第11話 情報収集とスキル生成

 今私達は、飛空艇に戻って来た。

 そして、まずは情報収集から始めた。


「〈勇者〉の名前は、ユウキか……。日本人ぽいな」


 ナユさんに聞いたのだけど、前世の情報は出せないと言われた。個人情報の保護?

 この飛空艇は、オーバーテクノロジーの塊だけど、制約もあるんだな。

 まず、〈勇者〉の素行調査を行う。


 彼は徴収と言って、物資を奪う事しかしていなかった。

 〈勇者〉に従う者は、富んで行き、搾取された方は人里離れた場所で隠れて生活しているんだな。

 餓死者も出ている。

 あの港町は、〈勇者〉のお膝元だったみたいだ。それで、発展していたのか。

 だけど、他の街は滅びかけている。

 〈勇者〉を避けて、野山に隠れ住んでいる人達もいるのが分かった……。


「……随分と好き勝手してるな~。まるで、暴君だ」


「コンキスタドールそのままですね。ダンジョンを探索後、〈勇者〉の称号を得てから技能スキルが飛躍的に向上しました。その後、各地の領主や兵士を虐殺しまくって、小さいですがこの大陸を制圧しました。現在は、征服者として恐れらています」


「……弾丸の〈複製コピー〉は、確かに有効ですね。制圧はまあいいですけど、政治が滅茶苦茶だ。搾取しかしていない。もうすぐ、この大陸の第一次生産業が破綻しそうだ」


 畑に火を放つ為政者とか理解できない。自分の手足を食べていると感じないのかな。

 奪う物資が尽きたら気が付くのか?


 それが、宴会をしている〈勇者〉を見た、私の感想だった。


「あれは最弱ですが、あのような、〈勇者〉や〈魔王〉が他に9人います。戦争が再開された場合は、この大陸は最速で負けるでしょうね」


 アホなのかな。

 休戦中とはいえ、内政を破綻させる意味を感じない。

 いや、他の〈勇者〉や〈魔王〉に服従すれば、先兵にはなれるか……。

 スキルの〈複製コピー〉は、優秀な頭脳となる参謀がいれば、化けるはずだ。


 まあいいや、私も〈勇者〉なのだし、『勇者:ユウキ』と敵対する事が決まっている。

 ダンジョンを踏破してしまえば、彼の体制は崩壊すると思う。

 私の存在を知られていない今が絶好の好機であり、目の前には破綻しかけている国がある。

 盗ってくれと言わんばかりの状況だ。


「先に〈勇者〉の根城を叩くのであれば、銃弾の無力化が、理想的だな……。それとも、ダンジョンを踏破して『勇者:ユウキ』から称号を剥奪するか……」


 ハンドガンやライフル銃で満足している彼の思考が理解できない。

 あれで〈勇者〉なのだから、ダンジョンの難易度もたかが知れている。

 私は笑った。

 それと、ナユさんは、怖い笑顔だ……。





 十日が過ぎた。


「とりあえず、これで準備完了とします」


「十分すぎる、準備ですね。一方的な侵攻戦になりそうです。いえ、踏破してしまいそうですね」


 考えられるだけの準備はした。

 戦略レベルで、まず負けはないと思う。

 それと、確認だ。


「ナユさんがダンジョンに入ると、簡単に踏破できてしまいそうなので、警告が来ていましたよね? 今回は、私と『護衛』が潜りますので、飛空艇で待っていてください」


「まあ……、神様からの警告なので、従う以外にありません。どうか、お気をつけて……」


 ナユさんが、一礼した。


「それと、戦争が起きそうな場合は、邪魔してください。特に『勇者:ユウキ』の動向には、注意を払ってください。あと少しで、この大陸の体制を変えるのですけど、ここで無駄な時間は取られたくないのです」


 ……この世界は、システムとして戦争が組み込まれている。

 ならば、私はそのシステムを利用しようと思う。

 そして、ダンジョンを踏破して、〈勇者〉と〈魔王〉の称号を集めようと考えた。


「ナユさん。後天的に技能スキルを得ることは可能ですか? 欲しい技能スキルが思いつきました」


「まあ、セイさんはなにも持たずにこの世界に来たので、簡単なものであれば技能スキルを授けられると思います。最強系の技能スキルや魔法は無理かもしれませんが。神様に会われたのですよね? その時の契約次第と言うか……」


 技能スキルと魔法を得なかったけど、超高度な科学技術施設を手に入れたのは、カウントされていないんだな。

 私の口角が上がる。

 あの時の神様は、『無理のない範囲で付与します』と言った。

 それは今も生きていそうだ。



「……~という内容になります」


「……なるほど、その技能スキルであれば、付与可能ですね」


「神様からは、『平和に導いて欲しい』と言われました。その最適解になります」


 ──ピピ


 ここで、電子音が鳴った。

 その方向を見る。

 光学ディスプレイが、浮かび上がった。


『了承しました。技能スキルを付与します。神様より』


 準備完了だな。


「それじゃ、始めましょうか」


 私は、白衣を着た。これが私の戦闘服だ。

 そして、第十大陸オクトバーのダンジョンに踏み込んだ。

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