「会話文を書くとき、もっとも大事なことは……」
小説において鉤括弧「 」付きの会話文は必須というものだろう。
中には――たとえば、純文学においては――「 」付きのセリフが一切なく、ひたすら意識の流れを紡ぐものもあるかもしれないが、キャラクターやストーリーを楽しませるエンターテインメント小説において「 」付きのセリフは絶対に必要だ。
そうした会話文を書くとき、もっとも大事なことは……
――そのセリフが誰のものなのか読者に誤認させないこと(ただし、敢えて誤認させる叙述トリックは除く)
である。
実は簡単なようでこれが難しい。特に登場人物が多い時、誰のセリフかをわかりやすく書くのはかなりテクニックを要する。
どうしたらうまくセリフの主がわかるように書けるのか
いろいろと考えてみよう。
まずは会話文の基本文型(大げさに言っているが筆者が勝手に「文型」と言っているだけである)を考える。
主語(セリフの主――発言者)を明らかにした書き方だ。
ここでは主語を「山田」としている。
なお、文型の命名は筆者の独断だ(笑)
①小学校で教える基本型
「先生、おはようございます」
と、山田は言った。
②セリフ先行型
「先生、おはようございます」山田は言った。
③発言者先行型
山田は言った。「先生、おはようございます」
④挟み鉤括弧型(発言者出しゃばり型)
「先生」山田は言った。「おはようございます」
一つずつ見ていこう
①小学校で教える基本型
まず最初に「 」で囲まれたセリフがあり、改行後、発言者を示す地の文がある、という形だ。
なお、「と、」の部分は省略することもある。その場合は、
「先生、おはようございます」
山田は言った。
となる。
②セリフ先行型
「 」で囲まれたセリフがあり、そのまま改行せずに発言者を示す地の文が続く。
「先生、おはようございます」山田は言った。
もしセリフの直後改行したら、
「先生、おはようございます」
山田は言った。
となり、①の「と、」を省略したのと同じになる。
この①と②が本来の日本語の表現だと思われる。
次の③と④は外国語の表現を日本語として取り入れたものだと筆者は思っている。
③発言者先行型
はじめに発言者を示す地の文があり、改行せずに「 」つきのセリフがある。
山田は言った。「先生、おはようございます」
実はこの 主語――動詞――節 の並びが英語をはじめとする外国語の並びなのだ。
本来日本語にはこのような表現はなかったのではないか。
④挟み鉤括弧型(発言者出しゃばり型)
「先生、おはようございます」を分断して「山田は言った。」という地の文を無理に押し込め、あたかも鉤括弧が二つ地の文を挟むかのように並べた技法だ。
見方を変えると、発言者が出しゃばって会話文に割り込んだようにも見える。
「先生」山田は言った。「おはようございます」
改行せずに一気に書く。こう書くことで、二つのセリフが同じ人物(山田)から発せられたことになる。
もし改行してしまうと、
「先生」山田は言った。
「おはようございます」
となり、あとの「おはようございます」が山田の発言なのか、声をかけられた先生の発言なのかがわからなくなる。
この挟み鉤括弧型は、主語をはっきりさせることにこだわる外国語に非常によく見られる。むしろ外国語特有の表現といって差し支えない。
日本の小説でもこの形式を当たり前のように使うようになっていて、筆者も好んで用いている。
何となく、カッコいいではないか(笑)
以上を踏まえて、実際に使ってみて考察してみよう。
――続く――
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