第2話 担任の美人教師からの好感度があがってしまう。
自宅でひげをそり、美容院に行って髪をカットしたり黒染めをしたりした次の日。拓海は満を持して高校へと登校した。
(さすがは作品の中の世界だ。アニメみたいに色んな髪色の人がいる)
そしてラブコメの世界だからだろう。女子生徒は美少女ばかりだ。おまけにみんなスカートの丈は短く、高校生とは思えないほど肉付きのいい太ももを惜しげもなくさらけ出している。
と、作品内の学校に驚きながら校舎に入ると、廊下で知っている人物と遭遇する。知っているというよりは獅子堂 拓海の記憶と原作知識を合わせて理解できるという感覚だが。
スーツを着ており、下はタイトスカートに黒タイツという格好をした美人な大人の女性。腰のあたりまでまっすぐに伸びる
「氷上先生、おはようございます!」
「ん……? 誰かと思ったら獅子堂か。いや、見違えたな……」
クールでリアクションの少ないキャラである玲子が驚いている。それほど拓海の容姿の変化は大きいと言うことだろう。
「一体どういう風の吹き回しだ?」
「今日から気持ちを切り替えて、真面目にやって行こうと思って……今まで迷惑かけてばかりですみませんでした」
「……そうか」
それだけ言うと、玲子は背を向けてしまう。
(やば……黒髪ショートの獅子堂めっちゃタイプなんだが……って、生徒相手になに考えてんだ私!)
むろん、玲子がそんなことを心の中で考え、頬を赤らめていることなど知らない拓海はというと……。
(まぁ、いままで獅子堂 拓海は先生にも迷惑ばかりかけて来ただろうからな。そう簡単に信じてはもらえないだろう。よし、もっと氷上先生からも信用してもらえるように真面目にやっていこう!)
そんなことを考えていた。
ちなみに担任の氷上 玲子も原作ではヒロインキャラである。冷徹で生徒達から恐れられている美人教師が、なぜか俺にだけ可愛い姿を見せてくる……という感じで主人公のハーレムに加わる。
むろん、現時点で玲子は主人公ではなく拓海に心を奪われてしまったわけだが……。
◇
やはり学校では、クラス中の生徒達が拓海の変化に驚いていた。
もともと不良として恐れられていたため話しかけてくる生徒はあまりいなかったが、女子生徒たちの間では不良が爽やかなイケメンに変貌した話題で持ちきりだったとか……。
「よし、それじゃあ今日は席替えをするぞ」
その日最後の授業。玲子のその一言で拓海は重大なことに気が付く。
(これ、プロローグのシーンだ!)
原作はクラスで席替えが行われるシーンから物語がスタートする。
そして主人公は獅子堂 拓海の後ろの席になってしまい、彼に絡まれるようになるという始まりだった。
(ということは、俺の後ろの席は主人公になるわけだな)
拓海はこの世界では主人公と仲良くなろうと考えていた。
獅子堂 拓海は主人公をバカにしたりしてヘイトを貯めることがトリガーとなってざまぁされることになる。
――なら逆に仲良くなれば、このストーリーの摂理を崩壊させてざまぁを完全回避できるのではないか……。
もちろん完全に関わらないという方法もあるが、物語が始まるよりも前から主人公に嫌われているという恐れもある。拓海は念には念を入れることにした。
席替えはくじ引きで進み、拓海は自分の新しい席へと机を移動させる。そして後ろの席にも机が動かされてきたようなので、主人公に話しかけるべく振り返るのだが……。
「よろしく、イケメンな不良くん」
(えっ……?)
後ろにやって来たのは、ピンク髪ツインテールの美少女だった。
(なんで主人公じゃないんだ? まさか、俺が色々変えようと行動したからバタフライエフェクトが起こってしまったのか? なにかしらの力が働いて未来が変わってしまったんだ)
そして、さらに彼はあることに気が付く。
(この美少女、超危険ヤンデレヒロインの
物語終盤、獅子堂 拓海にはこのヒロインからナイフで刺されるというざまぁ展開が待っている。
「あぁ……よろしく犬神さん」
(絶対に……絶対にこのルートだけは回避する!)
拓海はそう心に誓う。
そして原作と乖離した物語が今、完全に幕を開けたのだった――
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