第25話 妖精さんからの依頼⑥

 それから30分くらい経ったかな。

 

 ここは森さん。

 いつものメンツと妖精さんで歩いてるよ。


 どこに向かってるの言うと、


「メイルくん」

「ん、なに?」

「この先に妖精さんの里があるんだよね」

「そうだよ。いま案内してもらってる」

 

 メイルくんはそう言うけど……


「ホントに協力してくれるかな」


 話せるのメイルくんだけ。

 1人でみんなを説得できるのかな。


「まあ何とかするさ。それよりも魔物が来ないか周囲をしっかり見張っててよ」

「了解だよ」


 はあ、不安だよ。


 

 ──メイルくんの立てた作戦。

 それは妖精さんたちの力を借りること。

 

 何を言ってるのかと言うと、いま私たちの前にいる妖精さん。

 この妖精さんの仲間たちを集って、悪霊さんを追い払ってもらうんだって。

 

 話によると、家主さんに良くしてもらってた妖精さんは多いみたい。

 家主さん家に遊びに行く時に、仲間を数匹呼ぶくらいには友好的だった。

 だから頼めばワンチャン協力してくれるんじゃないかって。


 協力を得るために、私たちはの里を目指してる。


「ですが、果たしてそう上手くいくのでしょうか? 妖精いわく、協力者はゼロだったとのことですが」


 この妖精さんが前にみんなに協力を仰いだらしい。

 でも誰も手を貸してくれなかった。

 仕方なく1人で掃除していたけど、結局拉致があかなくて私たちのところへ。

 

 薄情者さんの集まり?

 それともこの妖精さんに人望がないだけ?

 どちらにしても悲しいね。


「そこに関してはこっちも同じようなモノさ。この件にギルドや冒険者が協力してくれるとは思えない」

「あー、言われてみれば、たしかに……」 

 

 こんなこと誰もやりたがらないもん。

 慈善事業じゃないんだし。

 私だって超待遇ないとやってられないよ。


「だよね。それなら妖精の方がまだ期待できる」


 なるほど、人間よりも妖精さんか。

 一理あるよ、メイルくん。


「そう不安にならないで。大丈夫、僕が何とか説得するから」


 妖精さんを慰めてる。


「だから元気だしてよ」


 なんか優しくないかな?


 

 ──そして、

  

「ん、どうやら着いたみたいだ」 


 メイルくんが足を止めた場所。


「へえ~、ここが……」 


 地面に映る大きな影さん。

 その正体は目の前にある一際大きな大樹さん。

 太い枝が何本にも分かれてて、日差しがシャットアウトされてる。


 草木が生い茂ってて、周辺の木も大きなのばっかり。

 こんな秘境があったなんて知らなかったよ


「力強いですね、生命力に漲っています」


 栄養を独占してるのかな。

 はえ~、てっきりお花畑とハチミツを持ったクマさんとかを想像してたけど、こんな感じなんだ。


 ちょっと不気味な気もしなくはないけど、これはこれでなんだか神秘的かも。

 寝心地とか良さそう。


「あっ、出てきたね」


 さっそく妖精さんのお出迎え、らしい。

 やっぱり人間の訪問は珍しいのかな?

 

「よし、さっそくコンタクトを取ってみよう」


 相変わらず決断が早いね。

 そういうとこは私も見習わないと。


「やあ、妖精の皆さん。僕はメイル。探偵って分かるかな? それをやってる。ちなみに後ろの2人は僕の助手。よろしく」


 さっそく始まった。


 でも、


「それで、今日はキミたちにちょっとしたお願いあって来たんだけど──」

 

 怪しさ満載だよ、メイルくん。


 

 ──それから、メイルくんによる交渉が始まった。

 まずは警戒を解くために、ここに来る前に採取しておいた木の実を、お近づきの証として献上。

 外敵じゃないよってことをいち早く伝えた


 次に妖精さんと遊んだ。

 出会ってそうそう頼み事なんて普通に失礼だからね。

 異種族間の交流だと尚のことそうだよ。


 まずは何事もお友だちになってことから。

 はやる気持ちは分かるけど、テイカーさんになったらダメだよ。

 

 ここに関しては私も結構頑張ったと思う。

 私十八番の風さん芸が役に立ったよ。

 風さんと一緒に踊る風さんの舞を披露した


 自分で言うのもアレだけど、これが結構アクロバティックなんだ。

 妖精さんたちのウケも良かったらしい。

 

