第7話 貰ったスキル4

 今、私は飛行船に乗り移動している。

 最高速度は分からないけど、とりあえず風景を楽しむことはできる。

 速度としては、ヘリコプター程度だと推測できるな。

 最高時速は……、怖いので聞かない。ワープ機能とか付いていそうだし……。

 そのうち分かると思う。そのうち……。


 しばらくすると、新しい大陸が見えて来た。それと人里が見えて来た。港町みたいだ。

 ここで疑問に思う。


「飛空艇は、この世界では珍しくはないのですか? このまま着陸すると、目立ってしまうと思うのですが。どうやって降りるつもりですか?」


『そうですね。それでは小型艇で上陸しましょうか。飛空艇は、このまま上空で待機させます。それとなのですが、セイさんには護衛を付けます。今のセイさんは、人類最弱と言って良いほどなにも持っていませんしね。護衛の製作完了まで、後一時間程度待ってください』


 そういえば、魔法のある世界だと言っていたな。

 今の私は、武器も防具もない。自衛手段がないのだ。銃とサバイバルナイフぐらいは持ち歩いた方が良いかもしれないな。

 いや、単純すぎる気がする……。初日に躓きたくない。


 時間はあるし、映像を望遠レンズに切り替えて、街の人達を観察してみるか。





 驚いてしまった。

 かなり発展していたからだ。物資もそれなりに流通していると思う。

 それと、常に武装している人達もいた。剣や槍だけど。


「これが、中世の世界観なのか……。前近代の気がするな」


 当たり前だけど、科学技術はなくても、文明は築けるみたいだ。

 そして思う。街の人達は、笑顔が多いと思う。

 私の前世の世界では、ゾンビのような顔で生活している人が多かった。私自信がそうだったし。ストレス社会……。

 そして、デジタル機器に振り回されて生活していた。


「コミュニケーションを取り、協力し合って生きているみたいだな……」


 少し羨ましくなった。

 それと、今度は裏路地を見てみる。

 裏路地には、粗末な服を着た人が、座っていた。

 特になにかをしているわけではなさそうだ。ただただ、うなだれている。


「……何時の時代も、社会に適応できない人がいるのは同じか。私も一歩間違えれば、彼らと同じだったんだろうし」


 ここで、ナユさんからの連絡が来た。


『セイさん、お待たせしました。格納庫まで移動してください』


 さて、行くか。

 私が立ち上がると、ドアが開いた。

 格納庫まで一本道ができ上がっている。先ほどの甲板までの道は塞がれていた。

 ここで思う。


「なにも考えずに、正解まで辿り着けるのは便利だけど、ナビゲーション機能も度を超すと精神に変調をきたしそうだな……」


 そんなことを考えながら、格納庫へ到着した。





 そこには、〈護衛〉が待っていた。

 アンドロイドになるのかな? それと体系は女性型だな、胸がある。身長は170センチメートルくらいだと思う。

 服装は、綿を使った厚手の生地だ。ただし、清潔感は出ている。

 先ほどの港町を見た時に見かけた人達と同じような服装……。多分だけど、この世界でスタンダードな服装なのだと思う。

 太ももが見える服装でなくて良かった。私は古い人間なので、ミニスカートとかは、目のやり場に困る。街中でのへそ出しとかは、神経を疑ってしまった。

 それよりも、私の服装だな。ヨレヨレのスーツだった。異世界では、違和感しかないと思う。


「セイさん。こちらの服を着てください」


 私が考えていると、目の前のアンドロイドからいきなり声をかけられた。

 そして、その声……。


「え? ナユさん?」


「そうですよ?」


 まじですか……。〈人工知能搭載の自立型アンドロイド〉か……。いや、〈万能AI搭載型〉か。

 驚いていてもしょうがないので着替える。

 時間の無駄だ。効率的に行こう。

 これで、外見だけでは、私が異世界人だとは分からないはずだ。





「それでは、移動しますね。こちらに乗ってください」


 ナユさんの指示した乗り物を見る。

 バイクのようだけど、タイヤがない? シートは二つあるけど……。

 私が考えていると、ナユさんが前の席に座りハンドルを握った。躊躇ってもしょうがないので、私も後部座席に乗る。


「私は、何処に掴まれば良いですか? バイクの二人乗りはしたことがないので知らないのですよ」


「クスクス。腰に手を回して体を密着させてください」


 多分他に方法があると思うけど、今は言われた通りに腰に手を回す。

 ナユさんの腰は細かった。モデルのような体系だと思う。そして、分かってしまった。


(骨格が金属だ。そして、人工筋肉と思われる組織は、人間とは比較にならない筋力が出せそうだ……)


 外見だけは、人族だけど、中身が違う。


「それでは行きますね。多少揺れますので落ちないでください」


 ナユさんが、そう言うとバイクが浮かび上がった。


「えっ? えっ? 何で浮くの!?」


 私の疑問を置き去りにして、空飛ぶバイクが飛空艇から発進した。

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