第2話 りりな、魔導理容師デビューする

 りりなの父は髪の毛一本一本の長さまで自在に感知し、操り、カット、毛先までまるめるほど繊細に操る腕利きの魔導理容師である。当然、予約は半年先まで埋まり、王侯貴族や上流階級まで彼の施術を求めた。


 そんな折、10歳にになったりりなが父の店を見て「手伝いたい」と言い出したのだ。

 父は自分の持てる技術の粋を彼女に惜しみなく注ぎ込み指導した。


 ①

 いつもの常連がやってきた。

 「大将!今日も頼むよ。流行りの髪型にしてくれ、お任せで。」

 「今日はワシの一番弟子の娘が修行を終えてデビューなんだ、任せてもらえんかね。」

 「へえ、あのりりなちゃんかい?それは楽しみだ、よろしく頼むよ。」


 ②

 「りりなです!初めてですがよろしくお願いします。!」


 「ところで旦那、今の流行は『丸刈り』なんだ、それでいいかね。」

 「え、あ。丸刈り?」

 「い・い・か・ね?」


 「は、はい」


 ③

 客の頭に厚さ6ミリの防御魔法を施し、

「りりなちゅわーん、そしたらお願い〜」

 店主が垂れ切った目で娘に施術を促す。


「いっきますねー」

 りりなの左手から1メートルはあろうかというプラズマが放出されている、周りの客の顔が恐怖に歪む。

 「エクスプロージョン!」

 髪の毛はひとかけらも残さず蒸発し、父が防御魔法を解除すると見事な6ミリの丸坊主頭が出現した。


 ④

 この国を訪れた旅行客や他国の猟師(ハンター)たちが一様に驚く。

 この国では丸刈り頭がブームとなっていた。

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