第7話 2人目のヒロイン登場

 それからも拓海は真面目に授業を受け、家のこともこなして毎日を過ごしていた。ストーカー被害を受けていた安城 希美の登下校にも欠かさず付き添った。


 そんな彼の行動は、周りの美少女たち好感度を次々と高めていっている。当の本人は当たり前の行動をしているだけだと思っているので全く気が付いていないようだが……。


(そろそろバイトでも探すか……)


 そんな彼は、次はアルバイトにも手を出そうとしていた。客観的に見て勉強も家事も高校生にしてはしっかりとこなしている拓海なのだが、本人としてはまだまだだと思っていた。


(少しでも母さんを楽にしてあげるためにも、食費くらいは俺が稼がないとな……)


 獅子堂 拓海として転生する前……成瀬 隆一は貧乏な家庭で育ったため、生活費がどれだけ貴重なものかを身を持って知っているのだ。


 リビングのソファーで求人誌を見ていると、自室から飲み物を取りに来た芹菜が話しかけて来た。


「兄貴、バイト探してんの?」


「あぁ、母さんばかりに負担をかけてられないから俺も働こうと思ってな。けど、いいバイトが見るからなくて悩んでる……」


 通勤手段、時給、職場の環境……なかなか自分に合ったバイト先を見つけるのは難しいものだ。


「あー、そう言えばアタシの友達が働いてるファミレスでアルバイト募集してるらしいんだけどさ……面接行ってみる?」


「ほんとか!?」


 拓海は芹菜の友人が働いているというアルバイト先を紹介してもらうことにした。そこは通勤手段、時給、職場の環境……どれをとっても彼にとって条件のいいものだった。


 ◇


「あー、そんじゃあ2人とも採用ってことで」


 面接の後、すぐに連絡をもらって職場のキッチンに行くと金髪のチャラいオーナーにそう言われて採用となった。


 どうやら拓海はもう1人の応募者と同時に採用になったようなのだが……そのもう1人はなんと、原作主人公の野丸 普人だった。


「野丸くんもこのバイトの面接を受けてたのか、よろしく!」


 まさに野丸 普人だと仲良くなる絶好のチャンスとばかりに挨拶を交わす拓海。


(っざけんなよ、なんで獅子堂のやつがいるんだよ……)


 一方、内心で悪態をつく普人。2人は仲良く(?)握手を交わした。


「あー、おまえたち同じ高校らしいな。うちにおまえらと同じ高校のやついるから、あとはそいつに教えてもらえー」


 金髪のオーナーがめんどくさそうにそう言うと、フロアから1人の美少女が現れる。


 ウェーブがかかった青髪のミディアムヘアに、気だるそうなタレ目の美人。はいている制服のスカートは短く、羽織っているファミレスの制服がほぼ覆い隠している。


 その女性を見た瞬間、拓海の脳内に衝撃が走った。


(えっ、この子……原作で2人目のヒロインじゃ……。まさか芹菜の友達って……)


「あ、どもー。よろしくっす」


 芹菜の友達であり、拓海にとっては原作で2人目のヒロイン――七海ななみ 葉月はつきは気だる気に拓海と普人に挨拶を交わした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る