イヴとミルクの物語①『にじのぼうけん』全8話

第1話 にじのかけら １４

「わたし達（たち）、焼（や）きがしを持（も）って来（き）たのよ。

ケンちゃんの好（す）きなアーモンドとくるみの入（はい）ったのもあるわ。

ほうら、うまく焼（や）けているでしょう」

　イヴは森（もり）を歩（ある）いて来（き）たので、

すっかりおなかが空（す）いてしまっていました。

かのじょは早（はや）く食（た）べたい気持（きもち）ちをおさえながら、

バスケットをテーブルの上（うえ）に置（お）きました。

ミルクは何（なに）も言（い）わずに、

持（も）って来（き）た花束（はなたば）をかかげて軽（かる）くふりました。

「おう！　ますます、すてきじゃないか。じゃあ、それでブランチにしよう」

　ケンはキッチンの階（かい）でコーヒーポットと茶（ちゃ）わんをおぼんに乗（の）せ、

大（おお）きなグラスにてきとうに水（みず）を入（い）れて持（も）つと、

また二人（ふたり）の所（ところ）にもどって来（き）ました。

「さあ、どうぞ」

　ケンはイヴとミルクにコーヒーを出（だ）してしまうと、

さっそく仕事（しごと）に取（と）りかかりました。

かれはしわくちゃの古（ふる）いノートを取（と）り出（だ）し、

そこにブルーのえんぴつで、

思（おも）いつくままにさっさと乗（の）り物（もの）をデザインしていきました。

そうしながら、左手（ひだりて）ではイヴが持（も）って来（き）た焼（や）きがしを取（と）って、

パクパク食（た）べていきます。

食（た）べることに関（かん）しては、イヴも負（ま）けてはいません。

ミルクが花（はな）を生（い）けているうちに、

焼（や）きがしの山（やま）はこの二人（ふたり）によって、

ほとんどなくなってしまいました。

(まあ、イヴもケンちゃんもなんて食（た）べるのが速（はや）いんでしょう。

おなかをこわさなければいいけど)

　ミルクは感心（かんしん）して、ケンのデザインではなく、

二人（ふたり）の食（た）べる様子（ようす）に見入（みい）っていました。

　ほどなくして乗（の）り物（もの）の図案（ずあん）はでき上（あ）り、

ケンが二人（ふたり）に見（み）せてくれました。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は２０２４年６月３日です。

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