第3話 りりな、刈り上げを覚える
りりなは魔力の総量がべらぼうに多すぎてコントロールが難しく父のような繊細な施術は困難であった。それでも父は粘り強くコントロールを指導し、13歳になる頃にはなんとか上部を保護して「刈り上げ」と、少し怪しいツーブロックまではできるようになった。もともと彼女はハンター(りょうし)のジョブスキルしか持っておらず繊細な理容師の仕事には不向きである。
①
「お客さ〜ん!刈り上げちゃってもいいですか〜」
看板娘のこれはもはやこの国の名物にもなっていて海外からもりりなを指名で訪れるほどになっている。
派手なプラズマ放出もエンタメの一部となっている。
②
りりなは客の要望にできるだけ応えようという思いはある、父のように毛の一本まで認識できるまでには途方もない時間がかかるだろう。それでも尊敬する父に追いつきたかった。せめてツーブロックだけでも綺麗に。
できる限りの形を保った防御魔法が組み上がった。
「エクスプロージョン!」
③
客はもとよりみな、りりなのために丸刈り覚悟である。
目を開けた客、としろうは感嘆した。
そこには見事なツーブロックが出現していたのである。
「りりなちゃん!やったね!」
「うん!嬉しい!としろうさんありがとう!」
④
王国の今年の髪型の流行は「ツーブロック」に決定した瞬間であった。
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