イヴとミルクの物語①『にじのぼうけん』全8話

第1話 にじのかけら １０

よくあさ二人（ふたり）はさっそく連（つ）れだって、森（もり）のおくに住（す）むケンをたずねました。

ケンは若（わか）いビーグル犬（けん）で、けんちく家（か）でもあり、発明家（はつめいか）で研究家（けんちくか）でもある、とても多才（たさい）な犬（いぬ）でした。

でも少（すこ）しおっちょこちょいで、食（た）べることがイヴと同（おな）じくらい大好（だいすき）きなのです。

ケンは火曜日（かようび）と水曜日（すいようび）の朝（あさ）には、決（き）まってイヴのカフェに来（き）ます。

そしてエビとアボカドのサンドウィッチとコーヒーを朝食（ちょうしょく）に、老犬（ろうけん）ダイとざつだんするのです。

金曜日（こんようび）には昼（ひる）ごろ店（みせ）にやって来（き）ます。

そして一週間（いっしゅうかん）のニュースが書（か）かれた新聞（しんぶん）に目（め）を通（とお）しながら、緑茶（りょくちゃ）をかた手（て）にしゃけのおむすびを食（た）べるのでした。

　イヴとミルクは、手（て）をつないで歌（うた）いながら森（もり）を歩（ある）いて行（い）きました。

イヴはもうかた方（ほう）の手（て）にバスケットを持（も）っていて、その中（なか）には小（ちい）さな焼（や）きがしがいっぱいつまっていました。

ミルクはと言（い）うと、空（あ）いている方（ほう）の手（て）に、森（もり）でつんだ花（はな）をかかえていました。

　生（う）まれたての朝（あさ）の空気（くうき）はひんやりと冷（つめ）たくて、木（き）ぎの間（あいだ）から、太陽（たいよう）が金色（きんいろ）の光（ひかり）の糸（いと）をキラキラと森中（もりじゅう）に投（な）げかけていました。

しんせんな空気（くうき）を通（とお）して、遠（とお）くから、近（ちか）くから、鳥（とり）のさえずりが聞（き）こえてきます。

　小道（こみち）づたいにおくへおくへと進（すす）んで行（い）くと、二人（ふたり）は少（すこ）し開（ひら）けた所（ところ）に出（で）ました。

そこは木（き）がほとんどはえていなくて、地面（じめん）は円形（えんけい）にやわらかいしばふでおおわれていました。

そこは小（ちい）さな広場（ひろば）のようになっていて、空（そら）から太陽（たいよう）の光（ひかり）がふりそそいでいました。

広場（ひろば）の真（ま）ん中（なか）には、大（おお）きな円柱（えんちゅう）が立（た）っています。

その円柱（えんちゅう）をぐるっと取（と）り囲（かこ）むようにして、広場（ひろば）の周（まわり）りには大（おお）きな石（いし）やどうぞうが置（お）かれたり、花（はな）が植（う）えられている所（ところ）もあって、そういった物（もの）は全部（ぜんぶ）で十二（じゅうに）ありました。

この広場全体（ひろばぜんたい）が、実（じつ）は大（おお）きな日時計（ひどけい）になっているのです。

これはケンの発明（はつめい）の一つなのでした。

そしてその円柱（えんちゅう）の中（なか）に、何（なに）をかくそうわれらがケンは住（す）んでいるのでした。

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次回の掲載は２０２４年５月２０日です。

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