第9話 決意
九 決意
言ってたとおりに月曜の朝から由衣は生理になる。
生理になったことをLINEで拓哉に告げる由衣。
生理中でもクチまんこやケツまんこは使えるので、という由衣だが、拓哉も学校での課題が忙しくなり、次回は一週間後の土曜日に会うことに決める。
月曜日の放課後、由衣を誘う美咲と加奈。
三人でカラオケボックスに入る。
「由衣、この前言ってたことなんだけど、私たちに話してくれないかな。私、由衣のこと親友だと思ってるし、なんでも相談し合えたらと思ってるんだ」と美咲。
「うん、ありがとう、でも‥‥‥」と口を閉ざしてしまう由衣。
「私たちにも言えないことなの?このところ由衣、すごく変わったというか、何を考えてるのかわからなくって、すごく心配なんだよ」と加奈。
「由衣、すごく純粋で人を疑うことを知らないところがあるから、誰かに騙されちゃってるんじゃないかって。悪い宗教とか、悪い男の口車を信じちゃって自分を見失っちゃったりしてないか、心配なの」と美咲も由衣を真剣に見つめて言う。
「ごめんね、心配かけちゃって。でも誰かに騙されたりとかしてないし、ちゃんと自分のことわかってるから。ちゃんと自分のことが、本当の自分に気づいちゃったから、もう今まで通りでいられないの‥‥‥」
「本当の自分って何?今までの由衣は本当じゃなかったってこと?」と加奈。
「今までの私も嘘じゃなかったけど、でも私の心の奥には今までの優等生だった自分とは全然違う自分がいて、それが本当の自分なんだって気ずいたの。それで救われたの?」
「全然ちがう自分ってどういうこと?」美咲が声を荒げる。
「ごめん、それは今は聞かないで。いつかきっと二人には話すから、少し時間をください‥‥‥」
そういって頭を下げる由衣。
「わかったよ。私たち由衣を信じてるから、由衣が話してくれるのを待つよ。でも約束して、絶対に犯罪に加担したり関わったりしないでね。あと危ないとか怖いとかそういう状況になったら自分を守って、そして逃げて遠慮しないで私たちを頼って!」と加奈が言う。
「うん、約束する。ありがとう、加奈、美咲」
「私たちいつまでも親友だから!」と美咲。
「うん、ありがとう、ごめんね心配かけて‥‥‥」と涙を流す由衣だった。
次の土曜日。
生理がほぼ終わり、待ち合わせのカフェに向かう由衣。
店に着くとすぐに拓哉がやってきた。
「こんにちは、今日はよろしくお願いします」と丁寧にお辞儀する由衣。
座ってオーダーする拓哉。
「あれから何か心境の変化はあった?」
「いえ、冷静になって考えてますけど、でも気持ちは募るばかりで‥‥‥」
「驚いたよ、進学しないで、風俗に勤めるって言い出したから」
「はい、別に風俗で働きたいわけではないですが、私のような何の能もないものが、お金を稼ぐには体を売るしかないと思うので、でも決して自暴自棄で言ってるのではなくて、自分の人生の目標のための手段なので、割り切ってできると思ってます」
「気持ちはわかるけど、でもまだまだ長い人生なのに、今そういうように自分の将来を限定してしまうのは早いとは思わないか?」
「私、生まれてはじめてどうしても自分でやりたいことができて、お兄さんの肉奴隷になる、っていう夢を実現するのが今の生き甲斐なんです。だから後悔しませんし、絶対にご迷惑おかけしませんから‥‥‥」
ふう〜っ、と大きくため息をはいてコーヒーを飲む拓哉。
少ししてゆっくりと話し始める。
「僕もあれから真剣に考えたんだ。由衣が自分の人生を賭けて決意した思いをどう受け止めるのか」
「‥‥‥‥‥‥」
「人は生きてく上で生き甲斐や目標が必要だけど、でもそれだけじゃない。健康であることもそうだし、心穏やかでいれることも大事だし、どんなに変態マゾだって二十四時間それだけで生きてるわけじゃないから、自分の性癖や性欲に向き合うためにも、それを支える生活が荒んでたらダメなんだと思うんだ。
僕は人にとって大事なものは愛し愛されることだと思う。愛情があって信頼関係があってはじめて遠慮なく全てをぶつけ合えると思うし、だから、由衣が僕の肉奴隷になりたいっていう思いはすごくわかるけど、そのために家を持とうとして風俗で金を稼いだりすることを認めることはできない。だから由衣の申し出は受けれないんだ‥‥‥」
「そう‥‥‥なんですか‥‥‥」と拓哉に自分の望みを絶たれてしまい、打ちのめされて下を向いてしまう由衣。
