第16話 統治3
「後必要なのは、なにかな……」
「布が欲しいですね。蚕や麻などを今から調達するのは難しいので、糸を産出する
嫌な予感しかしないんだけど。
「人口糸は作れませんか?」
「う~ん、工場が必要ですね~。それに材料を手に入れるのが面倒です」
材料か……。まあ、任せよう。ナイロンとかからと思っていたけど、現地調達できるのであれば、科学技術に頼る必要もない。
そう思ったんだけど……。
「なんですか、そのデカい
「蜘蛛の
もう、言葉も出ないよ。
瀕死の蜘蛛が、運ばれて行く……。
それと、革製品が出回って来た。皮の加工に、お茶の葉が必要らしい。それくらいは聞いたことがある。
蜘蛛糸を使った布と革製品だけで、衣服は十分なのかな?
◇
とりあえず、衣食住が足りて来た。
住民も働き出した。まあ、働かずにアパートでのんびり過ごしている奴もいるけど、今は放置しておこう。
貨幣が使えるようになったら、食料は有償化しようと思う。
格差が生れそうだけど、仕事を斡旋かな。働かざる者食うべからずだ。
次の仕事を考えていると、ナユさんに呼び止められた。
「雨……ですか?」
「はい、この大陸自体が、降水量が少ないので、このまま行くと、山火事が発生しますね」
確信的だな。まあ、アカシックレコードからの情報なんだろうけど。
「低気圧でも作りますか?」
「作ってもいいですか?」
かなり怖いけど、任せても大丈夫かな? やり過ぎないことを祈ろう。
次の日に雨が降り出した。
だけど、これじゃ台風じゃない?
「もうちょっと雨量を抑えましょうよ」
「う~ん、近くに存在した雨雲を引っ張って来たのですが、これで一年分の水量を賄えるでしょう」
「ダムでも作りましたか?」
「察しが良くなりましたね。川の上流に天然のダムを作っておきました。まあ、湖と思ってください」
考えなくても、ナユさんの行動が分かるようになって来た。
ナユさんは、私の想像したモノを作っている。やり方が、かなり強引だけど。
でも、蚕の替わりに蜘蛛ってどうなのかな……。
つまるところ、私の知識量以上の技術は作れないみたいだ。未知のダークマターとかは、操れないと思う。
それと、アカシックレコードだな。私も慣れておこうと思い触ったのだけど、閲覧制限があったよ。特に未来の情報は、教えてくれなかった。
だけど、現在の情報であれば、ほぼ制限がない。反乱分子など、末端に至るまで情報を掴んでいる。
それと、飛空艇の技術だな。
「この超小型核融合炉も、私がアニメで得た知識を元に作られているんだな……」
核融合は、温度が高すぎて炉が作れない。タングステンでさえ三千℃だ。一億℃で固体状の物質はなかった。
レーザー方式やプラズマ方式が採用されていたけど、エネルギーを取り出せていなかった。温度が高すぎて、タービンを回せないよね。
この飛空艇の知識は、未来の技術だ。前世に戻れたら、ノーベル賞も夢じゃない。
こんな、方法があったんだな~。
それと未来の技術は、核融合だけじゃない。
私は、昆虫から作られた代替肉を食べて、オレンジジュースを飲んだ。昆虫食も美味しいかもしれない。
「一口目の勇気かな~」
◇
順調に時が過ぎて行く。そう思った時だった。
「うん? 元勇者ユウキが来たの?」
「はい……。果たし状を預かって来ました」
要は、私と決闘をして勇者の称号を取り戻したいらしい。
受ける必要はないと思うんだけど。
「
「四層の魔物にボコられたみたいです。
私が攻略者になると、雑魚
つまるところ、もう
改良は、壊されてからでもいいだろう。今は放置にする。
「ふう……、
城壁の外に出ると、元勇者ユウキを名乗る者がいた。
体中、包帯だらけだな……。
その元勇者が、剣を向けて来たよ。
「一騎打ちだ! 逃げるなよ!」
どうすっかね……。アイ○ンマンスーツでも着ようかな。
だけど、次の瞬間に元勇者ユウキの剣が、折れた。
「ナユさん? 一騎打ちだよ?」
「受ける必要はないですよ。後ろで、残り少ない銃と弾丸を持ちながら、言っているのですから」
後ろの取り巻きどもが、不意打ちを狙っていると言っているのか。
〈スキル:複製〉を失った元勇者。
求心力もなさそうだな。
私が『アタッカー』を前面に出すと、取り巻きどもが降伏した。
残りは、元勇者ユウキだけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます