第12話 告白
十二 告白
翌日、学校に復帰した由衣。
放課後カラオケボックスに一緒に行くことを決める。
美咲と加奈の二人は由衣の元気そうな姿に安心するものの、でも由衣と拓哉の関係のことが気になってしょうがない。
カラオケボックスで部屋に入った三人。
由衣がかしこまって話し始める。
「色々と心配かけてしまってごめんなさい。拓哉さんとのこと、話しします。全部ちゃんと話さないとわかってもらえないと思うから長くなるし、きっと私のこと軽蔑しちゃうと思うけど、でも最後まで聞いてください」
「「うん、ちゃんと聞くから」」
「はじまりは中間試験の前に美咲のとこで勉強会した時なの‥‥‥」
「えっ、あの時?」と驚く美咲
「うん、あの日、トイレに行った帰りに偶然拓哉さんの部屋のドアが少し空いてて中をのぞいたら見えちゃったの。拓哉さんがベッドの上でオナニーしてて、ザーメンを出すところを‥‥‥」
「え〜っ。あの変態っ!!」
「ううん、別にオナニーなんて誰でもするし、全然おかしくないと思うんだけど、私、男の人のペニスを生で見るのはじめてで、ザーメンが出るとこも見るのはじめてだったので、驚いて、でも痺れるくらいに興奮しちゃって‥‥‥」
「私、周りからは真面目な優等生っていうように見られてて、自分もそういう感じに合わせてたんだけど、でも本当なすごくスケベで、性欲が強いっていうか、実は毎日オナニーしまくるような変態なの。学校のトイレでオナニーしたこともあるし、アパレルショップの試着室とか公衆便所とかでもしたりとか‥‥‥」
「えっ‥‥‥、そ、そうなんだ‥‥‥。全然そんな感じに見えないけど‥‥‥」
由衣のカミングアウトに驚く美咲たち。
「うん、でもそうなの。それでお兄さんのオナニー見て、もうどうしてももっと近くで見たくてたまらなくなって、それでお兄さんにお願いするっていうか、ちょっと脅すみたいな感じでお兄さんにせまって、次の日、ネカフェの個室でお兄さんに目の前でオナニーしてって頼んで、オナニー見せてもらっての。ザーメンどくどく出てくるのにおかしくなっちゃうくらい興奮しちゃって‥‥‥。それがはじまり」
衝撃の告白に言葉を失くす二人。
由衣はそのあとも、拓哉とのプレイ内容も含めて詳細に経緯を二人に話していく。
今まで誰にも言えずに秘めてきた淫らな願望や、汚されたい辱めをうけたいという被虐願望、羞恥願望、拓哉にザーメンで体を汚してもらったり、ザーメンを飲ませてもらって、興奮して拓哉のペニスにむさぼりついてしまったこと。
彼を裏切る前に別れたこと、拓哉の肛門開発や調教により目覚めた自分の中に潜んでいたマゾのどうしようもない血と、それを全部ぶち撒けて自分をさらけ出せる拓哉とのプレイが、自分の生き甲斐になっていき、どうしても拓哉を失いたくないと気付いたこと、全てを捨ててでも拓哉の肉奴隷として生きていきたいと思い、拓哉に告白したことも、二人に洗いざらい話す由衣。
そして最後に先週土曜日に拓哉からの返事をもらい、由衣が人生をかけて決断した思いに対して拓哉もそれを受け止めてくれて、風俗勤めなんてさせない、人生をかけて由衣を愛し、奴隷妻として調教していくと言ってくれて、婚姻届を出して、卒業後に結婚の約束をしてくれたこと。
それがどうしようもなくうれしくかったと最後に話す由衣。
音のないカラオケボックスに張り詰めた重い空気と由衣の真剣な告白で長い時間が経っていった。
「「ふ〜ぅっ‥‥‥」」とため息をつく美咲と加奈。
「驚いた‥‥‥。すごい話だね。一番奥手で真面目だと思ってた由衣が、こんなすごい状況だったなんて‥‥‥」と驚きの感想をもらす加奈。
「そういうのって、健康を害するようなこととか、危険なことはないの?」
心配そうに聞く美咲。
「ううん、大丈夫、拓哉さん、そういうことはちゃんと気遣ってくれてるから。拓哉さんに何度も孕まされて堕胎したい、っていったらそんなのもダメだって‥‥‥」
「私、そういう世界のことわからないけど、由衣が真剣に悩んで決めて、それを兄貴が受け止めて、二人で決めたことなんだから、私は何も言わない。二人の意思を尊重するから。兄貴、彼女の麗奈さんとちゃんと別れたって言ったけど、ホント?」
「うん、この前の金曜日にお別れしたって」
「なんでか全然わからないよ。あんなに美人で性格もよくっていい彼女だったのに‥‥‥」
