第15話 統治2

 私はまず、開けた草原を探した。


「ここがいいかな? 誰もいないし、海も近い」


 一面の未開拓地。日本というか私の住んでいた地域にも、こんな風景が欲しかったよ。

 研究所は何処も利便性の良い地域に作られていた。


「それでは、工作機械を降ろして、家を作りましょうか」


「お願いしますね」


 まず、採掘から始めた。鉄や砂などの建築素材を集めることからだ。

 工作機の『クラフト』を複数投入することで、半日で必要な素材が集まった。


「城壁を築いて、地面を固めて、建物を作る……。これなら3日くらいで新しい街ができそうですね。上下水道さえ完備させれば、後はどうとでもできます」


 なんとなく、古代の都市を希望してしまった。城壁は欲しいと思っている。だけど、素材は近代になりそうだ。鉄筋コンクリートだな。

 『クラフト』は、私の知識を吸い取っているんだな。私のイメージしたモノを作ろうとしている。


「もっと『クラフト』を作れば、短時間で済みますのに。数を増やしましょうよ」


 急ぐ理由もないし、十分じゃない?





 3日で鉄筋コンクリート製の街ができた。十万人は住めそうな広さだ。城壁もあるので籠城も可能だな。

 家って言ったんだけどな~、城になってない? それと、防御力高すぎじゃない?


 『クラフト』は、畑を作り始めた。

 まず、穀物とか大豆を作るんだそうだ。これは、私の知識からの希望なのかもしれない。

 私は、城を作ったら次に畑を望んだんだな。『衣食住』の順位が、変わっているかもしれない。


「セイさん、川の流れを変えたいのですが……」


 ナユさんは、現場監督になっている。その体にヘルメットって必要なの? 突っ込まないけど。


「とりあえず、井戸を掘りましょうよ。そんなに人が住むわけじゃないんですし」


「いずれ必要になりますよ? まあいいです。浄水場の建設から始めますね」


 水道水が飲めるのは、日本くらいなんだよね。塩素による殺菌でも行うのかな?



 次は家畜だった。

 『スカウト』、『アタッカー』、『ガーディアン』が野生の動物を捉えて来た。

 主に、牛・猪・羊・鳥だな。兎もいる。

 昆虫も食料にするんだそうだ……。見た目だけでも手を加えて欲しいな。


「フードテックですよ? 食料の増産とロスをなくしましょうね~」


 フードテックってそんな意味だったっけ?


 売れる品ができたら、第十大陸オクトバーの街に売りに行こうと思ったんだけど……、難民が来た。

 今は内乱状態だもんね。こんな建築物が建てば、そりゃ来るか。

 目立っているよね。


「受け入れるのですか? 密偵が含まれていそうですけど……」


 密偵の一人二人で、どうこうできる街じゃないと思うんだけどな~。『スカウト』、『アタッカー』、『ガーディアン』が多数徘徊しているんだし。


「とりあえず、会ってみますね」


 私は、城壁の外へ出た。

 難民を率いている代表者が出て来たよ。


「新しい勇者様で、間違いございませんかな?」


「はい、そうなります」


 周囲が、ザワザワし出す。


「何故、この大陸を統治なさらないのですか? 内乱になってしまいました」


「私は戦わないで統治しようと思っています」


「……はい?」


 理解してはくれなさそうだ。

 とりあえず、私は難民を新しい街へ招き入れた。


「ナユさん、住宅の整備をお願いしますね」


「集合住宅にしましょうか。住人が押し寄せて来そうですし、新たに高層マンションを建設しますね」


 どうやら私の住んでいたことのあるマンションに似せた作りにするらしい。そう言えば、私にも優遇されていた時代があったんだな~。

 それとここは、異世界なんだけどな~。こんな建物を作っていいんだろうか?





 とりあえず。食料からだった。難民を受け入れたらそうなるよね。

 畑はまだ実っていないので、海産物で凌いで行く。

 それと、昆虫食だ。原型が分からなければ、皆抵抗なく食べている。代替肉や穀物の替わりになるんだな。

 前世の料理が再現されると、受け入れた難民が涙を流して食べ出した。

 私も食べてみたけど、美味しい以外の言葉が出ない。私もコンビニ食だったからな~。

 この生活は、嬉しいかもしれない。


 病人がいたけど、〈抗生物質〉を与えたら沈静化した。事前に医療施設を作ってくれていたのが大きい。飛空艇で製造も可能だ。

 危ない危ない。飢餓状態で疫病が流行ったらアウトだった。

 とりあえず、バストイレ付きのアパートに住んで貰ったけど、使い方が分からなかったらしい。

 水洗トイレとシャワーの使い方だね。教えたら、彼等の匂いも改善された。

 衛生面の管理は重要だよね。



 何処から噂が広まったのか、難民が毎日来るようになってしまった。私は、差別せずに受け入れる。

 とりあえず、私は武器を取り上げるだけで、街に受け入れることにした。


「セイさん、水が足りなくなりました」


「う~ん。井戸では足らないですか……。川ですか?」


「欲しいですね~」


 ここまでの人数になると、水が足らなくなったか。

 ナユさんの話を聞いて、事前に川を引けば良かったな。


「お任せしますね」


「短期間で作りますね」



 ナユさんが、飛空艇で飛び立った。

 直後に、大爆発が起こる……。台風みたいな風と、砂埃、それと地震が起きた。


「ごほ、ごほ……。今の光はなに?」


『陽電子砲です。地面を抉りました』


 頭にナユさんの声が響く。

 ハイパー・メガ粒○砲? ローエ○グリン? タ○ホイザー? (げふん、げふん)


 陽電子砲の名前よりも、山が蒸発してんだけど?

 その後、陽電子砲の痕が川となり、水問題が解決した。川ってこうやって作れるんだな……。強引すぎない?

 だけど、全部計算されていそうだ。


「私は、武力以外で統治しようと思ったけど、それ以上になってない?」


『捉え方は、人それぞれです』

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