第1話 にじのかけら 12

 二人ふたりがツタをよじのぼってなかはいると、

ケンはハンモックのなかでもうふにくるまり、

しっぽとみみだけをそとしてぐっすりねむっていました。


イヴとミルクはまどからはいってすぐのところにある、かいだんにおりちました。

そしてハンモックのなかのケンを見下みおろして、おおきなこえでよびました。


「ケンちゃんおはよう! もうあさですよ」


 はじめにミルクが、つづけてイヴがいました。


「わたしたち、おねがいがあってたのよ」


 するとケンはもうふのなかでねがえりをちました。


「なんだい? もうすこしねかしてくれよ」


 かれはぶつぶつと、ねむたそうにいました。


「この前店まえみせはなしたけれど、最近さいきんカメラの望遠ぼうえんレンズをっただろう。

さっそく使つか勝手がってをためそうと、昨日きのうはにじのさつえいをしたんだよ。

それからあのにじしょくにんがどんなふうににじをかけるのか、

一日中いちにちじゅうかれを観察かんさつしたのだ。とてもおもしろかったよ。

それをわすれないうちにノートにメモしていたら、

ねるのがすっかりおそくなってしまってね。

じつ数時間前すうじかんまえにここにもぐりこんだばかりさ。

だからねむくてねむくて……」


 そういながら、またゆめなかはいろうとするケンのからだを、二人ふたりはいっしょけんめいゆすりました。


「そのことでたの。わたしたちにじしょくにんつけるたびることにしたの」


 イヴがいます。ねむそうにケンがをふりました。


「でもにじしょくにんはもう、南西なんせいってしまったよ」


南西なんせい! これでにじしょくにんがどっちへったか、

まったからないわけではなくなったわ。

これはすばらしいがかりよ」


 ミルクがってよろこびました。イヴがいます。


昨日きのうリリスから、にじしょくにんがこのもりたっていたのよ。

わたしたちにじしょくにんつけてにじのかけらをけてもらいたいのよ」


 イヴはケンのブランケットにいたまま、きゅうにせすじをのばしていました。


「それでね、今日きょうわたしたちがここへたのは、

ケンちゃんにたび使つかものをつくってもらえないか、おねがいするためなの。

にじしょくにんはどこにいるかからないから、ながたびになるだろうけど。

あるいてさがすには時間じかんがかかりすぎるでしょう。もちろん、おれいはするわ」


 かのじょはやさしくいました。つぎのしゅんかん、ケンがパッとはねきました。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は2024年5月28日です。

 注意:作者がコメント欄を読むこと、またいかなる場合もコメントへ返信することはございません。読者の方のコミュニティーとして節度ある使用へのご理解と、ご協力に感謝いたします。

 注意:この作品は 『小説家になろう』、『カクヨム』、『Novel days』に、同時掲載しております。

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