メガネですか……」
従業員の青年は店主の女性の話を聞き、その男性が黒メガネをかけて覗きをしている
「それで、なんでそのメガネが壊れているのですか? まさか壊れないと外れないメガネって訳じゃないですよね?」
従業員の青年の言葉に、店主の女性は
自分の思い通りに事は運ばなかったものの、しかし思ったほど悪い結果でもないと言いたそうな顔色だ。
「このメガネはね、本来は覗き防止が目的じゃないの。このメガネをかけると愛煙家にはタバコが見えなくなるし、お酒が好きな人にはお酒が見えなくなるの。不眠症の人にはお茶やコーラやエナジードリンクが見えなく筈だわ」
「でも、そのメガネを外せば元通りだし、メガネが顔から外れないみたいな事も無いのですよね?」
従業員の青年は、店主の女性の言葉から状況が飲めずにいた。
最後まで聞けば納得が出来るであろう事は分かるが、しかし体に悪い
「それがね、このメガネを買ったお客様は他人の事を食い物だと思っていたらしいの」
「……何ですか、それ?」
「他人を食い物だと思っていたみたいなの。これは文字通り人間を食べていたって訳じゃなく、他人を
「……」
従業員の青年は絶句した。メガネをかけた
そんな場面を自分の姿で
「このメガネは、そのお客様が亡くなった際に
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