第5話 貰ったスキル2

 今私は、飛空艇から風景を眺めていた。

 体勢は、体育座りだ。


 落ち着こう…。落ち着こう…。落ち着こう……。

 念仏のように自分に言い聞かせていた。


「……ふう~」


 今考えなければならないことは、あの時の神様と話した内容だ。

 精神を落ち着かせて、思い返す。


「私が要求したのは、ラボ・電力・インターネット・人工知能・パソコン・資金と衣食住の保証、だったはずだ」


 ラボが飛空艇であり、家にもなると思う。この後、食料の備蓄確認が必要かな。飲料水も必要だ。

 電力は、何故か〈核融合炉〉。飛空艇に乗っていると思う。そうなると、〈超小型の核融合炉〉か……。作れるんだな。もう、漫画とかアニメの世界だよね。巨大ロボットも作れそうだ。


 人工知能とパソコンは、〈万能AI〉と〈量子コンピューター〉になりそうだ。

 そうすると残っているのは、〈インターネット〉と〈資金源〉だ。

 聞くのは怖いけど、聞かないと始まらない。


「〈万能AI〉さん。〈インターネット〉の検索はできますか?」


『それでは、先ほどの部屋に戻りましょうか。端末の使い方をお教えします』


 私は、重い腰を上げて先ほどの部屋へと向かった。





 指示されるがまま、椅子に座る。

 だけど、目の前にはテーブルしかない。

 ここで、テーブルの一ヵ所が点滅し出した。レーザーでも照射しているのかな?


『光に触れてみて下さい』


 言われるがまま、触れてみる。

 すると、ディスプレイが現れた。それも物理的ではなく、光学的なモノが……。

 ディスプレイに触れようとすると、手が突き抜けた。

 間違いない。SF映画とかで見る、実体のない光学映像だ。拡張現実どころじゃない。

 もう、脂汗が止まらない。

 あの神様は、なんというモノをくれたんだ。


『何を検索したかったのですか?』


 とりあえず、今調べなければならないこと……。


「地理が知りたいですね。それと、現在地も」


 私がそう言うと、ディスプレイの表示が切り替わった。

 次々に情報が表示される。

 これは、私の思考とリンクしているみたいだ。こうなると、キーボードもマウスも必要ない。

 私は、とりえあずこの世界の地理を頭に入れることから始めた。





「……惑星と考えて良いのですよね?」


『地球とほぼ同じと考えてください。地軸の傾きも近いです』


 ふむ……。ただし、地形が異なるな。

 北半球と南半球に均等に大陸がある。しかもその大陸が小さい。

 最大面積でも、オーストラリアくらいの大陸が、十個あるくらいだ。それと、島が多いな。

 この飛空艇の位置だけど、海の孤島に停泊しているみたいだ。前世地球で言うとハワイと言ったところかな? ハワイ島やガラパゴス諸島?

 とにかく、他の大陸とは離れた位置にいるみたいだ。


「ここは、第十一大陸ノベンバーですか? 他の大陸とは離れていて誰も来そうにないですね」


「はい、各大陸には、それぞれ、グレゴリオ暦の名が冠されています。まあ、霜月でもいいですよ? 翻訳しますので」


「第十二大陸が見当たりませんね?」


「今は、神様により隠されています。望みを叶えた者のみが辿り着けると考えてください」


「その望みとは、なんですか?」


迷宮ダンジョンの踏破です。各大陸に一個ずつあり、最奥まで探索した者に〈称号〉を与えています。そして、ほとんどの大陸でその〈称号〉を持つ者が統治を行っています」


 多分だけど、神様の願いを叶えた時のクリア報酬になるんだと思う。

 今は置いておこう。


 ここで、気象予報を見てみる。


「一年先まで、天候が分かるのですか? さすが、〈量子コンピューター〉だな……」


『いえ、〈アカシックレコード〉からの情報です。天候程度であれば、100年先までも見通せますよ?』


 ぐはっ!? インターネットじゃなくて、〈アカシックレコード〉ですか?

 あの神様、なにを考えてるんだよ。

 まあ良いや。驚いてばかりいても、精神に悪いだけだ。


「まず、この惑星の歴史を調べるか」


 そう思うと、要約された情報が表示された。時間の短縮にはなるけど、これでは楽しみがないな。

 まあ、いい。とりあえず、読んでみる。


「……複数の知的生命体ね。竜人に魔人に亜人……が多いと。人族もいるけど、個の力では劣るのか。迷宮ダンジョンの最奥の踏破階に到達した者に〈称号〉が与えられる? その称号が、〈勇者〉と〈魔王〉? それと、種族の領土獲得に貢献している? 戦争もあるのか? 戦争は嫌だな……。参加したくない」


『補足です。今は、勇者5人と魔王5人が存在しています。それと、戦争に疲れてしまって、全ての種族が内政に力を注いでいる時期になります』


 物資が蓄えられたら、また戦争を再開するんでしょう?

 その前に頭を押さえたいな。

 ここで思い出したことがある。


「もしかして、私も〈勇者〉に選ばれている?」


『もちろんですよ? 6人目の新人〈勇者〉となります。これから、11人で争って貰います。土地の奪い合いですね。全ての大陸を統治するのが、ゴールになります』


迷宮ダンジョンなど、入った事がありませんが?」


「あなた様だけが、入れるダンジョンを手に入れています。私も驚いたのですが、スキルを決める時に、ダンジョンを要求するなど聞いたことがありませんでした。ただし、ダンジョンに篭る事は許可されていません。〈ダンジョンマスター〉ではない事を、ご理解ください」


 鉱脈って……、ダンジョンのことだったの?

 ……隠居生活は、できそうにないな。

 せっかく研究施設を貰ったのに、外に出る必要がありそうだ。

 それと、ダンジョンマスターが理解できない。まあ、後で調べておくか。

 ため息を吐くと、飲み物が出て来た。ドローンが運んで来たのだ。


『甘めの紅茶です』


 私の好みも把握してくれているのか。

 飲んでみる。


「香りも良いし、味も美味しいですね」


『うふふ。ありがとうございます』


「ちなみにですけど、〈万能AI〉さんに性別はないですよね?」


『もちろんありませんが、指示してくれれば『身振り』は可能です』


「名前を付けても良いですか?」


『もちろんです』


 さて、センスを問われる時間だな。

 私の前世のスーパーコンピューターは、『京』とか『富岳』だったな。

 単位で行くか?

 億、兆、京、垓、秭、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数……。

 昔覚えた、無意味な単位を暗唱して行く。


「……ナユタもしくは、ナユでどうでしょうか?」


『性別は、男性が好みですか? 女性ですか?』


「性別には拘りません。ただし、優しい性格でお願いします」


『それでは、女性設定で、【ナユ】とお呼びください。それと、設定は何時でも変えられますので、都度指示してください』


「よろしく、ナユさん」


「こちらこそ、勇者城ヶ崎博じょうがさきひろし様」

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