第20話 オカルトと友人の死
体罰の恐怖がありながらも、この当時何か自分や自分の周りにいる親しくしているクラスメートとの行動の中にすっぽりと覆っている霊気のようなものがあるような気がしていた。
太平洋に面した浜に1人でも、他の友人とも歩いた自然の美しさの中にこの守りと言うものがある気がしていた。
実際その頃からオカルトにも強く意識するようになり、幽霊だとかUFO、宇宙人だとかの噂もよくするようになる。
実際姉は家でよく人影を見ると口にするようになった。ただ姉はオカルトの信奉者でも何でもないのにそれを言うから余計に怖かった。
彼女は空に舞う意味不明なものを窓から見ながら、わけのわからないものが飛んでいると口にした。それでもそれをUFOとかとは言わなかった。
俺も空を飛ぶ何であるかわからないものを数回目撃している。
それはラジコン飛行機にしては大きく、ヘリコプターや飛行機にしてはずいぶんと近くを飛んでいた。鳥よりもずっと大きかったし、鳥類の羽ばたく様とも違っていた。
UFOを見たぞと得意気になっていたが、今考えると本当にあれは何だったのだろう。
あまり覚えていないが、一時期家のトイレに入る気がしない時があった。トイレがあまりにも恐くてどうしようもなかったのである。
海を歩いていた時に感じた守りとはまた全く別の何かがあったかも知れない。
前述した家の猫いじりも良くしていたが、時々度が過ぎることもあった。彼はこれでストレスを感じたのだろう。
今日はちょっと調子に乗り過ぎた気がしたが、夜になって眠りについた。
家族も眠る深夜の時間帯、俺の2段ベッド上の枕元うしろからガリガリと言う音とギャーギャーと言う音で目覚めた。半身起き振り返ると、猫らしきが上って来たので
そのままこの出来事を忘れていたが、後で見ると猫がガリガリと引っ掻いて上って来たキズはベッドのどこにも全くなかったし、タンスに押し付けるかたちでベッドを置いてあったので猫でも入り込むスペースもなかった。
その深夜の猫の形相は黒白の彼ではなく、真っ黒だったし、ずっと痩せていて怒り狂っていた。
いじめたから彼の怒りが具現化した姿なのか、単なる化け猫なのかは未だにわからない。
不明飛行物体、不明幽霊についての体験はおよそ以上のとおりだ。
それより後にそんな体験はなくなった。しかし一部あったが。
早い子供の人生の中で実に濃い時期だった。
教師の体罰で命を諦めかけたと述べたが、実際に大きな病になる人物もこのクラスにいた。
クラスでの彼の存在は妙にあっさりとしていたが、明るく柔軟な性格、年寄り臭い雰囲気、希薄であるが妙な存在感が漂っていた。
これら独特の存在感は短命を暗示するものだったのだろうか。
クラスでは非常に親しかった印象ではないが、良く話をするあいだだったと思う。
ある日別のクラスメートが突然連絡して来て家に来たが、その彼が入院しているので見舞いに行くぞと言う。母は入院患者の見舞いと言うことで金を出した。
その病院も近かったので歩いて行ったが、彼は喜んでくれた。
その後定期的に何回も病院に見舞いに行ったが、その度に喜んでくれた。
始めのうちは明るい気分で希望もあったが、手術のため頭髪を刈られ毛糸の帽子をかぶっている様は悲痛だった。
別のクラスメートに彼は助からないと告げられたのはその後だが、彼の命についての諦めと言う意味では非常に残念だった。
彼は5年生に進級した後しばらくして死去した。
子供心に命が失われて別れてしまうと言うことが十分に認識していて残念でたまらなかった。
5年生の時の見学旅行の際他のクラスになったそのクラスのバスに彼と彼の母親の姿があった。
晩年の彼の姿を見たのがこれで最後だったが、当然頭髪もなく付き添いが必要だったことも気の毒な気がした。
彼の死を告げたのは彼を知らないクラス委員で、授業後クラス内にて笑いながら言った。彼は死と言う意味も何なのか理解していなかったらしい。
少しムッとしたが、亡くなった彼と同じクラスにいた女子は泣いた。
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