「うん、聞いたら、合わなかったんだって。拓哉さん、彼女とセックスする時、彼女はまず歯を磨いてシャワーを浴びないと嫌だし、拓哉さんにもそうしてくれないと嫌だって言われて、それがダメだったみたい。彼女とのセックスではどうしても興奮できないって。自分の性癖やしたいこともちゃんと言えない関係じゃ、このままいってもストレスが溜まるだけだし、それがきつくて、元々別れるつもりだったみたい」
「どうして‥‥‥。シャワー浴びたり歯磨くくらい、大したことないじゃない」
美咲にはそれが意味することがわからない。
「いや、違うな‥‥‥」
彼氏持ちで今まで何人かとの恋愛経験がある加奈が話し始める。
「私はそれ、すごくよくわかるよ。男と女ってスペックとか条件で付き合っているんじゃなくって、もっとお互いの思いとか性格とか性癖とかいろんなものをぶつけ合っていかないといけないんだけど、でもそこでそういう遠慮とか我慢とか、思いやりとかじゃない自分を抑えることが色々でてきちゃうと、相手との距離を感じちゃったり、冷めちゃったりとかあるもんだから、拓哉さんのそういう気持ち、私にはわかるよ。全然些細なことじゃないのが‥‥‥。
それに由衣の性癖は私にもわからないけど、でも由衣の心が求めるものがそういうところにあって、それは普通の相手では言えなかったり理解されなかったりするのに、拓哉さんが、由衣が投げるボールを受け取って投げ返してくれるキャッチボールすることができる、唯一無二の掛け替えのない相手だった、ってことなんだと思う。だから私、由衣がどうしても拓哉さんを失いたくないって思い詰めた気持ちもわかるよ」
「うん、ありがとう」と涙ぐむ由衣。
「う〜ん‥‥‥。そういうもんなのかな〜」と美咲。
「美咲は、まだちゃんと男子と付き合ったことがないおねんねだからね〜」と加奈が茶化す。
「ひど〜い、人をお子様みたいに言って!」と膨れる美咲。
「でも、由衣が幸せならいいや、私にももしかしたらいずれ、わかるようになるかもしれないし」と由衣に笑顔を向ける美咲。
「ありがとう、ごめんね。二人に隠していて‥‥‥」
「うん、いいよ。気軽に話せることじゃないのはよくわかったから。でもそれにしても兄貴はまったくもう‥‥‥」と面白くない感じの美咲。
「拓哉さんのこと悪く思わないでね。私のことすごく思ってくれて救ってくれたんだから」
「それはわかってる‥‥‥。でもなんかムカつくの、兄貴に!」
「それは美咲がブラコンだから」
「ちがうもん、あんな変態兄貴、由衣と幸せになっちゃえばいいんだから‥‥‥」と拗ねる美咲。
カラオケボックスの中の空気はいつのまにか軽くなっていき、三人のいつもの雰囲気の会話に、笑顔が広がっていった。
「それじゃね、今日はありがとう」と二人にお礼を言う由衣。
「あ、そうだ、ひとつ聞きたいことがあるんだけど、さっきの話で、由衣はいつでもっていうか、その、今でもお尻にしっぽをつけてたりするの‥‥‥」と恥ずかしそうに聞く美咲。
「うん、いつもつけてる。安心するの、私の変態の証だから」とにっこり微笑む由衣。
「じゃあね」
「あ、うん、また明日!」
あまりにもあっけらかんと自分の性癖を二人に言えるようになった明るい由衣に驚いて顔を見合わせる二人だった。
その晩、ドアをノックして美咲が拓哉の部屋に入ってくる。
「由衣から全部聞いた‥‥‥」
「うん」
「本当に卒業したら由衣と結婚するの?」
「そうするつもり」
「パパやママにはいつ話すの?」
「就職が決まったら話すよ、家を出ることと由衣と結婚することを」
「私、そういう性癖っていうか、そういう世界のこと、全然わからないし、わかろうとも思わないけど、でも由衣と兄貴がそう決めたんだら応援するから」
「え、あ、ありがとう」
「そのかわり由衣を絶対泣かしたら許さないからね」
「え、でもいつも泣かせちゃってるけど‥‥‥」
「はあ〜っ! って、えっ、バ、バ、バカ! そういうこと言ってるんじゃないの! そんなプレイとかのことじゃないから」
兄の言ってる意味に気付き、顔を真っ赤にして怒る美咲。
「冗談だよ、わかってるから・・」
「バカ、変態、バカ兄貴!‥‥‥もういいっ!」
そう言って部屋を出て行く美咲。最後にドアのところで立ち止まる。
「‥‥‥由衣のこと幸せにしてあげてね」
そう言い残して美咲は部屋を出ていった。
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