第9話 子供社会と性の発芽
前の学校で転校しなければならない程素行が悪かったと思わない。
確かにADHD様ではあったが特殊学級に移されるほどでもなかった。
どちらも一般の小学校だ。
それに確かに家は引っ越している。
引っ越した先の該当区域の校に転入したのだ。
一家が別の町の出身と言うことがその理由なのだろうか。
大人になってからはこの町の出身者に親しい人はいなかったが、この近辺の市町村出身の者を何人か見たことがある。
その何人かはあの永久歯と良く似た不純な言動を繰り返していた。
このストレスで朝には登校の準備が出来てから毎日のように登校したくないと思っていた。
時々言動で訴えることもあったが無駄であった。
しかしそれが時々体調の変化に訪れるようになる。
2段ベッドの上で眠っていた俺はどういうわけかベッドから下に落ちた。
痛みで泣いていたが眠りからあまり覚めず、またベッドに戻って眠った。
傷だらけの顔で登校したが、親が学校に連絡したようで、体育の時間1人だけ鉄棒のあるところで見学扱いされた。
鉄棒のところに押し込まれたので鉄棒にぶら下がって逆さ吊りの体勢をすると担任教師は怒り狂って俺をボコボコに殴った。
「そんなことをするからベッドから落ちるんだ」と怒鳴られた。
ベッドからも鉄棒からも落ちると痛いがあんたの体罰も痛い。鉄棒は低く当時の俺でも低すぎたが。
落下はストレスの表れだと言えないかも知れないが、それだとわかるものもあった。
眠っている最中に嘔吐したのだ。
眠っている最中のことは覚えていないが、ゲロの処理は母が行ったようである。
それでも体罰が怖くて登校の準備をしていると今日は学校を休んでいいと言われた。
その時の安心感は今でも覚えている。
そんな出来事が重なっても活発に外に出て遊ぶと言うことは変わりなかった。
冬季でもそり滑りなど外で過ごしているのだから身体は日焼けをしていた。
手の甲が常時日焼けしていて、手のひらと違う色をしているのに母はいつも苛立っていた。
手を洗うたびに手の甲を洗っていないと言う。
あまりしつこいので母の目の前で手の甲に石鹸をたくさん付けて洗って見せたところかなり驚いていた。洗っても手の甲の茶色いのが変わらなかったからである。
その居住している長屋の家を出て外に向かって右側は原野が広がっていた。
そこを中心に子供達集団が子供のする遊びをしていた。そこに俺も積極的に参加していた。
その中の1人に上級生の女の子がいて、いつも1人引っ込んでいて弱気な人がいた。
身体も小さく無口だったが誰よりも上級生だったのが不思議な存在だった。どの遊びをするのにも誰かの後についていくような感じだった。
ある日自分と同じくらいの年下の女の子が彼女に切れて上級生なんだからと鬼ごっこか何か、鬼の役を無理やりやらされて怒鳴られていたことがあった。彼女は自分より下級生の剣幕に泣きながらそれを行っていた。
今考えると、そんな人もいるのだろうと思ったものだが、田舎の小学生は1つ年上でも体格も雰囲気も態度も模範もまったくかなわない存在だった。上級生は教師ではないが下級生を統率する存在だったのだ。
子供集団だったが別にまだ恋心など何も起こらなかったが性と言うものが発現しはじめた。
大人からすると下らないことだが、テレビのお笑い系番組の罰ゲームに若い女性タレントのスカートをわずかに切ると言うのがあった。
スカートは短くもなかったし、切ったところで彼女の肌が見えるようになるわけでもなかった。
ただ、その行為が子供の性を刺激した。
スカートはその女性の性器を象徴するものだ。
フロイト論で言うとハサミは勃起したペニスの象徴だ。
女性の下半身を纏うもに対して欠損させる行為が昼の品性を壊すのに十分だった。それは女性に対するある種のサディズムの柔らかい現れでもある。
多分スカート全体を数センチハサミで切り落としてその輪を下へ落とすだとか、単にスカートを脱がすだけではこの現れはなかっただろう。
まだ女性の身体に対する具体的な性欲がなかったからだ。
スカートを切ると言ってもわずかな切れ目を入れるだけだが、これを見て興奮した。
浴室でそれを思い出し勃起した。
これを母に見られ怒られ「お前は小便をしたいのか、するならトイレへ行け」と言われた。
まだ勃起と言うこと自体が何なのかわからなかったし、スカートにわずかな切れ目を入れるのに思い起こしたことで得られる興奮と言うことすら何なのか理解していなかった。
この2〜3年後にも映画でキスシーンを見てこれが性行為のすべてであるかのようにクラスメートと噂しあったと言う程度のものである。
ただこれが通常とは異なる性になっていく前触れでもあった。変態ではないが性に対する行為が変わっていたのである。
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