肩を震わせて泣いている。
拓哉は自分のバッグを開けて一枚の紙を取り出してテーブルの上に置く。
「ちがうよ、由衣、顔をあげて。これが僕の答えだよ」
由衣が言われるままに涙を拭って顔をあげると、テーブルの上には一枚の紙があり「婚姻届」と書かれていた。
夫の欄には拓哉の名前や本籍が書かれ、印鑑が押してある。
「えっ‥‥‥」
言葉を失う由衣。
「由衣が自分の人生をかけて決意したんだから、僕も人生をかけないといけないだろ。僕にとっても由衣は掛け替えのない存在なんだ。だから高校卒業したら僕の妻になってほしい、奴隷妻に。そして一緒に生きていってほしい。ずっと調教していくから。由衣を風俗で働かせたり、堕胎させたりはしない。由衣に種付けして孕ませるけど、二人の子として育てるんだ。それが僕の答えだよ。‥‥‥それともそういう恋愛関係がない、ただの肉奴隷じゃないと嫌か?」
あまりの驚きに言葉がでない由衣。
テーブルの上の婚姻届が霞んで見えなくなる。
「ううん、ううん」と何度も何度も首を横に思い切り振る由衣。
どんどん涙が溢れてきて、堰を切ったように大泣きしだしてしまう。
周りの客が何事かと由衣に注目する。
慌てて由衣をなぐさめようとして背中を優しく撫でる拓哉。
いきなり由衣が抱きついてくる。
「ありがとうございます。ありがとうございます、ありがとうございます。お兄さんのこと愛してます、愛してます、心から愛してます」と泣きながら何度も繰り返していく。
由衣を抱きしめてしばらくなだめて落ち着かせる拓哉。
「ひっくひっく」とやっと泣くのが治ってきた由衣。
耳元で拓哉が由衣にささやく。
「この前、プレイしてわかったんだ。僕も由衣を心から愛していることが、だから僕の奴隷妻になってくれないか」
「は、はい、はい、一生をお兄さんに捧げます・・私、お兄さんに素敵な彼女がいること聞いてたので、どんどん、お兄さんを好きになって離れられなくなっていって、でも恋愛関係まで求めてしまうと、きっと全部終わってしまうと思って、でもお兄さんとどうしても離れたくないし、だから奴隷関係だけでもつながっていさせてもらえれば、それ以上は求めなければ、離れないでいれるのかな、って思って‥‥‥」
「大丈夫だよ。彼女とは昨日別れたんだ」
「えっ?」
「私のせいですか‥‥‥」
「違うよ。元々別れようと思ってたんだよ」
「あの、どうしてか聞いてもいいですか?」
「彼女、ルックスも最高だし性格もいいし、僕にはもったいないくらいの素晴らしい女性だったけど、でもダメなんだ。どうしても興奮しないんだ。セックスの時も始まる前に歯を磨いてシャワーを浴びないと嫌みたいだし、僕にもそれを要求するし‥‥‥。それがどうしてもダメだったんだ。由衣にはわかるよね」
「はい、すごくよくわかります。お兄さんがそういう人だったら、こんなに好きにならなかったと思いますし」
「むずかしいよね。些細なことかもしれないけど、でも一時が万事で、彼女に対しては自分のドロドロとした性癖とかも曝け出すことができなかったんだよ」
「私、お兄さんに自分の全てをさらけだしたいんです。お兄さんにはそれができるんです。恥知らずで、変態で、どうしようもないマゾな自分を‥‥‥」
「ああ、僕も由衣には全部を出せるし、したいことも遠慮なく言えるし、だから、一生を共にしようって、決めたんだよ。由衣を生涯かけて愛し、変態調教していこうって‥‥‥」
由衣の体を起こして再び自分のバッグから小箱を取り出す拓哉。
「これを受け取ってくれ」
「はい、これは?」
「開けて」
由衣が箱を開けると黒い革製の首輪のようなチョーカーが入っていた。
「これって‥‥‥」
「由衣の首輪だよ。チョーカーとしてつけてても大丈夫だから、僕と一緒の時はいつでもつけていてほしい、婚約指輪の代わりだから」
「ああ、ありがとうございます。ホントにうれしいです。今つけていいですか?」
「ああ」
由衣は箱から首輪を出して自分の首につける。
黒髪ショートボブで白い肌の由衣に似合っている。
「由衣、すごく可愛いよ」
「ありがとうございます。恥ずかしいです」
耳を真っ赤にしている由衣がたまらなく愛しく感じる拓哉だった。
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