第8話 野球と転校先のストレス
カエルを捕えて飼いはしなかったが、おたまじゃくしを捕えて飼育したことがある。
それに足が生えて、手が生えて、尾が無くなって、カエルになって田に返した。
アゲハチョウも多くいたが幼虫も多くいた。この幼虫は匂いがするがサナギになって蝶になるさまを観察した。
その2年後だが、別の土地でコオイムシの雄とその背の卵と共に捕獲して飼育。水槽の中で鰹節か何かを与えて卵が
これをレポートにして担任の教師にに提出したところ花マルをもらった。
普段決して褒めることの少ない教師にしては最高点を与えてくれた。
コウロギやショウリョウバッタも近所にいてこれらはかわいかった。噛み癖もなく汚くもなかった。
何故か忘れたが家の水槽に外の草や土を入れると一緒にスズムシか何かが紛れこんだのか、鳴く音色に酔いしれたこともある。
覚えている他に昆虫等に興味を持った挙げ句に飼育しようとして失敗し、死なせて悲しんだりしていたようである。
隣の同級生がカエルを捕えて家の中で飼育に失敗、と言うか何も養いを与えずカラカラに乾燥死体にして怒られているやつがいた。
こいつは野球好きだが、ものすごいアンチ巨人で、巨人が負けると俺を捉えては巨人が負けたことに対する喜びと巨人に対する罵声を浴びせていた。
巨人とは野球のことだとは認識していたがその頃まだ俺は野球のルールを知らなかった。
しかし当時この学校の男子生徒はすでに野球中継を見ており、ルールもチームも知っていた。
これを責られるので父に野球を教えてくれと言うとキャッチボールをするだけで何も話さなかった。
そうではなくピッチャーが投げた球をバッターが打ち返してフェアグラウンドに転がったら一塁に走るだとかを聞きたかったのだ。
親父はキャッチボールをして何を教えたかったのだろうか。
実際にこの地にいるうちに野球やソフトボールの類いをした記憶がない。
学校でハンドベースボールをしたはずだが記憶にない。
ハンドベースボールとは前に述べた子供に当たっても痛くない柔らかい小さなボールで腕をバットにして打撃をするベースボールだ。
当然デッドボールを当てられても痛くないから面白くない。打撃をしたいのだから一塁に行かずピッチャーに投球を要求したりする。
少年野球の存在を地元で知るようになるのは高学年に上がってからである。
しかし当時俺はルールがわからないから野球中継も見なかった。
巨人が勝とうが負けようが、それが何を意味するのかも知らなかった。
一学期だけその学校、学級にいなかった俺が夏休みが終わってそこへ合流したのだが、学級内では生徒も教師も俺を受け入れる素振りを見せなかった。
前の一学期だけの時の担任の教師がどんなだったかもあまり覚えていない。
殴ったのも整列を指導したのも同じ担任教師だったかどうかも。
どうも俺は幼い頃引っ越しをするたびに記憶が残るようになっている。
幼ければ幼いほど当時の生活の記憶は残らないものだが、引っ越しと言うイベントが刺激を与えるのだろうか。
だからと言って幼い子供がいながら引っ越しを繰り返して良いと言うわけではない。
6歳から7歳の集団で早くも「よそ者」と言うレッテルを人に対して張るほど保守的な地域だったのだろうか。
確かに田んぼの多い農耕地帯なのだが、確たる情報はない。
女子生徒については覚えていない。ランドセルを背負ったまま激しく動いて近くにいた女の子に当たったらしく泣かせてしまったが。
男子については集合写真を見ると何となく思い出せる。
この頃は乳歯と永久歯の混在している頃である。
男子生徒の1人に前歯すべてが全部永久歯の奴がいた。
非常に嫌らしい笑みを浮かべて見える表情はいつも永久歯が見える。
嫌らしい笑みと言ったが笑み自体を言うのでない。
彼が発する言葉すべてに人を罵りけなす嫌らしさがあるのだ。
具体的にはどう言うことを言ったか忘れたが、日に何回も俺や誰かをこき下ろすことを言っていたと思う。
その顔を見ると連鎖的に口汚い言葉が出て来るだろうと連想するようになる。
そのとおり必ず口汚い罵りの言葉を発するのだ。
この永久歯1人がそうならまだ良かったが、まだ数人そんな言動をする男がいて、教室はさながら汚染された言葉のドブと化していた。
担任の教師も教師で前殴った教師にも負けない
この担任の教師は若いが、若々しさのない陰気な男でいつも何かに苛立って見えた。
このイライラを何かにつけて教育現場で晴らそうといているようだった。
若いのだから目上の者が多かったと思うが、当然自分より弱い立場である生徒に対して牙をむくことになる。
ある時俺が算数の計算に苦労している時、この担任教師が俺のところにやって来て俺の後から計算しているさまを凝視する。
別に見られて緊張したのでないだろうが苦戦している時だからなかなか答えが出せない。
彼は言う。「何だ、そんなことも出来ないのか」
そう言ってゲンコツを張る。
あまり痛くはないが計算どころでなかった。
するとまた言ってくる。「痛いか」
痛くなかったので否定すると思いっきりゲンコツを張られ痛い思いをした。
痛くないゲンコツに対して嘘をついて「痛い、痛いです先生」とでも言ってほしかったのだろうか。
不条理はすでに家でさんざん経験済みだったが、学校での積もり積もったストレスですっかり参っていた。
ある日の朝泣きながら学校へ行きたくないと訴えたが、あの母だ、怒鳴りつけられて学校へ追い返された。
本当に登校拒否でもしたらどんな仕打ちをするのだろう。
二学期は小学校の学芸会や運動会があった。
この学校は一学期からそれの準備のためクラス内でもいくつかの出場種目別にグループ分けをしていた。
ある種目は隣の教室へ、別の種目はまた別の教室へと。
クラスメートの大部分が出て行き他の教室に入るので、どうしていいかわからずに廊下で取り残されて座り込んでいた。
すでに一学期中にその出場種目へとそれぞれの生徒が振り分けられていたのだ。
当然他校の生徒だった俺は何処にも行くところがなかった。
それに教師が気付いていないのか、それともあえて放っておいたかわからない。
これによって排除されたの如く強い孤独感に苛まれた。
これに気を使う他の教師も生徒も誰もいなかった。 実際他の教師に廊下で1人でいるところを見られている。
一学期だけ他の学校に所属していたことがそれほど憎いのか、面倒臭いのか。
それとも何か問題があって転校させられたからと思って、やって来た先でいじめてやろうとするのか。
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