第11話 発覚

十一 発覚


 翌週月曜、由衣が学校を休む。

 朝、来てない由衣を心配して美咲と加奈は三人のLINEグループからメッセージを送る。

 美咲「由衣、病欠だって言うけどどうしたの? 大丈夫?」

 少しして由衣からメッセージが返ってくる。

 由衣「体がかなり疲れちゃったみたい。熱が出て、休養したほうがいいと思うので、二日ほどお休みさせてもらうね」

 加奈「気持ちとかは?」

 由衣「大丈夫。すごく今幸せなの、疲労は体だけ、あとは元気だから」

 加奈「よかった」

 美咲「何かほしいものがあれば言って。買ってお見舞いに行くから」

 由衣「ありがとう、大丈夫」

 加奈「ノート、ちゃんと取っておくからね」

 由衣「ありがとう」

 美咲「ゆっくり休んで」

 由衣「はい」

 大丈夫そうな感じなので、ほっと胸を撫で下ろす二人。


 火曜日の放課後、

 由衣のお見舞いに行こう、ということになり、驚かせちゃおうか、と由衣には言わずに由衣の家に行く美咲と加奈。

 お母さんも仕事でいないみたいで、突然の二人の訪問に驚く由衣だが、割と元気そうで、明日からは学校に行くと言う。

 お見舞いのスイーツを三人で食べて早々に引き上げる二人。

 由衣の家を出て駅に向かって歩く二人。加奈が「あれっ、スマホがない!?」と声をあげる。

「由衣のとこに忘れたのかも、ちょっと先に駅に行ってて」と美咲に言って由衣の家に戻る加奈。

 角を曲がって由衣の家が見えることにきてバッグの中を探しながら歩いていると、先のほうの由衣の家にバイクから降りて入って行く男性が一瞬見えた。

「えっ、あれっ?」

 と、同時にバッグのポケットの奥にスマホがあるのが見つかる。

「あ、あった‥‥‥、よかった〜〜」

 とりあえず美咲を待たせているので、急いで駅まで向かう加奈。

 さっき由衣の家に入っていった人、なんか美咲の兄貴の拓哉さんっぽかった気がする。

 加奈は拓哉とあったことが数回あるので、そんな感じがしたのだ。

「美咲お待たせ、バッグの中にあったよ〜〜」と謝る加奈。

「まったくもう、加奈はそそっかしいんだから。行こう」

 駅に入って電車に乗る二人。

「ねえ、美咲」

「なに?」

「さっきスマホ探して由衣の家に戻りかけて、家が見える所で由衣の家にバイクできた男性が入って行くのが見えたの」

「え、それって‥‥‥。由衣一人っ子だよね」

「うん、それがね、なんか拓哉さんっぽかったんだよ。拓哉さんバイク乗ってたよね‥‥‥。遠くでちょっと見えただけだから、なんとなく、っていうだけなんだけど‥‥‥」

「えええっ、ホント? 兄貴、バイク乗ってるよ‥‥‥」

「でも、そんなこと、ないよね。拓哉さんと由衣がって‥‥‥、きっと見間違いかなっ」と苦笑する加奈。

「でも兄貴、由衣の進学のことで相談されて何回か会ってたみたいだし、由衣の家にも行ったって言ってたし、ヘルメット何色だった?」

「黒っぽかったと思う」

「服装は?」

「黒っぽい上とジーンズっていう感じだったような‥‥‥」

「わかった、あとで確かめてみるから」と美咲。

「あのさ〜、拓哉さん、彼女いたよね〜」と不安そうに言う加奈。

「う、うん、大学のミスコングランプリとったすごい美人の彼女がいる」

「そうだよね。あ〜っ、見間違いならいいけど‥‥‥」

 不安な気持ちになる二人だった。



 夕方、部屋でさっきのことが気になって悶々としている美咲。

 一時間くらいして拓哉が帰ってくる。

 拓哉の部屋のドアが閉まる音を聞いて立ち上がる美咲。

 拓哉の部屋のドアをノックすると、どうぞ、と拓哉の返事。

 美咲が部屋に入ると、拓哉は黒いジャケットを脱いでいるところだった。

 ボトムスはジーンズで、机の上にはバイクの黒いヘルメットが置いてある。

 険しい表情で拓哉を睨みつける。

「どうした?そんな怖い顔して‥‥‥。座ったら」

「兄貴、今どこから帰ってきたの?」

「どこって、大学行ってたんだよ」

「そのあとは?」

「え、なんだよ‥‥‥」

「由衣の家に行った?」

「えっ、なんで?」

「やっぱり行ったんだ‥‥‥どうして?」

「いや、なんだよ急に」

「由衣とどういう関係? 何してるの‥‥‥」

「なんにもないよ」

「うそ! 土曜日だって麗奈さんとデートしたんじゃなくって由衣と会ってたんじゃないの?」

「兄貴、二股かけてるんじゃないでしょうね!」

「そんなことしないよ」

「じゃあ由衣とは何なの‥‥‥」


「‥‥‥麗奈とは別れた」

「うそ、どうして‥‥‥」

「ダメだったんだ、合わないっていうか‥‥‥」

「それで由衣に鞍替えしたの?」

「それは言えない」

「どうして‥‥‥? 由衣に酷いことしてないよね?」

「そんなことするわけないだろ」

「じゃあ何で言えないの‥‥‥関係あるんでしょ!」

「美咲と加奈ちゃんには、明日自分でちゃんと話すって由衣が言うから、だから今は何も言えないんだ」

「由衣と付き合ってること認めるんだ‥‥‥」

「それも言えない、由衣から聞いてくれるかな」

「わかった、もういい。でもいいかげんなことしてたら、絶対に許さないからね!」

 そう言って美咲は部屋を出ていく。


 大きくため息をついて、拓哉は由衣にメッセージを送る。

「今日、そっちに行ったの、美咲たちに気づかれたみたい。とりあえず僕たちのこと何も言ってないから、明日由衣が話すって言って」

「えっ、はい、わかりました」


 すぐに由衣は三人のLINEグループにメッセージを送る。

「今日はお見舞いありがとう。明日の放課後、大事な話があるので時間を作ってくれますか」

 二人から、大丈夫と言う返事がある。

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