第2話:恋人はひとりだけとは限らない。

リンデルちゃんは、人間の男はダメなんて言ってながら快く俺と

付き合ってくれた。


悪魔って・・・特に小悪魔って呼ばれてる彼女たちのイジージは男性を

そそのかしたり、その気にさせる思わせぶりな行動をとったり、時には

わがままを突き通して男性を振り回す自由奔放な女ってイメージ。


だけどそれは、誰かが作った彼女たちの悪いイメージだろ?。

まあ、見かけや言葉遣い、態度からそう思ったんだろうけど。

それに天使がいるから悪魔を作ったって言えるかもしれない。


小悪魔の中にはそう言うダメな子もいるかもしれないけど、それは何も

悪魔に限ったことじゃない。


人間の女性の中にだって心に暗闇を抱えてる子だっている。

イメージによって性格は決まらない。


その点リンデルちゃんはとってもいい子だ。

俺が思ったとおりの子だ。

俺のことも彼女にとってはいいイメージの男だって思ってくれてるみたい。


ポイズンが休みの時、俺は積極的にリンデルちゃんを外に連れ出した。

で、お互いの気持ちをより近いものにしていった。


俺が熱を出して寝込んだ時も、彼女は心配して様子を見にきてくれた。


「元ちゃん、大丈夫?」


「リンデルちゃん・・・悪い、来てくれたんだ」

「お店は?」


「お店より元ちゃんのほうが大事だもん」


「嬉しいこと言ってくれるね・・・熱すぎてますます熱が出そうだわ」


「どれどれ?」


そう言ってレンデルちゃんは自分のおでこを俺のおでこに当てた。


「熱を測るのは手なんかじゃなくておでこが一番いいんだって」


およよ・・・待て待て・・・こんなに接近したことないぞ。

リンデルちゃんの息が・・・温もりが・・・。


俺がちょっと顔を前に出せばチューできるじゃん。


「あ、あのさ・・・え〜と・・・」


「ん?なに?」


「あの〜、チューしてもいい?」


「チューしたいの?」


「うん・・・あんなに顔、近づけられたら我慢できなくて・・・」


「あはは・・・分かった・・・いいよチューしても」


って訳で、チューした・・・悪魔と。

人間の女の子とさえチューしたことない・・・だからチューってこんな感じ

ってことをリンデルちゃんで経験した。

それ以来、めっちゃハグするようになったし、チューは日常茶飯事。


そして、ついに俺はリンデルちゃんとめでたく結ばれることができた。

悪魔とのエッチは、そりゃもう地獄に落っこちるくらいの快感で、

理性を働かせないと病みつきになっちゃう気分だった。


「リンデルちゃん・・・あのさお店引退できない?」


「え?メイドさん辞めるの?」


「うん・・・辞めさせてもらいえないの?」


「そんなことないけど・・・でも私を辞めさせてどうしたいの?


「このさい俺のアパートで一緒に暮らさないか?」

「俺たちもう恋人同士だろ?」


「そうだね・・・」


「あのさ、彼氏としてはリンデルちゃんが店で他の男相手に「萌え萌え〜」

なんて言ってるの見たくないし、想像もしたくないんだ」


「元ちゃん、お客さんにヤキモチやいてんの?」


「いやいや、これって普通だろ?」

「自分の彼女が他の男に笑顔を振りまいてるところ見て何も感じない彼氏

なんてどこにいるんだよ」

「そんなことなにも感じないで応援してる彼氏がいたらお目にかかりたいわ」


「私は別に気にならないけど・・・」

「あのね・・・悪魔の世界ではね、恋人って一人に限ったわけじゃないんだよ」

「その人がいいなって思って愛しちゃったら、その人も恋人だし」

「一人に限ってなんて概念はないの?」


「だから元ちゃんもその中の一人って訳・・・」


「え?なにそれ?・・・」


その言葉を聞いて俺はショックだった。


俺だけ・・・リンデルちゃんは俺だけを愛してくれてると思っていただけに・・・。

それって誰とでもハグしてチューしてるってことだろ?

誰とでも寝るってことだろ?


そんなこと他の男はどうか知らないけど、俺は許せない・・・。

男としての権威もプライドもあったもんじゃない。

自分の彼女が他の男と寝てるなんて、発狂しそうだよ。


ってことは俺はいったいリンデルちゃんの何番目の彼氏なんだ・・・。

それこそ数え切れない数じゃないのか?

そんな屈辱耐えられない・・・別れるしかないだろう?


だけど俺はもうリンデルちゃんの魅力から逃れられなくなってる。

彼女なしじゃ生きていけない。

俺はリンデルちゃんの毒に侵されてるんだ。


で、ポイズンから俺んちにやって来たリンデルちゃんが俺に言った。


「元ちゃんひとりに絞って来てあげたからね」


「え?どう言うこと?」


「元ちゃん以外の彼氏は全員処分してきたから・・・」


処分って・・・?


「だから処分だよ」

「だって元ちゃん私に他の男がいたらイヤなんでしょ?」

「だからね、他の男はみ〜んな、全員消して来てあげたから・・・」


おしまい。












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異類的ポイズン級彼女。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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