「ここで一旦、文豪の原稿を見てみよう」

 著名な作家は小説を原稿用紙に記す際に鉤括弧をどのように配置しただろうか。

 果たして文末に句点を書いただろうか?

 文頭は字下げして会話文を書いただろうか?


 気になったからちょっと見てみよう。


 まずは『人間失格』太宰治。

https://kakuyomu.jp/users/hakusuya/news/16818093075523576825


 鉤括弧は字下げせず始まり、句点付き括弧閉じ。

 しかしそれが書籍化されると句点なしの括弧閉じになる。

 句点を省くのは出版社なのか?


 次に『門』夏目漱石と『鼻』芥川龍之介。

https://kakuyomu.jp/users/hakusuya/news/16818093075584976542


 どちらも字下げして鉤括弧なのだが、二マス目にもう字が入っている。

 鉤括弧はマスの角をなぞっているだけだ。

 括弧閉じもマスの角をなぞるだけ。

 漱石は句点なしの終わり鉤括弧。

 芥川龍之介は句点ありで括弧を閉じるが、句点が最後の文字と同じマスに入っている。

 さらに芥川龍之介の場合、文の途中と判断されれば句点なしで括弧を閉じている。


 おそらく昔は会話文も字下げしていたのだろう。しかし二マス目に字がある。鉤括弧はマスの中に書かれず、外枠の角をなぞるかたち。


 しかしそれでは印刷の時に手間がかかるのかもしれない。鉤括弧が一文字になっていた方が原板を組みやすいのかもしれない。それで一マス目に鉤括弧が入り、字下げがなくなったのかもしれない。


 角川はそれでも字下げにこだわった――のかもしれない。昭和の時代まで字下げして会話文を組んでいたのだから。


 ほんとうのところはよくわからないけれどね。


 追記


 川端康成は字下げしてさらに鉤括弧に一マス使っている(笑)

https://kakuyomu.jp/users/hakusuya/news/16818093075586161553


 芥川龍之介の『鼻』

 青空文庫で書籍化されるとなぜか「 」が――に変わっている(笑)

https://kakuyomu.jp/users/hakusuya/news/16818093075586406362






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