第11話 虐待と犯罪

 この性が火に結びつくと母は思い込んだのであろうか。

 確かに当時報道では放火魔のことが連日行われていた。

 こう言うニュースは母にとって過激だったかも知れない。


 ただここに記していても気が滅入るし、どう文に起こそうかとも考えたりする。


 この母の行為が一生俺の心の中の母に対する憎しみになるからである。


 ある程度の虐待については書いた。

 しかし怪我にまでなっていないかも知れない。


 この長屋全体での活動で、この周辺の美化を皆で一斉に行った日がある。


 ゴミもあったが、廃材や雑草、材木の切れカス、灌木の残骸等を集めて処分するのだが、今のようにすべて自治体の収集によるのでない。


 田舎で昔だ、燃える物を集めて焚き火にして灰を出して作業は終わる。


 その時どう言うわけか遠足気分でおやつが出された。

 俺は焚き火の時ガムを噛んでいたので味が無くなったところで焚き火の中にガムを吐き出すとそれは良く燃えた。

 自分の唾を含んだものが勢いよく燃えるのを見て笑っていると母がやって来て凄まじい見幕で怒られた。


 これをもう一度やっても同じだったのでまた喜んでいると、今度は母が鉄製の太さ数ミリの棒で俺を強く叩きつけた。


 一度ではなく何度も何度も叩きつけあまりの痛さに転げまわって逃げたが、母は追いかけてきては何度も何度も叩いた。

 ここまでくると母は興奮のあまり殺意まで持っていたのだと思う。

 しかし近所の老若男女の目もあり俺はあの鉄の棒での強打から逃れたのだと思う。


 その細い棒は身体にめり込み、硬いから威力も強かった。


 おそらくはこの体罰で怪我になったと思うが、病院に行った記憶はない。


 体罰に対する健康保険は利かない。病院は手当てをするのだろうが、喧嘩と交通事故には公費は出ない。


 母は親としての行為で一体何回犯罪を犯すのか。

 しかし、これで彼女の暴力の支配が終わると言う気配すらないのである。


 それは彼女はそのことに関して何の自らへの咎めの態度がなかったからである。


 この件に対して記憶が薄れていくことはなかったし、時々思い出しては煮え返っては煮えくり返る思いで生きてきた。


 家の中で何年経っても食器を壊してはその思いを晴らしていた。

 そのたびにまた母に怒鳴りつけられるのである。


 今こんな母がいたとすると児童相談所へ通報されて親と分離されてシェルター暮らしになっていただろう。 

 当時でも実際通報があったかも知れない。


 しかし聞くところによると彼女の育成も同じだったようだ。


 虐待はそんな風に子孫に受け継がれていくのである。


 虐待はそうなのだが、人の夢や野望はどうなのだろう。


 母も虐待されていたようだが、彼女の過度のそれ、夢と野望を抱いたのは確かである。


 女として母としての限界を亭主や長男である俺に全部背負わせると言うのも虐待の流れなのであろうか。


 女と言うのは人によってある対象の男性に対してはそんな思いで考える。


 その思いが一般の人では到底成し遂げられない程のものであってもだ。


 これを赦せるか否かで女は幸不幸へと分かれて行くのだろう。


 この過大妄想の実現に捕らわれて生きていくと、悪魔でも何にでもなるのだろう。


 単純に生きるのは男の方だが、時々そんな女性もいる。


 どちらにせよ適度に諦めを受け入れる人が幸福になるのだろう。


 単にルックスに惹かれて付き合うのは良いが、互いの価値観を確かめあうことは重要だ。


 1つの例ではないが、この頃から母は俺に対して「王子様になれないよ」と毎日毎日言っていた。

 しつこいので日本には王子様なんていないと言うと、天皇や皇室があると言う。


 大体日本で一般国民の男性が皇室に入るなんて歴史上一度もなかった。

 これでは今問題の女系天皇になってしまう。


 皇室の女性と縁を結ぶと皇室離脱になってしまう。


 こんなことも知らずに、そういったことを暴力の支配で強要しようと母は思っていた。

 俺はKKではない。

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