第6話 妹と母親の好感度をどんどんあげてしまう

 今後何かあったときに連絡を取り合えるよう、安城 希美と連絡先を交換してから拓海は帰宅した。


「あっ、兄貴おかえり~」


 リビングに入ると、妹の芹菜がソファーでスナック菓子をつまみながらスマホをいじっていた。


「おう、ただいま芹菜」


 拓海は手洗いうがいを済ませると直ぐに家事に取り掛かる。まずは夕飯づくりからだ。とはいえ、朝に3人分の朝食と弁当を作ったままなので洗い物が溜まっている。


(うわぁ……めんどくさいけどまずはこれを片付けないとだよな)


 と、拓海が大量の洗い物に辟易していたときのことだ。


「これはアタシが片づけるから、兄貴は夕飯作りなよ」


 なんと先程までソファーでダラダラしていた芹菜が裸足でペタペタと歩いて来て、シンクに溜まった食器を洗い始める。


(芹菜……)


 拓海は驚いていた。なぜなら芹菜は原作で家事をするのは大の嫌いだし、怠惰な性格と描かれているからだ。


 そんな芹菜がソファーから起き上がり、洗い物を始めたのだ。


「芹菜、助かるよ……! ありがとな」


 拓海はそう言って芹菜の頭をわしゃわしゃとなでる。


「あぅ……べ、別にこのくらいアタシだってやるし……」


 昨日は恥ずかしがって拓海の手を払いのけていた芹菜だが、彼のされるがままに頭をなでられている。むろん、洗い物の最中だからというのもあるだろうが、拓海に心を開き始めているのだろう。


「それより、今日の夕飯なに?」


「あぁ、今日はオムライスを作るよ」


 拓海はそう言ってスーパーで買ってきた卵や玉ねぎ、そしてひき肉と言った具材をエコバッグから取り出していく。


「……!?」


 芹菜の表情が一瞬ぱぁ……! っと輝いたのを見て、拓海はニヤリと心の中で笑みを浮かべる。


(オムライスが芹菜の大好物であることは、原作知識で知ってるからな)


「芹菜……もしかしてオムライス好き?」


「………………! …………うっ、うん」


 最初は自分の反応を恥ずかしがって無言を貫いていた芹菜だったが、やがてコクっと首を縦に振る。


 そんな可愛い妹の頭を、再び拓海はなでるのだった。


 ◇


 妹と2人で夕食を終え、お風呂に入ってから拓海はリビングのソファーでくつろいでいた。ちなみに芹菜は現在、彼の肩に頭をのせて眠っている。


 そうしていると玄関が開く音が聞こえ、1人の女性がリビングに入って来た。


「はぁ、ただいまー」


 疲れた様子で部屋に入って来たのは、母親の里奈だ。


 獅子堂 拓海の母親は原作では登場していなかったが、かなりの美人だった。髪を派手に染めており、ファッションもなかなか派手である。


「母さん、今日もお仕事お疲れ様。夕飯作っといたから、お風呂出たら食べてよ」


「えっ、拓海、今日も夕飯作ってくれたの……?」


 昨日――拓海がこの世界に転生してきた日だ。彼は休日だったこともあり、朝昼晩の食事を作った。それだけでも母親は驚いていたのだが、流石に学校の日まで家事をするとは思っていなかったのだろう。彼女は驚きの表情を浮かべている。


「うん、母さん仕事で疲れてるでしょ? 今まで迷惑かけてきた分、これから家のことはやるからさ。ゆっくりお風呂に入って来てよ」


 拓海がそう言うと、里奈はバッグをその場に落とし、拓海に抱き着いて来た。


「拓海……!」


「えっ、ちょっ、母さん……!?」


 里奈は拓海に抱き着いたまま泣き崩れてしまった。


「うっ、うぅ~」


(きっと今まで相当な苦労をしてきたのだろう)


 そう思い、拓海は母親の背中を優しくなでる。


 やがて芹菜が目を覚ましたのか、「うにゃぁ……」とまるで猫のように伸びをした。

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