第14話 統治1

 飛空艇に帰って来た。

 スカイウォーカーは便利だな。短時間で済む。前世では、お金がなかったので航空業界とは関われなかった。

 『スカウト』『アタッカー』『ガーディアン』『クラフト』は、自力で帰って来るのだそうだ。戻って来たら、何か作ろうと思う。


 とりあえず、聞いてみるか。


「なんで急いでいたんですか?」


「セイさんが、〈勇者の称号〉を新しく得たからですよ? これで、第十大陸オクトバーの〈勇者の称号〉は、セイさんのモノになりました。新しい技能スキルや魔法が手に入ると思ってください」


 あれか……、ダンジョンを踏破した時に、私が貰ったしょぼい技能スキル。まだ活躍の場がない。

 第十大陸オクトバーの〈勇者〉は、〈複製〉で、弾丸を生産していたんだったな。

 でもそうなると……。


「もしかして、私を倒すと〈勇者〉に認定されるのですか?」


「そうなります。現在、称号2個持ちの〈勇者〉ですね」


 それで迷宮ダンジョンの入り口に人がいたのか。

 だけど、不思議に思ってしまう。


迷宮ダンジョンの四層を踏破しただけで、〈勇者〉交代ですか?」


「前任の『勇者:ユウキ』は、四層のモンスターを倒した時点で引き返しました。セイさんは、その時よりも討伐時間が短く、宝箱からより良いアイテムを手に入れたので、〈勇者〉交代となったのです」


 ……緩い条件だな。


「それで、第十大陸オクトバーに住む全員に知られたと?」


「そうなります。暴君だった元勇者ユウキは、もう弾丸を複製できません。弾丸が尽きた時点で、住民に殺されそうですよね」


 どんな政治体制だよ。

 手下も見限りそうだな。


「う~ん。私が元勇者ユウキを確保しに行った方がいいですかね?」


「なにも得るモノがありませんよ? それよりも、狙われる方が危険ですね」


 こんな、アイ○ンマンスーツ着てて、危険なんてあるのかな?

 忘れていたので、アイ○ンマンスーツを脱ぐ。


「ふう~。これから革命か……。見ているだけでいいのかな~」





 第十大陸オクトバーが、荒れ出した。

 貧民層が反乱を起こし、第一次産業が荒廃した。

 食料の供給が滞り、飢餓が広がって行く。


 元勇者ユウキは、迷宮ダンジョン探索を行おうとしているけど、妨害に会い進んでいない。

 誰もあの暴君の再来を望んでいないみたいだ。


第十大陸オクトバーは、二つに割れていますね。迷宮ダンジョン攻略か、〈勇者〉の捜索か……」


 今私は、海上にいる。第十大陸オクトバーからは、大分離れている場所だ。まず、見つからないだろう。


「〈勇者〉は、体に紋様が現れますからね。セイさんの場合は、右手や左手の甲ですね」


 自分の右手の甲を見る。なんか光っているんだけど?

 目立つな~これ。手袋しようかな……。


「混乱を起こす気はなかったのですが、どうにかなりませんかね?」


「隠すつもりですか? セイさんが、王様を名乗れば、皆従いますよ? ちょっとした強制力ですね。ですが、異世界人には効きません」


 そんな特権があるんだ?

 でも、私が王様か~。やる気ないな。


「自由経済主義で……」


「そうですか……」



 第十大陸オクトバーが、内乱状態になった。特に元勇者ユウキだ。また一大勢力を築き始めた。

 権力をなくしても求心力はあるのか。

 銃器なしでも、強いんだな。


「次の大陸に行くか、王様として、ここで君臨するか……」


「迷っているのですか? 王様になればいいじゃないですか?」


 まあ、放置はできないか……。〈勇者〉には、大陸の統治の義務もあるみたいだし。


「今までの歴史が知りたいですね……」


 そう思うと、目の前のウィンドウが動き出した。

 情報が表示されて行く……。


「……多くは、武力でもって支配するんですね」


「どの道、武力は必要ですよ? 迷宮ダンジョン攻略を進める必要もありますし、異世界人が来たら王様を狙って来ますしね。現地人でも、迷宮ダンジョン攻略は、人気があるので、元勇者ユウキみたいに遊んでいると、王権を奪われてしまうんですよ?」


 元勇者ユウキは、この世界に来て短そうだな。

 それと、ナユさんみたいなブレーンがいない。未来の展望もないんだろうな。


「あの神様は、なんて言ってたっけ……」


「世界を平和に導いて欲しい……、ですね」


 面倒以外の言葉が出ないよ。

 さて、どうすっかな~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る