豹変

「、、、る、、、、ね、、、、る」



「おや?寝言ですか?、、、んんっ、あん?どうしたんだ、クソガキ。お漏らしでもしたか?」




私が報告書を書いている後ろで気づくとホーラ君が寝言を言いながら起き上がっていました



「、、ねる、、、ねる、、ねる」




「ねる?」




耳を澄ましてみました




「死ねる死ねる死ねる死ねる死ねる」




私は思わず立ち上がりました




死ねるとはどういうことでしょうか




まさか、団長が言ってたおかしいところってこれですか?




すると、俯いていたホーラ君の顔がおもむろにこちらを振り向きました





「、、、お姉さん?僕を死なせてくれる?」




寝る前のホーラ君からは想像もつかないようなねっとりとまとわりつくような猫撫で声




正常とは言い難いほどに口角を釣り上げた笑い顔





まるで何かに取り憑かれているようでした





「なっ、何言ってやがんだ!ふざけてねぇでさっさと寝やがれ!」




「、、、ふーん、つまんないねぇ、つまんないつまんないつまんない、、、」




思わず息を呑みました




これはあまりにも、おかしすぎました




そして気づくと私の目の前にいました




私とホーラ君の寝床との距離はそこまで近くはありません



なのに私の意識の隙をついて?




「つまんないんだよ、何もかも」




その言葉と同時に腹部に衝撃が走りました



壁に叩きつけられて、やっと自分が攻撃されたことを知りました



あれはおそらくボディブロー?



「ぐはっ!、、、何しやがんだ!」




「僕のこと死なせてくれないなら、死ねよ」




一気に距離を詰めてきたホーラ君は右拳を振り上げていました




「やられっぱなしなわけねぇだろ!」




その拳を避けると同時に両膝の裏を蹴り、ちょうど膝カックンのような形でしゃがませました





「ふふふ、やっと殺してくれるんだね?嬉しいなぁ嬉しいなぁ、嬉しいなぁ、、、、、次僕が出てきたら、ちゃんと殺してね?この子のためにも」




そこからの言葉が聞こえなくなりました




耳を澄ますと聞こえてきたのは寝息だけでした




「、、、まさか、寝た?」




すぐさま抱き抱え、寝床に連れて行きました




「おう、ペルス、帰ったぞぉ」




「隊長!?」




振り向くとニヤニヤした顔の隊長がいました




「言った通り、ちとどころかかなりおかしいじゃろ?トラウマとかとは別次元なんじゃよなぁ」



「隊長は知っていたのですか?」



「まぁ、ゆうても2回程度じゃがな、」



「この事はホーラ君は知ってるのですか?」



「んー、おそらく寝相みたいなもんで本人には全く記憶がないみたいなんじゃよ。性格まで変わっちまう癖にのぅ」



「えぇ、驚くほど幼くなりました」



「んっ?幼く?」



「えっ?隊長なときもそうだったのでは?」




「いや、わしの時はまるで武人のような性格になっておったぞ?」




「それって、、、」




「おそらく多重人格かのう、、、とりあえずホーラを起こさぬようにすり合わせしようかの」



「わかりました」






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