第14話 船が城に突き刺さってる

「痛い!!!」

 城の中に半分入った船から飛び降りる。部屋の中はひどい有様だった。がれきを踏み締める。人の気配はない。城に突っ込む前に、全員逃げたようだった。安心して、ほっと一息つく。

 すると、足音がした。一瞬、自分が死んでいてお迎えが来たのかと思ったが、足音は下の階からだったので少なくとも天国ではない。

「あ、生きてた」

「良かったよ〜!」

「お前ほんと運だけはいいな」

「心配してくれる人が一人だけってどういうことなの」

 こいつらも一発殴っておくべきか。忘れていた時計を返す。

「大丈夫だった?」

「服がびちゃびちゃで気持ち悪い」

「そうじゃない」

 階段を降りていくと、他の人たちも集まっていた。

 全力でパン屋さんが駆けてきて、折れそうなほど抱きしめられる。

「フレアちゃん! 怪我は? 折れてない? もげてない?」

「今もげそうです」

 彼女のキスの嵐は止みそうにない。その上人が集まってきた。公開処刑だ。

「いやぁ、船が落ちてきた時は驚いたよ」

「墜落してきたのに気づかない馬鹿も多かったけどね、そりゃあもちろん、心が広いから助けてやったんだ」

「船って飛ぶんだね・・・・・・」

「全員避難したから全員無事だよ」

「はははすごい偶然ですねー」

 しらばっくれていると、所長にこっそりと聞かれた。

「フレア、墜落はわざとか?」

「ノーコメントで」

 軽く頭をはたかれる。仕方なかったんですよ。

 城の外に出ると、船が突き刺さっていた。

「城に船が刺さってる・・・・・・」

 人生で二度と言わないだろう。

「やったのは君だよ」

「はい知ってます」

 皆は船を下ろすべく、繋がったロープを持って引っ張ろうとしているようだった。これまた衝撃的な光景だ。

「まあ、俺らは造船所に戻るよ」

 職員のほぼ全員が、すでに帰路につき始めていた。

「もう!?」

「誰のせいで作業が滞ってるって?」

「船作るばっかじゃないんだよ」

「考え直せ」

「じゃあまた後で」

 正論パンチを決めに決められ、ぐうの音も出ない。私の肩にリーベさんがポンと手を置いた。

「そんな日もあるよ」

「こんな日ばっかだよ・・・・・・」

 悲しい。私の周りは理論武装マンでいっぱいだ。

「私も造船所へ戻るよ。フレアはどうする?」

「アレに会いにいくよ」

「場所わかるの?」

「あいつに道徳心があるなら場所わかる」

 多分ね、と保険をかける。

「・・・・・・うん、まあ、気をつけてね?」

「ありがと」

 彼女に手を振った。

 そのまま人混みを避け、城の裏手に回る。獣道には、さっき私が通った時のものとまた別の足跡があった。

 大きな歓声と地響きがする。船は城から下ろされたらしい。それを尻目に、丘へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る