 メイルくんも楽しそうにしてた。

 それ演技に見えないよ、メイルくんって。

 子どもらしい一面が見れて私もハッピーハッピーだよ。


 あとはかくれんぼをしたり、おままごとをしたり、おやつを食べたり。

 

 個人的にお昼寝も。

 妖精さんたちと一緒に大樹の下で、スピスピさん。

 不思議と眠りの質が良かった気もするな。

 

 途中、ロザリアさんが紅茶を振舞おうとした時は流石に焦ったけど、とりあえず上手く行ったと思う。

 

 そうやって親睦を深めていったんだ。

 結構仲良くなれたと思うな。


 一見さん、ただ3人が変なことをして遊んでるように見えるだろうけど。


 妖精さんはいる、妖精さんはいる。

 誰がなんと言おうといるんだよ。

 疑わないでほしいな。


 それで、やっと本題。

 今は妖精さんたちに協力を仰いでるんだけど……

 

「隠れちゃったね、妖精さんたち」


 シーン。


 みんないなくなっちゃった。


「まあ、そう上手くは行かないか」


 悪霊さんの話をした途端、楽しげなムードが一変。

 みんな姿を消した。


 途中、風さんがコツを掴んでくれたおかげで、みんなの場所が大まかに分かるようになった。

 

 でも今はそれが全くないんだ。

 風さんがシャットアウトされてる。

 よっぽどあの悪霊さんが怖いんだね。


「メイル様、今日は引き上げだ方がよろしいかと」


 ちょっと遊んだくらいじゃダメか。

 これは時間かかりそう。


「いや、もう少し続けよう」


 頑張るね、メイルくん。

 でも今日はもうお暇した方がいいと思うな


「みんなごめん。急にこんな話をされても困るよね。僕だってそうなるよ」


 ん、ここはメイルくんに任せるから、なるべく無心さんでいるよ。


「まだあったばかりの、ロクに幽霊も見えない人間と組もうだなんて馬鹿げてる。キミたちの言うことは分かるよ。たぶんそれが一番合理的だと思う」


「でも、あの家をずっとあのままにはしておけない。何とかしてあげたいって思ってる。でも僕らだけじゃどうにもならなくて、助けが必要なんだ」


「キミたちも同じはず。だってそうだよね、そうじゃなかったら、わざわざ無人の家を守ったりしないはずだ」


 守る?


 ………あっ

 魔法が反射されるってまさか妖精さんが?

 冒険者からの攻撃を守ってた?


 えっ、てことは解体業者さんの体調が悪くなったり、不幸な事故も、全部妖精さんの仕業?


「隣にいる妖精から聞いたよ。みんな家主とすごく仲が良かったって。そう聞いて、何だか嬉しくなったんだ。赤の他人なのにおかしいよね」


「ほらっ、僕ってこんなんだからさ、みんなと話が合わなくていつも1人だった。友だちと呼べるのは本と妖精くらい」


 メイルくん……


「あっ、でも最近は探偵業を通して仲良くなれた人もいて、おかげで毎日が本当に楽しくて……ごめん、自分語りだったね。だから彼の気持ちがすごく分かるんだ。こんなにも大勢の友だちに囲まれて、すごい幸せだったんだろうなって。羨ましいよ」


 そんなこと、思ってたんだ。


「怖いのは分かるよ。視える分ずっとそうだろうね。でも恐怖に負けちゃダメだ。簡単なことじゃないけど戦わないと。今はまだいいかもしれない。でもいづれ本当に手がつけられなくなる。アレを倒せるとしたら、それは今しかないんだ」


「問題を先延ばしにしていたら、いつまでも終わらない。奥にある突っかかりはずっと残ったままだ。それじゃ楽しいことも楽しめないよね」


「どうかな。改めて力を貸してくれるとありがたいんだけど」


「あっ、もちろん無理にとは言わないよ。絶対上手く行くかと言われたら全然そんなことないし、危険なことに変わりない。僕らがやらなくても、他の誰かが解決してくれるかもしれない。何だったら自然消滅するかも」


 メイルくんらしいね。


「キミたちの意思を尊重する。でも協力してくれると嬉しい」

 


 ──こうしてメイルくんの呼びかけは終わり、


 家の前、ザッ


「揃ったね、じゃあ行こう」

「うん!」


 突撃だよ!



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